メデューサ セッション1
「どうだったかね彼女は?」翌日の彼の不幸はその一言によって開幕した。
その出会いも唐突なら、別れも唐突だった。ドロシーとの追走劇は、彼女フィアナが、目的地の駅に着くことによってあっけなく閉幕した。
その途端、「ちょーっと、私やる事あるから〜」の彼女の一言とともに、彼一人が放り出されたのだった。まさに狐につままれたような態で、帰宅の途についた彼を待っていたのが、翌日の学長のこの一言だった。
「何が不満だと言うのだね」机の上に並べられた、自身を運転士とする書類の山を前にして、自身の期待と理想を裏切った張本人は、そう自覚の無いことをのたまわってくれた。
「…全部です」万感の思いを視線に乗せて彼は、学長を睨んだ。
「君はわかっていないな、まぁ それが若さというものかも知れんがね、理想を追い求めるだけではどうにもならんという事があるのだよ。事実、ここにその理想に殉じ損ねた敗残者がいる」
「…」
「まぁ、あきらめたまえ、こうして正式な書類がそろっているのだ、これを覆すのは並大抵の事ではできんぞ、それに君が、どうあがいたところで現実は変わらんのだよ。コーディネータの養成学校としてしか、この学校はもうたち行かぬ所まで来ているしな」
「そんな事を僕に言って、どうするんですか?」
「…、わかっていないな君は、今、自身の置かれている立場を理解しているかね、この学校初のコーディネータなのだよ、君は、もはやこの学校の命運は君の双肩に委ねられていると言っても良い、ここの生徒を君のわがまま一つで路頭に迷わせる気かね君は?」
「…」
「まぁ、悩み給え若者よ」怒りをこらえ、無言で出て行こうとする彼の背中に学長のどこか楽しむような声が響いた。