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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第60話 聖女出発

王都。


大神殿。


早朝。


空は淡い。


夜と朝の境目。


静寂が残る時間。


だが。


神殿の前庭だけは違う。


人が集まっている。


神官。


騎士。


従者。


整然と並ぶ。


緊張。


空気が張り詰めている。


中央。


白い装束。


聖女リリア。


立っている。


静かに。


だが。


確かな存在感。


誰もが頭を垂れる。


その姿に。


神聖。


象徴。


希望。


すべてを重ねる。


リリアは一歩も動かない。


視線は前。


遠く。


まだ見ぬ場所。


グレイウッド。


その方向。


心はすでに向かっている。


だが。


内側。


わずかな揺らぎ。


消えていない。


報告。


王都より上の都市。


神託なし。


理解できない現象。


整理できない。


だからこそ。


行く。


それが理由。


それだけ。


神官長が前に出る。


重い足取り。


リリアの前に立つ。


一礼。


「準備は整いました」


短い報告。


リリアは小さく頷く。


「ありがとう」


静かな声。


だが。


どこか硬い。


神官長は続ける。


「視察が目的です」


確認。


釘を刺す。


「判断は慎重に」


言葉は柔らかい。


だが。


意味は重い。


不用意な行動は許されない。


相手は未知。


そして。


強大。


リリアは目を閉じる。


一瞬だけ。


呼吸を整える。


そして。


開く。


迷いは。


完全には消えていない。


だが。


決意はある。


「分かっています」


はっきりと答える。


神官長はそれ以上言わない。


ただ。


一歩下がる。


道を開ける。


馬車が用意されている。


白い装飾。


神殿の紋章。


護衛の騎士たち。


厳重。


だが。


戦うためではない。


守るため。


リリアはゆっくりと歩き出す。


一歩。


また一歩。


足音が響く。


静かに。


確実に。


その歩み。


迷いはない。


神官たちの視線が集まる。


誰も声を上げない。


ただ。


見送る。


祈るように。


リリアは馬車の前で止まる。


振り返る。


大神殿。


自分の居場所。


そして。


守るべき場所。


胸の奥がわずかに締まる。


だが。


すぐに前を見る。


進む。


それが役目。


乗り込む。


扉が閉まる。


外の音が遠くなる。


静寂。


内部の空間。


リリアは座る。


手を重ねる。


わずかに力が入る。


自覚する。


緊張している。


当然だ。


未知へ向かう。


しかも。


神託なしで。


前例がない。


それでも。


進む。


理由は一つ。


確かめるため。


真実を。


外で号令。


「出発!」


馬が動く。


車輪が回る。


馬車が進み始める。


ゆっくりと。


そして。


確実に。


王都を離れる。


神殿の前庭。


人々が頭を下げる。


最後まで。


見送る。


やがて。


見えなくなる。


聖女の姿。


だが。


その影響は。


これから広がる。


馬車の中。


リリアは目を閉じる。


思い浮かぶ。


グレイウッド。


未知の都市。


理解できない存在。


そして。


もう一つ。


小さな違和感。


なぜ。


神は沈黙しているのか。


その答えも。


きっと。


あそこにある。


そう信じて。


馬車は進む。


道を越え。


境界を越え。


やがて。


交わる。


文明と信仰が。


その瞬間へ向かって。


止まることなく。

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