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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第82話 物語構造

グレイウッド。


中央図書館・最深層。


さらに奥。


灯りが少ない。


人の立ち入りがほとんどない領域。


空気が変わる。


重い。


古い。


触れてはいけないものがあるような。


そんな気配。


四人は進む。


足音が小さく響く。


やがて。


壁に埋め込まれた棚。


一冊だけ。


他と違う。


封印のような金具。


セラが手を止める。


「……これです」


声がわずかに低い。


緊張している。


レオナが前に出る。


迷わない。


金具を外す。


抵抗はない。


簡単に外れる。


まるで。


開かれるのを待っていたかのように。


本を取り出す。


黒ではない。


白。


だが。


汚れていない。


異様に綺麗。


時間の影響を受けていない。


不自然。


レオナが開く。


ページがめくられる。


文字が並ぶ。


整然と。


機械的に。


最初の一文。


レオナが読む。


「……“世界は物語として管理される”」


沈黙。


空気が凍る。


勇者の思考が止まる。


リリアが息を止める。


セラは目を伏せる。


予想。


だが。


確定すると違う。


重さが。


レオナは続ける。


「“物語は役割によって進行する”」


淡々と。


感情なし。


だが。


内容は。


完全に異常。


勇者が声を出す。


「……物語って、なんだよ」


理解できない。


自分たちの世界。


現実。


それが。


“物語”?


否定したい。


だが。


できない。


すべてが繋がる。


役割。


循環。


神の命令。


全部。


説明できる。


もし。


これが“物語”なら。


セラが口を開く。


「進行管理……」


呟く。


言葉を繋げる。


「イベント発生、役割起動、問題解決……」


一つずつ。


整理する。


まるで。


設計図。


システム。


レオナが頷く。


「そういうこと」


肯定。


そして。


ページを指す。


そこに書かれている。


『均衡が崩れた場合、物語は強制的に修正される』


勇者の目が見開く。


思い当たる。


聖女の暴走。


神の命令。


全部。


“修正”。


リリアが震える。


「……あれ、修正だったの……?」


自分の意思じゃない。


強制。


説明がつく。


あまりにも。


はっきりと。


レオナが言う。


「イレギュラーが出たから修正が入った」


冷静に。


分析。


「それが私」


簡潔に。


自分を指す。


勇者が息を呑む。


理解する。


レオナは。


この“物語”の外にいる。


だから。


修正対象。


排除対象。


セラが続ける。


「……つまりこの世界は」


言葉を選ぶ。


慎重に。


だが。


はっきりと。


「誰かに管理されている」


結論。


逃げ場のない事実。


勇者が拳を握る。


強く。


「誰がだよ……!」


怒り。


当然。


自分たちの人生。


それが。


管理されている?


許せるはずがない。


レオナはページをめくる。


さらに奥。


核心。


そこに近い部分。


そして。


一行。


短い。


だが。


決定的。


レオナが読む。


「……“管理者は神と呼称される”」


沈黙。


完全な。


誰も動かない。


勇者の思考が止まる。


リリアの顔が青くなる。


セラも息を止める。


神。


信仰の対象。


絶対の存在。


それが。


“管理者”。


システムの上位存在。


人を導くものではない。


人を動かすもの。


その事実が。


すべてを崩す。


リリアが震える声で言う。


「……そんなの……神じゃない」


否定。


信仰の崩壊。


当然。


だが。


記述は変わらない。


レオナは本を閉じる。


静かに。


そして。


言う。


「定義の問題ね」


冷静に。


「“神”って呼んでるだけ」


本質は違う。


ただの管理システム。


あるいは。


その操作者。


勇者が呟く。


「……じゃあ俺たちは」


言葉が続かない。


理解してしまう。


「物語の中の登場人物か」


沈黙。


誰も否定しない。


できない。


すべてが。


それで説明できる。


リリアが涙をこらえる。


「……嫌……そんなの」


当然。


自分の人生が。


誰かの物語の一部?


受け入れられない。


セラが静かに言う。


「ですが……」


現実を見る。


「辻褄は合います」


残酷なまでに。


論理は一致する。


レオナが一歩下がる。


本を机に置く。


そして。


全員を見る。


「ここまでは前提」


整理。


情報共有。


終わり。


次は。


選択。


どうするか。


勇者が顔を上げる。


目が変わっている。


迷い。


怒り。


混乱。


全部ある。


だが。


一つだけ。


はっきりしている。


「……俺は」


言葉が出る。


ゆっくりと。


「勝手に決められるのは、嫌だ」


本音。


シンプル。


だが。


強い。


リリアも頷く。


「……私も」


同じ。


セラはレオナを見る。


判断を待つ。


レオナは少しだけ考える。


そして。


言う。


「なら壊すしかないわね」


静かに。


当然のように。


結論。


勇者が目を見開く。


リリアも。


セラも。


だが。


否定はしない。


もう。


戻れない。


知ってしまったから。


この世界の構造を。


物語を。


管理を。


だから。


進むしかない。


壊す方向へ。


レオナが視線を上げる。


天井。


その先。


見えない存在。


神。


管理者。


それに向けて。


静かに言う。


「干渉してくるなら、対処する」


宣言。


戦いではない。


問題解決。


いつも通り。


ただ。


相手が。


世界そのものになっただけ。

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