鋼鉄の乙女 6
「…、以上が先日の事件のあらましです」オペレーターの報告が終わるとともにそれまでかろうじて沈黙を保っていたテーブルのあちらこちからため息とも驚嘆ともとれる吐息が漏れる。その中でさらに淀みのない女性の報告が続き、スライドが次々と映し出される。
「RD501:人造美人、世界初の自動機関にして現在巷にあふれる|自動機関(オ−ト・ワーカ)の原型、名前通り世界中に彼女の子らが氾濫することとなったきっかけとも言える機体です。
RD502:たぐり寄せる意図、遠隔操作システム、蜘蛛の糸を搭載した初の機体、これによって一人の運転士によるユニットマシーンの多重独立運行が可能となりました。
RD503:燃え盛る情熱、外層交換機能、かぼちゃの馬車により制作者の手を離れた自己変革システムを可能としました。
RD504:機槍天女、曲率変換機関、スレイプニルの搭載により、あらゆる曲線を直線として走破することが可能、これにより地表を走行する機関としては最速を叩き出す事に成功しました。以上四機体とも我々に多大なる利益をもたらしました。
しかし、これら4機体とも我々にとって看過できない事態を引き起こしたのもまた事実です。続いて、こちらをご覧ください。これが問題のRD505、開発名”絡みつく蛇”に搭載されているシステムです。この多機能化工場、”七人の小人”は、単純に自己の破損部品等を速やかに修復させるためのものとして働くものと思われていましたが、その秘めたる機能は最悪です。これまで発生した事件など、この機構の発生に伴う事態に比べれば些事にしかすぎません。このシステムの発動の規模によっては最悪、現人類の滅亡の可能性すらあるのです」
次々に映し出されるスライドの最後にはあの黒鋼の偉容が映っていた。
「………」沈黙がその部屋を支配した。
「あれのパートナーにはこちらの息がかかった者を送っておいたハズではなかったかね」
「不測の事態により、運転士はこちらの用意した者ではなくなりました。すでに正式な登録も彼女、失礼、機械人核、固有名称フィアナにより済んでいます。詳細については手元の資料を御覧下さい」一瞬、安堵しかけたその場はオペレータの言葉によって遮られた。
「ご存じのように自動機関自身が決めた運転士をこちらの都合で合法的に変えることはいくつかの例外を除いてほぼ不可能な状態となっております」言って彼女はその場を支配する主に向かって沈黙した。
「…彼に、連絡したまえ」再度の沈黙の中、その閉幕はその言葉によって為された。