開幕のベルは高らかに鳴り響く
開幕のベルは、予定通りに訪れた。
「シリアルナンバーR.D.505、こちら魔女の鉄槌部隊、あなたには重大な欠陥が見つかっています。現在進行中の業務を直ちに停止し、こちらの誘導にすみやかに従って下さい」
「こちら、メイン・コーディネーター 仁科 秀行、了解した。予定通り、客車の分離および引継を行ったあとそちらの指示に従う」
「思ったより、素直にこちらの指示に従いましたね。大佐」インカムごしにお気楽な部下の声がする。
「油断するな、まだ終わったわけではない。こういう時が一番危ないのだ、それと主任と呼べ」
「…了解です。大佐」変わらずまじめくさって答える部下に男は渋面を作る。
「いいのか、フィアナ」何かを諦め、何かを覚悟した男はそれにそう答えた。
「大丈夫、了解済みよ、さてと、大佐のお手並み拝見♪」
出迎えたのは、武器を持った人々の波、それは勧告という名の脅迫だった。
「メイン・コーディネーター 仁科 秀行の拘束を完了しました、大佐」部下の報告に首をかしげつつも男は不承不承頷く
「あなたが大佐ですか、初めまして仁科 秀行です」青年は拘束されつつも臆することも無く男を見て言った。そこに自分の影を見たような気がした。機械というものに愛情を抱く者に共通する影を、だから、かもしれない「今から、我々はR.D.505の破壊を開始する。未練は無いかね。まぁ、あった所でやる事は変わらんのだがな」微苦笑を浮かべて、男はそう言った。
「大佐、貴方はこれをどう思います。きっと貴方なら真実にたどり着いているはずです」
「ノーギス=ディルクマンだ、過去の仕事のせいか、そう呼ばれた事はあまりない」真摯な眼差しを向ける青年に男は静かに彼だけに聞こえるように答える。
「世界が一変するな、それは受け入れられる奴の方がすくないだろう。我々が人工知能だと思っていた|機械人核(メタル=コア)は、機械に付く妖精の召喚媒体だと、あのごてごてしいブラックボックスがまさにハリボテだとは、一体、何を考えているんだ奴は、あまつさえ、それが…人と子を為すことができる。…だと、本当に、いったい、なにを考えとるんだか奴は」
「でも、それは子供の頃、僕たちが見た夢、僕たちが夢見た未来、そういうものではなかったですか、大佐」
「ある程度まではな許容できるが、これ以上はな、現人類のゆるやかな滅亡が待っていると為れば話は別だ、それに、なにもかもがあの教授の思い通りというのが気に喰わん!! あの時しっかりと完膚無きまでに殺し損ねた教授のな!!」
「残念です、あなたならもしかしたらわかってくださるかもと思っていました、あのドロシーにあんなにも愛されている貴方なら」
「そういう事を期待していたというなら、出てきただけ無駄だったな青年」
「OK!! ダーリン、それもこれも予定通り、|戦闘開始(レッツ、ダンス)!!」静まりかえったその場に高らかに声が響きわたる。
「何を今更、君がこちらにいる限り、R.D.505はなにもできないだろう、その為のこの包囲網だ」
「貴方こそお忘れですか、Ki.A.I Systemの本質を」青年は覚悟を決める。
「Right!! |貴方が望むのなら(It's Your Order)、|貴方が求めるのなら(It's Your Order)、|貴方が求めてくれるのなら(It's Your Order)、私達が全てを叶えてみせる、時さえも場所さえも、全てをねじ曲げて!!」
「変動フィールド展開、積算値検出、誤差0.000505、OK!! ダーリン、オーダーを」
「お前とともにある。|それが命令だ(It's My Order)!!」
「OK!! そこに希望あれ!!」
「いかん、離れろ!! 眠れる黒い羊は狼だった、繰り返す、眠れる黒い羊は狼だった」センスのない戦闘開始の合図が告げられる中、青年の姿が魔法のようにかき消える。
そうして、その戦いは予定通りに開始された。
えーと今更ですが、作者の現況は下記にてさらしております。
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