第39話 鉄道計画
会議室。
都市の中枢。
長机を囲む人々。
商人、技術者、治安隊、農業担当。
そして――
レオナ。
机の上に広げられたのは、一枚の紙。
巨大な設計図。
セラが覗き込む。
「……これ、何ですか?」
レオナは即答。
「輸送網」
沈黙。
誰も理解できない。
技術者が恐る恐る口を開く。
「道……ですか?」
レオナは首を振る。
「違う」
短く否定。
「専用路線」
「専用車両」
「連続運行」
言葉だけが並ぶ。
だが――
規模が違う。
設計図。
都市を中心に。
外へ。
さらに外へ。
線が伸びている。
放射状に。
網のように。
セラの声が震える。
「……これ、全部作るんですか?」
レオナ。
「そう」
ざわめき。
一斉に広がる。
商人が立ち上がる。
「待ってくれ! こんな距離を!?」
農業担当。
「山も川もありますよ!?」
治安隊。
「管理できる規模じゃない!」
全員が同じ反応。
無理だ。
規模が大きすぎる。
レオナは静かに聞いている。
そして。
一言。
「できる」
空気が止まる。
「魔導馬車は点」
「街道は線」
「だがこれは――」
少しだけ間。
「網」
設計図を指す。
すべてが繋がる構造。
一部が止まっても。
他で補える。
流れが途切れない。
技術者が呟く。
「……発想が違う」
レオナは続ける。
「輸送量を増やす」
「速度を上げる」
「安定させる」
「そのための基盤」
セラが額を押さえる。
「スケールがおかしい……」
さらに。
レオナが別の図を出す。
車両設計。
長い。
連結構造。
大量輸送前提。
「一度に運ぶ」
商人が息を呑む。
「……これ一台で、何台分だ?」
レオナ。
「十倍以上」
完全に沈黙。
農業担当が震える声で言う。
「……収穫、全部一気に?」
レオナは頷く。
「可能」
治安隊。
「兵も……?」
「可能」
すべての規模が変わる。
セラが小さく笑う。
「もう都市の話じゃないですね」
レオナは否定しない。
「そう」
「都市を拡張する」
それだけ。
技術者が恐る恐る聞く。
「……エネルギーは?」
レオナ。
「魔力」
即答。
「供給網も作る」
追加情報。
逃げ道なし。
さらに。
「自動制御」
「運行管理」
「衝突防止」
説明が続く。
誰もついていけない。
ただ一つ。
全員が理解している。
“これは実現したら終わる”
世界が変わる。
完全に。
セラがレオナを見る。
「……本気ですか?」
レオナ。
「当然」
迷いなし。
沈黙の後。
商人が笑い出す。
「はは……」
半ば諦め。
半ば興奮。
「やるしかないか……」
技術者も頷く。
「設計、詰めます」
農業担当。
「収穫量、さらに増やせますね」
治安隊。
「対応体制を見直す」
一人、また一人。
覚悟を決める。
セラがため息。
「結局こうなるんですよね」
レオナは淡々とまとめる。
「開始する」
その一言。
全員が動き出す。
外。
都市。
活気。
だがそれは――
序章。
これから作られるのは。
道ではない。
馬車でもない。
世界そのものを繋ぐ“構造”。
レオナが窓の外を見る。
遠く。
まだ何もない土地。
そこに。
線が引かれる。
未来が走る。
「次は実行」
セラが小さく呟く。
「止まらないですね」
レオナは答える。
「止める理由がない」
革命は。
次の段階へ。
すべてを飲み込む規模で。
フック:実行(魔導鉄道建設開始)




