表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/83

第48話 勇者不在

神殿。


深部。


立ち入りを許された者のみが入る場所。


重い扉。


閉ざされた空間。


中央。


円卓。


そこに集うのは。


神官長。


上級神官。


そして――


聖女。


空気は張り詰めている。


誰も軽口を叩かない。


理由は一つ。


「……勇者が消えた」


神官長の声。


静か。


だが。


重い。


言葉が空間に沈む。


誰もすぐには反応しない。


できない。


勇者。


それは単なる人ではない。


神の意思を代行する存在。


世界の均衡を保つ駒。


その駒が。


消えた。


異常。


あまりにも。


聖女は手を握る。


わずかに震える。


「……確認は取れているのですか」


問い。


かすかに震えた声。


神官長が頷く。


「神託も途絶えた」


その一言で。


すべてが確定する。


勇者は。


いない。


沈黙。


重い。


息苦しいほどに。


一人の神官が言う。


「魔族の仕業では?」


即座に別の声。


「ならば痕跡がある」


否定。


「だが何もない」


さらに沈黙。


別の神官。


「事故……では?」


神官長が首を振る。


「勇者だぞ」


それで終わる。


納得せざるを得ない。


勇者が“偶然”消えることなど。


ありえない。


聖女の脳裏に。


浮かぶ。


あの噂。


辺境の都市。


グレイウッド。


急激な発展。


常識の崩壊。


そして。


今。


勇者不在。


繋がる。


根拠はない。


だが。


直感が告げる。


「……関係があるのでは」


思わず口に出る。


全員の視線が集まる。


聖女は一瞬だけ躊躇う。


だが。


続ける。


「辺境の都市……」


「グレイウッド」


空気が変わる。


その名前。


既に。


ここでも共有されている。


神官長が目を細める。


「……あの都市か」


低い声。


警戒。


明確に。


「調査は進めている」


短い答え。


「だが……」


言葉が途切れる。


珍しい。


神官長が迷う。


「情報が……異常だ」


ざわめき。


「異常、とは」


問い。


神官長はゆっくりと答える。


「病がない」


「飢えがない」


「争いがない」


一つずつ。


並べられる。


そして。


最後に。


「種族の隔たりがない」


沈黙。


それは。


理想。


だが。


同時に。


“ありえない”世界。


聖女の胸がざわつく。


それは本当に。


悪なのか。


それとも。


理想なのか。


分からない。


神官の一人が吐き捨てる。


「神の与えた試練を否定している」


別の者。


「秩序を乱している」


言葉が重なる。


否定。


警戒。


敵意。


聖女は黙る。


違和感。


消えない。


神官長が手を上げる。


静まる。


「結論を急ぐな」


重い声。


全員が口を閉じる。


「だが」


一拍。


「このまま放置はできん」


決定。


空気が固まる。


神官長の視線が。


ゆっくりと。


聖女へ向く。


「お前が行け」


その一言。


聖女の心臓が跳ねる。


「……私が」


確認。


神官長は頷く。


「見てこい」


「真実を」


短い命令。


だが。


重い。


聖女は目を閉じる。


考える。


神の意思。


自分の役目。


そして。


あの違和感。


やがて。


目を開く。


迷いは。


完全には消えていない。


だが。


決意はある。


「……承知しました」


静かな声。


だが確かに。


役割を受け入れた。


その瞬間。


世界の歯車が動く。


神殿。


王国。


そして。


辺境の都市。


すべてが交差する。


避けられない流れ。


衝突へ向かう。


神官長が最後に言う。


「準備を整えろ」


「すぐに出る」


会議が終わる。


だが。


これは始まり。


宗教という力が。


ついに動く。


そして。


その先に待つものは――


誰にも分からない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ