43話 人口流出
王都。
朝。
城門前。
長い列。
人。
人。
人。
荷物を抱えた者たち。
家族連れ。
若者。
職人。
農民。
門の外へ。
並んでいる。
衛兵が叫ぶ。
「待て! 一人ずつだ!」
だが列は減らない。
むしろ増えている。
「どこへ行く!」
答えは同じ。
「辺境へ」
何度も。
何度も。
繰り返される。
衛兵が顔をしかめる。
「戻るつもりは?」
沈黙。
やがて。
一人が言う。
「……ありません」
その一言。
重い。
別の場所。
王都の市場。
店が並ぶ。
だが――
空いている。
棚。
隙間だらけ。
商人が苛立つ。
「人手が足りん!」
荷運びの人夫。
いない。
倉庫番。
いない。
売り子。
いない。
「どこ行ったんだよ……!」
答えは分かっている。
辺境。
別の店。
職人が腕を組む。
「弟子が来ない」
昔なら。
列ができた。
今は。
誰も来ない。
「みんな、あっちか……」
ため息。
さらに。
工房。
炉はある。
道具もある。
だが。
動いていない。
人がいない。
火が消えている。
王都の中心。
かつての活気。
今は。
どこか静か。
違和感。
減っている。
確実に。
王城。
報告。
「労働者の流出が止まりません」
貴族が顔を歪める。
「どの程度だ」
「……各地で三割以上」
沈黙。
「商業都市では半数近くが……」
空気が凍る。
「馬鹿な」
だが。
数字は嘘をつかない。
農地。
放置された畑。
収穫されない作物。
腐る。
農民がいない。
「人手が足りない……」
領主が頭を抱える。
税を取る相手がいない。
働く者がいない。
作る者がいない。
運ぶ者もいない。
連鎖。
すべてが止まり始める。
王都。
再び市場。
値段が上がる。
食料。
不足。
商人が叫ぶ。
「仕入れが来ない!」
街道。
物流が細る。
魔導馬車の数も減る。
運ぶ人がいない。
回らない。
経済が。
止まり始める。
一人の商人が呟く。
「……終わりだ」
誰も否定しない。
王城。
重苦しい空気。
報告が続く。
「税収が減少」
「市場が縮小」
「農業生産低下」
すべて同時。
原因は一つ。
人。
その“人”が。
いない。
貴族の一人が震える声で言う。
「なぜだ……」
答えは。
もう出ている。
「……あちらの方が良いからです」
静かな声。
誰も反論できない。
現実。
王国より。
辺境の方が。
“生きやすい”
沈黙。
そして。
誰かが呟く。
「……取り戻せるのか?」
誰も答えない。
答えは。
まだない。
だが。
一つだけ確かなこと。
流れは止まらない。
人は。
より良い場所へ行く。
それだけ。
王都の空。
どこか重い。
活気が消えた街。
静かに。
ゆっくりと。
崩れていく。
そして。
その影響は。
さらに広がる。
次に来るのは――
金。




