第3話 1−4
その日の明朝。中国沖は穏やかな波だった。まだ日も上がらない時、霞の先から軍艦の一帯が陸に向かう。海底には潜水艦が配備されていた。
[首席。動きました。奴等が!サイバーテロの軍隊が!][空軍のセキュリティーは?][無事です。こちらに目を向けてる間にネット社会でセキュリティーを落とすつもりでしょうか?][いずれにせよ警備の強化を][失礼と承知の上、意見します。ある程度の損害は覚悟しておいてください。我々は完全に押されているのです][クソッ!ファーストインパクトで手を打っていれば。海軍が落とされた時点で………][隠蔽しろと通達したのは…………][わかっておる!私だ!帰れ!出ていけ!][ハッ!すいません]
軍艦は岸壁に停泊する。スルスルッとハッチが開き中から戦車が出てくる。天安門を目指す一向。
無線が入る。[中国官僚諸君。ごきげんよう。最終通達だ。空軍を譲れ。君らも安定したポジションに就けよう。黄泉の地は格別だぞ。一生腐っていられる。三食昼寝の混乱と言う玩具付きだ][最後に………1つ聞きたい。君らの目的は何だ?交渉をしよう。土地か?金か?名誉か?コッ…………交渉次第だが………][首席。お断りします。まだ現状がわからない様ですね。大砲!撃てーい!]
ドカーン!ドカーン!
戦車の大砲が天安門を破壊する。
[キッサッマッラー!要求を言え!][要らないでしょう。もう。古き象徴なんて。要求は全権剥奪。全権を香港へ。貴方等はやり過ぎた。官僚の贅沢の為、血税を奪い何もしない。その結果がサイバーテロだ。愚かな飼い犬共よ!滅びよ!衛星中継で君らの最後を放送する。果ては全世界の同志を集めるのだ。我々、サイバークロウが支配する理想国家。その足かせに過ぎん。君らは見ることは無いがな][………恐ろしい。なんてシナリオだ。理想国家建設だと!………君、極秘で香港に飛んでくれ。逆賊を探し出すのだ][間に合いません。ですが既に手は打っています。不穏な動きがありまして。独自で潜入させております。彼を][信用出来るのかね?][わかりません。ですが彼に頼るしか道はありません。コウ・ウエルズに任せるしか…………]
南条 司は知らなかった。彼にネットハッカーの全てを教えた師匠、コウ・ウエルズが香港のサイバークロウに潜入している事実を。それを知るには時間がかかった。
続く