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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第61話 聖女到着

街道。


馬車が進む。


揺れは穏やか。


だが。


内側。


リリアの心は。


静かではない。


目を閉じている。


祈りの姿勢。


だが。


思考は止まらない。


報告。


王都より上の都市。


ありえないはずの現実。


神託はない。


導きもない。


それが。


不安を強くする。


やがて。


馬車が緩やかに減速する。


外の気配が変わる。


騎士の声。


「……見えてきました」


リリアの瞳が開く。


静かに。


だが。


鋭く。


カーテンを開ける。


外を見る。


そして。


止まる。


視線が。


動かない。


広がる。


緑。


整然とした畑。


規則的な配置。


均一な成長。


違和感。


この土地には。


似つかわしくない光景。


「……」


言葉が出ない。


見ただけで分かる。


これは。


“管理されている”。


自然ではない。


意図された結果。


馬車は進む。


さらに近づく。


詳細が見える。


農具。


動いている。


魔力の気配。


感じる。


だが。


規模が異常。


一部ではない。


全体。


畑すべてに。


行き渡っている。


リリアの眉がわずかに寄る。


「……なぜ」


小さく呟く。


答えはない。


やがて。


門が見える。


都市の入口。


だが。


威圧感はない。


閉ざすためのものではない。


開かれている。


人が行き交う。


自然に。


止められない。


検問。


形式だけ。


緊張がない。


リリアはそれを見る。


違和感。


本来なら。


警戒すべき場所。


だが。


ここでは。


必要ない。


そう見える。


馬車が通る。


その瞬間。


空気が変わる。


音が増える。


人の声。


足音。


笑い声。


活気。


一気に流れ込む。


リリアの呼吸がわずかに止まる。


視界。


市場。


人で溢れている。


だが。


混乱はない。


整っている。


秩序。


それが自然に存在している。


「……多い」


思わず漏れる。


人の数。


そして。


物の数。


商品が並ぶ。


食料。


豊富。


過剰に見えるほど。


飢えの気配がない。


まったく。


リリアの胸に違和感が広がる。


“満たされている”。


それが。


ここでは当たり前。


さらに。


視線が止まる。


獣人。


耳。


尾。


人と並んで歩く。


自然に。


会話している。


笑っている。


差別がない。


少なくとも。


表面には。


リリアの思考が揺れる。


「……なぜ」


再び。


同じ言葉。


だが。


意味は重い。


世界は。


そうなっていない。


争い。


隔たり。


それが普通。


なのに。


ここは違う。


馬車は進む。


通りを抜ける。


建物。


整然。


無駄がない。


設計されている。


明確に。


一から。


そして。


目に入る。


光。


柱。


淡く輝く灯り。


昼だというのに。


魔導灯。


街全体に。


設置されている。


リリアはそれを見上げる。


感じる。


魔力の流れ。


安定している。


暴走も。


歪みもない。


完璧に制御されている。


「……どうやって」


呟く。


これは。


一人の術者では無理。


継続的な管理。


システム。


理解が追いつかない。


馬車が止まる。


広場。


中央。


案内の者が近づく。


丁寧に一礼。


敵意がない。


自然。


それが。


逆に異常。


リリアはゆっくりと降りる。


足が地面に触れる。


その瞬間。


実感が走る。


ここは現実。


夢ではない。


見回す。


人々。


笑顔。


健康。


余裕。


苦しみの気配がない。


神殿で見てきたものとは。


違う。


あまりにも。


リリアの胸がざわつく。


揺らぐ。


信じてきたものが。


静かに。


「……理想」


思わず口に出る。


だが。


すぐに否定が浮かぶ。


「……そんなはずがない」


世界は。


そんなに単純ではない。


どこかに歪みがあるはず。


そうでなければ。


成立しない。


だが。


見えない。


今のところ。


何も。


それが。


最も不安。


リリアはゆっくりと息を吸う。


整える。


揺れを抑える。


そして。


前を見る。


この都市の主。


すべての中心。


レオナ。


その存在と。


向き合う必要がある。


この違和感の正体。


この都市の本質。


それを知るために。


リリアは一歩踏み出す。


案内人の後を追う。


広場を抜け。


さらに奥へ。


その先に。


答えがあると信じて。


あるいは。


信じたいから。


進む。


そして。


この出会いが。


世界を変える。


その予感だけが。


確かに存在していた。

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