第42話 王国不安
フック:人口流出 小説化
第42話 王国不安
王城。
重い扉が閉じられる。
会議室。
集められた貴族たち。
誰一人、笑っていない。
机の上。
報告書。
山のように積まれている。
一人の貴族が口を開く。
「……確認したい」
低い声。
「辺境の都市の件だが」
空気が張り詰める。
別の貴族が答える。
「事実です」
即答。
否定は、もうない。
「規模は?」
「拡大中」
「どの程度だ」
一瞬の沈黙。
「……王都に匹敵、あるいはそれ以上」
ざわめき。
「ありえん!」
「辺境だぞ!?」
怒声。
だが――
報告書が示している。
食料生産。
交易量。
人口増加。
すべてが異常。
一人が呟く。
「……止まらないのか?」
返答はない。
別の貴族が机を叩く。
「問題はそこではない!」
全員の視線が集まる。
「我々の領地だ!」
沈黙。
「人が減っている」
重い言葉。
別の報告書が開かれる。
数字。
明確な減少。
農民。
職人。
商人。
消えている。
「どこへ行った」
答えは一つ。
「……辺境です」
空気が凍る。
「なぜだ!」
怒り。
だが。
誰もが分かっている。
一人の若い貴族が小さく言う。
「……税が軽い」
別の声。
「食料が豊富」
さらに。
「安全らしい」
言葉が重なる。
誰も否定できない。
現実。
王都より。
良い条件。
沈黙。
やがて。
年長の貴族が口を開く。
「……奪われている」
その一言。
すべてを表していた。
領地も。
人も。
金も。
静かに。
確実に。
奪われている。
別の貴族が低く言う。
「放置すれば……」
続きを誰かが言う。
「王国が空洞化する」
重い。
あまりにも重い結論。
沈黙。
そして。
焦りが広がる。
「対策を!」
「すぐにだ!」
声が飛び交う。
だが。
誰も具体案を出せない。
理由は単純。
相手が異常だから。
「……どうやって止める?」
誰も答えない。
力で?
無理だ。
交渉?
通じるのか?
そもそも。
「なぜあそこまで発展した……?」
理解できない。
未知。
それが一番の恐怖。
王城の外。
街。
人の流れ。
荷物を持った人々。
門へ向かう。
衛兵が止める。
「どこへ行く」
答え。
「……辺境へ」
迷いのない声。
衛兵が言葉を失う。
また一人。
また一人。
出ていく。
王都から。
未来へ向かって。
戻らない流れ。
王城。
窓からそれを見下ろす貴族。
顔が歪む。
「……止めろ」
だが。
止まらない。
もう。
流れは始まっている。
静かに。
確実に。
王国を削り取る流れ。
そして誰もが理解する。
これはただの噂ではない。
“侵食”だ。
貴族の一人が呟く。
「……まずいな」
誰も否定しない。
むしろ。
全員が同じ結論に至っていた。
遅すぎたのかもしれない。
だが――
まだ終わってはいない。
だからこそ。
焦る。
動く。
そして。
間違う。
王国は今。
選択を迫られていた。




