鋼鉄の乙女 3
彼女は失望していた。ろくな人間ではないのだ。わかってはいる。それが贅沢な望みだという事は。
自動機関は、思考する機械だ。自動機関は生きている機械だ。自動機関は感情の機械だ。自動機関は成長する機械だ。
これらが彼女たちを紹介する際に必ず使われる言葉だ。しかし、自動機関がその機関の能力を最大限に発揮するためにはコーディネーターと呼び慣わされる人間の運転士を必要とする。つまるところ自動機関は人と出会って、初めて自動機関たり得る。その出会いというものは自動機関にとって運命的なものなのだ。だから彼女は、多くの自動機関が思い描くようにその出会いに淡い恋心を抱いていた。しかし目の前の現実は、そういう期待をこな微塵に打ち砕いてくれていた。
自動機関は自動機関たり得る為にコーディネータを必要とする不完全な自律機関である。という言い方もある。なのに彼女のパートナーとなるべく現れた男はその彼女の不完全さを補うための全てが欠落しているといえた。
まず、その絶えず浮かべ続けられるその愛想笑いが気にくわない。その笑顔の下で私を嫌悪しているという雰囲気すら隠す気もないのか、この男は、そしてさらに、やめた。数え上げればきりがない。ここまで相性が最悪な男を私のコーディネータにしてどうしようという気なのだ彼らは!! そういえば彼らもだ。なんなのだこれは、確かに私がいるこの場所は人間の運転士を未だ育てているという時代錯誤も甚だしい教育機関の講堂の裏だ。しかし私に危害を与える不審者を排除する為と言いつつその周りの男達の無数の銃口がこちらを向いているのはいったいぜんたいどういうつもりなのだ!! そこまで私に対する警戒心と不信感を露わにして本当にいったいどうするつもりなのだ!!
お父様、私は絶望に身を焼かれそうです。ため息をつきつつ彼女が、その現実に迎合しかけたときにそれは起こった。




