第40話 魔導鉄道
朝。
都市の外。
広大な空き地。
人が集まっている。
技術者。
作業員。
商人。
住民。
そして――
レオナ。
セラが周囲を見回す。
「本当にやるんですね」
レオナは短く答える。
「やる」
地面に打ち込まれる杭。
一直線。
果てが見えない。
「ここが起点」
レオナが言う。
設計図通り。
迷いなし。
工事開始。
まず。
整地。
だが街道とは違う。
精度が段違い。
誤差を許さない。
次に。
基礎。
石材。
金属。
魔導補強。
「強度優先」
レオナの指示。
レールが敷かれる。
二本。
平行。
どこまでも続く。
セラが呟く。
「……異様ですね」
道ではない。
ただの地面でもない。
“専用の線”
魔導具が動く。
自動で測定。
自動で補正。
歪みゼロ。
作業速度が異常。
通常なら数年。
だが――
数日で進む。
「ありえない……」
作業員が呟く。
レオナは気にしない。
「効率化」
それだけ。
やがて。
車両が運ばれてくる。
長い。
重い。
連結構造。
魔導炉が中央に設置される。
心臓。
動力源。
セラが一歩引く。
「……これが動くんですか?」
レオナ。
「動かす」
試験。
魔力注入。
魔導炉が光る。
低い振動。
地面がわずかに震える。
次の瞬間。
車両が動く。
滑る。
だが。
力強い。
加速。
加速。
さらに加速。
「速い……!」
誰かが叫ぶ。
街道の魔導馬車とは別次元。
比較にならない。
一直線。
止まらない。
そして。
大量の荷。
満載。
それでも。
速度は落ちない。
「……運んでる量が違う」
商人が呟く。
一度に。
大量に。
遠くまで。
“輸送”の概念が変わる。
セラが小さく言う。
「これ……」
レオナが答える。
「基盤」
都市のためではない。
その先。
「文明の基盤」
沈黙。
誰も否定できない。
その日。
最初の路線が完成する。
都市と農地。
直結。
収穫物が運ばれる。
一瞬で。
市場に並ぶ。
量が違う。
速度が違う。
商人が笑う。
「終わったな……」
旧来の物流は。
完全に置き去り。
都市が変わる。
いや――
都市の枠を超える。
セラが静かに言う。
「もう“都市”じゃないですね」
レオナは頷く。
「そう」
「文明」
その一言。
夕方。
レールの上を走る列車。
光を反射する。
一直線の未来。
その光景を見て。
誰もが理解する。
ここはもう――
別の世界。
だが。
遠く。
王国。
まだ知らない。
レオナが最後に言う。
「次」
セラが振り向く。
「外が気づく」
静かな声。
しかし確実に。
波紋は広がる。




