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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第44話 税収減

王城。


会議室。


静まり返る空間。


机の上。


並べられた書類。


そのすべてに書かれているのは――


減少。


「……報告しろ」


低い声。


役人が前に出る。


手がわずかに震えている。


「今年度の税収ですが……」


言葉が詰まる。


「前年比、三割減です」


沈黙。


誰も動かない。


「続けろ」


「……地域によっては五割減」


空気が凍る。


貴族の一人が立ち上がる。


「そんなはずはない!」


机を叩く。


「計算が間違っている!」


役人は首を振る。


「確認済みです」


逃げ道なし。


別の資料が広げられる。


農業税。


商業税。


通行税。


すべて減少。


原因は明確。


「人がいないためです」


誰もが分かっている。


だが。


認めたくない。


「徴収を強化しろ!」


怒声。


即座に別の役人が答える。


「既に実施しています」


「それでも?」


「……限界です」


重い言葉。


「これ以上は反発が……」


沈黙。


さらに。


「未納も増加しています」


一人の貴族が顔を歪める。


「払わないだと?」


役人は静かに答える。


「払えない、が正確です」


経済が止まっている。


収入がない。


だから払えない。


単純な話。


だが。


国家にとっては致命的。


別の貴族が呟く。


「軍はどうする……」


誰も答えない。


兵の維持。


装備。


補給。


すべて金が必要。


その金が。


ない。


沈黙が続く。


やがて。


年老いた貴族が口を開く。


「……削るしかないな」


「何をだ」


「すべてだ」


冷たい結論。


だが。


それはつまり。


国力の低下。


弱体化。


避けられない。


会議室の空気が重く沈む。


誰もが理解している。


これは一時的な問題ではない。


“流れ”だ。


そして。


その流れの先は――


崩壊。


その時。


扉が開く。


重く。


ゆっくりと。


全員が振り向く。


足音。


一人の男が入ってくる。


整った服装。


鋭い視線。


王子。


場の空気が変わる。


張り詰める。


王子はゆっくりと席につく。


書類を見る。


目を通す。


沈黙。


そして。


小さく呟く。


「……ここまでか」


誰も何も言えない。


王子が顔を上げる。


その目。


苛立ち。


そして。


焦り。


「原因は」


短い問い。


答えは一つ。


「……辺境の都市です」


再び沈黙。


王子の指が机を叩く。


一度。


二度。


三度。


リズムが乱れる。


感情が滲む。


やがて。


王子が言う。


「対処する」


その一言。


会議室の空気が張り詰める。


誰もが思う。


何をするのか。


どう動くのか。


そして。


それが正しいのか。


誰も分からない。


だが。


もう。


止まれない。


王国は。


追い詰められている。


だからこそ。


動く。


強引に。


危うく。


その先に何があるかも分からずに。


王子が立ち上がる。


その背中。


決意。


そして――


危うさ。

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