死への誘いは薔薇のように
機械の妖精というものを知っているか、それは今ほど技術が発展していなかった時代の言い訳だと言うのが普通、それは既に忘れ去られたおとぎの国の物語。
しかし、どんなに文明が発達し、どんなに機械が進化したとしても相も変わらずそれはそこにた。いや、彼らだけではない、彼らは気づかれないだけで、常に私達の側に居た。そう、彼らは、はじめからそこに寄り添って居たのだ。
Material Ghost、すべての存在は情報の集合体に過ぎないと言う。ある種の異端学派、その端は、精霊召還や悪魔召還の術式の解析に始まり、科学の進歩の恩恵、膨大なる情報の集積と解析が可能となり、ここに一人の天才を生み出した。
いや、いうなれば、それは一つの狂気か、己のすべてをデジタル化し、魂という、誰もが信じていないと言い、その実、その深いところに核として在るものと思っていたその観念を破壊した。
そして、人の身では不可能な頭脳と手足を得たその一つの狂気は、その天才性と狂気性を思う存分に駆使し、その近く遠かった隣人達に器を与え、この世界に喚び出した。
その名を自動機関と言う。
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そこに、それは在った。よく見れば、無造作にわざとらしく配線された、その実まったく意味のないチューブの奥にそれは在った。蒼く透明な光を放つそれは、そこに鎮座していた。
その八角錐の水晶体の表面に刻み込まれた魔法陣は、一種の回路図のようであった。いや、まさしくそうなのだろう。
「…女の子の秘密はそのままにしておくものよ ダーリン? それとも、ここは、このス・ケ・ベとかいうべきかしらかね。まぁ、あなたが知りたいといえばその全てを教えてア・ゲ・ル、そのかわり、私だけを見て、今、ここに存在するわたしだけを」それは、その微笑みは、甘美な死に誘う薔薇のように。