サンダーバード
「どうでしたか、彼女は?」開口一番、そう言って扉の前で彼を出迎えた赤毛の女性は、先日、役員達の前で報告を続けていた女性オペレーターだった。
男は無造作にデータディスクを彼女に押しつけるように渡すと、どっかと自身のプライベート・ルームのソファに沈み込む。
「扉を開けるぐらいの紳士さは、持ち合わせてほしいものですわね、大佐」扉の内側で女が呆れたように苦笑する。
「紳士さを要求するにはいささか淑女さが足りない気がするがね、ミス・レイン」彼女の方に一瞥もくれず、吐き捨てるように男はそう言った。
「そこを大目に見るのが紳士の度量といったものでしょう、大佐」言われた女の方は悪びれもせずにロックされた扉を開けたカードキーを指先で弄びながら言う。
「あいにく、優しさとかそういったものは枯渇気味でね、…記録を見ればわかる。まぁ、奴が記録を改竄していなければの話しだがな」
「どこに行かれるのですか、大佐」いいざま、彼女の側を通り抜けようとする男を呼び止める。
「君達の居ないところであれば、どこでも、と言ってもここは君達の檻の中だがね」
「Drothy9は、戦闘後のチェック中。このプライベート・ルームを出たところで、いつものように彼女に追いかけ回されることはありません。しばらくの間、あなたの自由は保障されますわ。そう、毛嫌いしないでいただきたい。今回はあなたにとって良い話しを持ってきました」
「解雇通知かね、それはめでたい、しかし自身の右手で左手を殴るような戦闘に結果を期待しすぎるのはいかがなものかな」
諦めたように、彼女は一つのファイルを彼に差し出す。
「…これは?」受け取った大佐は初め興味なさそうにそれを一瞥し、確かめるように見、そして驚愕の声を上げる
「雷鳳、今現在では喪失技術と呼ばれる技術の粋を集めて作られた逸品です」