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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第54話 文明衝撃

グレイウッド中央区画。


広場。


使者たちは立ち尽くしていた。


動けない。


視線だけが動く。


情報を追いかけるように。


だが。


追いつかない。


「……これは」


誰かが言いかけて。


止まる。


言葉が足りない。


表現できない。


案内人が歩き出す。


「こちらへ」


自然な声。


その“普通”が。


さらに異常を際立たせる。


使者は足を動かす。


半ば反射で。


通りを進む。


左右。


店。


人。


商品。


すべてが。


高水準。


しかも。


安定している。


偶然ではない。


仕組み。


完成されたシステム。


「……価格は?」


思わず問う。


案内人は即答する。


「一定です」


迷いがない。


「需要に応じて調整はしますが、暴騰はありません」


理解が追いつかない。


暴騰しない市場。


そんなものが。


存在するのか。


使者は言葉を失う。


さらに進む。


建物。


整然。


無駄な空間がない。


だが。


圧迫感もない。


設計されている。


明確に。


一から。


「……計画都市」


思わず呟く。


案内人が軽く頷く。


「はい」


それだけ。


当然のように。


その態度が。


逆に重い。


これは偶然ではない。


意図された結果。


さらに奥。


施設が見える。


大きな建物。


人の出入り。


「学校です」


案内人の説明。


使者の目が止まる。


子供たち。


種族も年齢も様々。


同じ場所で。


学んでいる。


「……分けないのか」


問い。


案内人は首を振る。


「必要ありません」


即答。


迷いがない。


価値観が違う。


根本から。


使者は息を吐く。


重い。


理解するほどに。


差が広がる。


さらに進む。


別の区画。


静か。


だが。


活気がある。


白衣の者たち。


棚に並ぶ薬草。


「診療所です」


説明。


中を見る。


患者。


だが。


悲壮感がない。


処置が早い。


的確。


無駄がない。


「……病は」


使者が呟く。


案内人が答える。


「予防します」


短い言葉。


だが。


意味は大きい。


王国では。


“治すもの”。


ここでは。


“防ぐもの”。


発想が違う。


根本から。


さらに。


通りを抜ける。


広場に戻る。


全体が見える。


都市全体。


一つの流れ。


人。


物。


情報。


すべてが。


循環している。


滞りがない。


完成している。


使者は立ち止まる。


そして。


ようやく。


言葉にする。


「……王都より上だ」


静かな声。


だが。


重い。


誰も否定しない。


護衛も。


案内人も。


沈黙。


それが答え。


王都。


この国の中心。


そのはずの場所。


だが。


現実は違う。


すでに。


中心は移っている。


ここに。


グレイウッドに。


使者の背中に冷たい汗が流れる。


任務の重さが変わる。


これは。


単なる交渉ではない。


格の違う存在への接触。


そして。


その相手に。


“戻れ”と言う。


無理だ。


直感が告げる。


だが。


やるしかない。


それが任務。


使者は拳を握る。


覚悟を決める。


この都市の主。


レオナ。


その人物と。


向き合う。


その結果が。


王国の未来を決める。


使者はゆっくりと顔を上げる。


「……案内を」


声は静か。


だが。


揺れていない。


案内人が頷く。


「こちらへ」


再び歩き出す。


都市の中心へ。


その奥へ。


すべての起点。


そして。


すべての答えがいる場所へ。


一歩。


また一歩。


近づいていく。


理解してしまった現実を抱えたまま。


それでも。


進むしかない。

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