メデューサ セッション4
「♪〜」彼女は上機嫌だった。およそ、彼女には似つかわしくないこの空間で、彼女の周りだけ色づいているようだった。
「ふ〜ん、これが私のご先祖様ってわけ、今じゃおもちゃみたいなものね」そう言って無邪気に微笑むその姿は、まさに人間の女の子そのものだった。
場所は自動機関博物館、彼女の名はフィアナ、R.D.505の機械人核だ。
「ねぇ、秀幸、これなぁに」そう無邪気に問う彼女に対する男の方は「お前の方が詳しいだろう、そんな事、僕が説明するまでもない」とにべもない。
「ねぇ、秀幸、私は貴男に説明して欲しいの、貴男の声で、貴男の言葉で、貴男の表情で」その機械にはあるまじき繊手で、彼の手を握り、その身に流れるのが、人とは違う機械油とは思えぬ、暖かなぬくもりで、そっと彼の瞳を見つめる。
「…わかったよ」しばらくして、真摯に見つめる彼女に根負けして彼はそっぽを向きつつもそう答えた。
それからの時間は、瞬く間に過ぎていった。もともと機械とその技術というものに惚れ込んでいる男なのだ。それを語る瞬間が楽しくないわけはない。初めぎこちなかった彼も、彼女を前に熱弁を奮うようになっていた。
「♪〜」彼女は上機嫌だった。およそ、彼女には似つかわしくないこの空間で、彼女の周りだけ色づいているようだった。
「ふ〜ん、これが私のご先祖様ってわけ、今じゃおもちゃみたいなものね」そう言って無邪気に微笑むその姿は、まさに人間の女の子そのものだった。
場所は自動機関博物館、彼女の名はフィアナ、R.D.505の機械人核だ。
「ねぇ、秀幸、これなぁに」そう無邪気に問う彼女に対する男の方は「お前の方が詳しいだろう、そんな事、僕が説明するまでもない」とにべもない。
「ねぇ、秀幸、私は貴男に説明して欲しいの、貴男の声で、貴男の言葉で、貴男の表情で」その機械にはあるまじき繊手で、彼の手を握り、その身に流れるのが、人とは違う機械油とは思えぬ、暖かなぬくもりで、そっと彼の瞳を見つめる。
「…わかったよ」しばらくして、真摯に見つめる彼女に根負けして彼はそっぽを向きつつもそう答えた。
それからの時間は、瞬く間に過ぎていった。もともと機械とその技術というものに惚れ込んでいる男なのだ。それを語る瞬間が楽しくないわけはない。初めぎこちなかった彼も、彼女を前に熱弁を奮うようになっていた。
*
「つまらなくはなかったか? お前にとって、全てすでに知っていることだろう」
その遅めの昼食は「ねぇ、秀幸、お腹空いてない?」という彼女の一言で始まった。
午前からのどたばたで、フィアナに連れ出され、つい、先ほどまで彼女を相手に熱弁を奮っていたのだ。その提案は非常に魅力的なものだった。
だから、だろうか、つい、彼女を気遣うような事を言ってしまった。
「ううん、そんな事ないわよ、ただデータとして知っているのとあなたから直に聞くのとでは大違い。それにあなたの声や表情を楽しめたしね」そう言って柔らかく微笑む彼女は確かに魅力的だった。
「たとえば、私は貴男の事をデータとしてだけならいくらでも言えるわよ、趣味、性格、生まれた場所、細胞の一片に至るまで、貴男の事で知らないことは何もないわ、この姿だって、言ったでしょ、貴男の好みに合わせたって、でも、現実はどう」言って真摯に彼を見つめる彼女に、彼はこの時点ですでに負けていたのかも知れない。
「そう、実際、触れあってみなければわからない、私の名前はフィアナ、自動機関R.D.505”絡みつく蛇”の機械人核、そして貴男の事が一番好き、それ以上は何もない、というか何も知らないでしょう」言って彼の手を胸に抱く彼女に彼は抵抗しなかった。
「そう、だから、わたしの事をもっと知って欲しいの、それで私を受け入れられないというのなら、それはそれでいいの、でも絶対、貴男に私のことを好きって言わせてみせるわ」そして、彼女は宣戦布告のように、生まれて初めての、甘い甘いキスをした。