第3話 その1−3
南条 司は完敗だった。マシンのスピードを意識し過ぎマシンの特性を考えていなかった。このアルファードと言うマシンはスピードを特化しつつ、敵の意表を突く攻撃にも特化していたのだ。
[だから走りすぎるなって。忠告したじゃない?ネー。ピート][司君。わかったか?君のやる気の無さは知っていた。俺のフライトを見ておけ。スモーキーガンナー!俺のダミーターゲットを転送してくれ][わかった]
ピート・ガリエルの前方に二機の戦闘機が転送される。[サーテ。行きますかね。お手柔らかに]ピートは掌に唾を付け操縦幹を握る。
[司君。よく見ておけ。実戦はレースでは無い。いかに早く判断出来るかだ]虹色の煙をあげてデルタードが飛び立つ。
[行くぜ!ガトリング転送!奴等を牽制しろ!]
ズガガガガガッ。上空にミサイルの嵐が飛び交う。[こんなもんだろう。追尾ミサイル転送!]ガトリングの弾が切り替わる。[狙うはさっき俺が打ち込んだ弾。必中射撃だ!ファイアー!]追尾ミサイルがダミーターゲットの後を追うように爆発する。ダミーターゲットは回避するしか無かった。[追い詰めたぜ。行け!ゴーストブースター!]デルタードが残像を残し的確に的をい抜く。
ダダダダーン!ダダダダーン!
[任務完了。時間にして一分だな。ちょろいもんさ][………凄い。隙が無い。ピート・ガリエル。奴は先の動きを読んでいた。プログラムを越える感性。あれが彼の特性か][そうね。あのスキルには私も勝てないわ。司君。ナゼ貴方が完敗したのかわかった?つまり貴方は機械の操り人形だった。そんなの子供でも出来るわよね。要は使う人の個性と機械の性能。それがリンクした時に強さや激しさ、果ては説得力が産声を挙げるのよ。私も見せようかしら?][………結構ですって。わかりましたから]
………コウさん。ようやく見つけましたよ。貴方に基礎を教わりたどり着いた答えに。僕は間違えていた。ネットハッカーなんてそんなもんだった。結局は人を騙して生活する事にしても何も意味が無かった。僕は見つかるんだろうか?本当の居場所を…………[今日はそこまでだ。戻ってこい]スモーキーガンナーが帰還を要求する。
ミホとピートは今日の反省点を話していた。司は一人、隅でうずくまる。部屋を出る司。[大丈夫かなー?あの子。やり過ぎじゃないの?][イヤ。新人にはその位が良いのさ。そんなもんだろう]
ミホはコーヒーを2つ持って部屋を出る。司は夜風に吹かれていた。
[こんな所にいたの?ハイ。コーヒー][ありがとうございます。アノ〜………ミホさんはナゼこの部隊に志願したんですか?][私?…………親が騙されてね。振り込め詐欺に。で、借金返済に私がやらなきゃいけなかった。まだ聞きたい?][イエ。結構です。どうです?詐欺師が憎いですか?][貴方、ネットハッカーだったのよねー。………確かに始めはね。やりたく無かった。今の司君と一緒ね。慣れるわよ。恋愛と一緒よ。始めはね、気に入らないかも知れない。でも慣れたらそんな人と籍を入れたりするじゃない?][ウン。………強いんだね。ミホさんは。………コーヒーごちそうさま。それじゃー][待ちなさい。忘れ物よ]立ち去る司の肩を強引に引っ張り目を閉じてキスをする。[お疲れさま。今は私達しかいないの。頼るしか無いんだからね。早く慣れなさい][…………ハイ。ありがとうございます。それじゃー]
………仕事柄からかしら。感情を出すのが苦手なのね。そんなもんよ。ハッカーなんて。ムッツリスケベの玩具に過ぎないわ…………
ミホは風に吹かれながら過去を振り返っていた。
[中国の首席諸君。ごきげんよう。そろそろ夜が明ける。回答を聞きたい。降伏かいなか][…………我々はサイバーテロ等に屈しない。歴代の偉人に逢わせるメンツがある。貴様らの要求には断固拒否する][残念だ。愚かな飼い犬よ。これより仕上げに入る。軍部独裁のシナリオは完成する。我々サイバークロウの手により。世界よ。我々が求めるのは中国の空軍等ではない。世界の動乱。サイバーテロによる国の崩壊こそが我が理想なのだ。これより攻撃を仕掛ける。全世界に衛星中継を]
続く