鋼鉄の乙女 2
それは晴天の霹靂だった。
「諸君、機械の全ては人間が支配するべきだと言う愚かしい幻想に我々は取り憑かれていたのだ」妙に装飾の華美になった講堂での学長の第一声がそれだった。それは旧時代的な人間の運転士を育てる教育機関の学長が決して発してよい言葉ではなかった。
「…我々は人間の運転士という存在に固執しすぎていた。機械の全ては人間が支配すべきだ? この仕事こそが聖職? ナン、センスだ!! 我々は今こそ古き概念を脱ぎ捨てて新しく着心地の良い理想をまとおうではないか! 自動機関とともに歩む未来は、今まで以上にすばらしいものを我々に与えてくれると私は確信する!!」
最後に放たれたその言葉は無機質の冷たさをもって呆然としていた彼、仁科 秀幸の夢を断ち切った。
それからの事はあまりよく覚えていない、校長の裏切りとも言える発言に場が沸騰しかけたとき、それを見計らったかのように講堂の裏から現れた少女達の一人に手を引かれながらダンスのステップを踏んでいる現実などどこか遠い出来事のようだった。
少女達はどれも美少女、とまではいかないもののその年齢にふさわしい活気に満ちあふれた肢体を持っていた。それらに野郎どもばかりで閉じこめられこの数年間を過ごしてきたここの学生達は抵抗する術を持ちえなかった。
「諸君らには、これから異性とのコミュニケーションというものを学んでもらう」
「知っての通り自動機関の性能を十二分に発揮する為にはその機械人核と親密になる必要がある、その来るべき未来の為に、さぁ、踊り賜え」
校長の演説が続く中にあちらこちら不器用な男達の囁きが聞こえる。
その情景を満足げな表情で見下ろし、彼はその次の準備に入ろうとした時にそれは起こった。




