メデューサ セッション3
「と、いうわけでこのKi.A.I Systemというものはだ、まさしく世界を包み込んだと言って良い、それと同時に様々な問題を巻き起こした」空中に浮かぶディスプレイを指さしながら、教官はそこで、何かを断ち切るかのように一息つくとまっすぐに彼、仁科秀幸と目を合わせた。
「その一つ、そして最大、最悪なものが、今、現在、諸君らの目の前で公然と展開されている二人だけの世界だっ!!」
授業開始から、堂々と彼の席に彼とともに居座る異邦人についに、触れる勇者が現れた。その無謀なる勇気に、教室全体が騒然となる。
「仁科君、今は何の時間だかかわかっているのかね」うつむきながら昏い声が発される。
「機械史の授業です、教官」
「そのとおりだ仁科君」
「では、君はいったいぜんたい何をやっているのか、説明してもらおうか」
その光景はおおよそ、勉学に励む学生の姿ではなかった。ブロンドの美人に背後から抱きすくめられ、彼女の膝に腰掛けるその姿は、様々な想像を周囲に提供していた。
「機械史の勉強です、教官。どうか、彼女の事は、気にしないで下さい」そう言う彼は、ある意味立派だった、かもしれない。
「大丈夫よ、ダーリン、お望みなら、あんな前時代的なインターフェースを使うより、私の生態デヴァイスを用いて短時間で圧縮学習させてあげるわ、その方が効率的ですもの。何たって私の身体は、貴男専用に調整してあるんだから」彼だけに微笑みながら言いは放たれた彼女の言葉は、さらなる想像を周囲にかき立てた。
「…こういった場合、私達教官には特別の措置を行う権限が与えられている」ため息とともに彼は、そうはき出した。
「仁科秀幸、コミュニケーションの改善を図るため、今日一日フィアナとの共同行動を認める」
「どういうことでしょうか、教官」
「つまりだ、他の学生の目の毒だから、公認で、デートしてこいっていう事だっ!!」滂沱の涙を流しながら先日彼女と別れたばかりの教官はそう言うと、まるで追い払うかのように彼らを教室から閉め出した。