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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第35話 技術研究

朝。


工房区画の奥。


新しく建てられた建物。


外見は質素。


だが中は――


別世界だった。


「ここが、研究棟です」


セラが扉を開ける。


光が差し込む。


中には机。


道具。


素材。


そして――


人。


大勢の人。


職人。


魔導技術者。


農業担当。


薬師。


種族も経歴も違う者たちが、一つの空間に集まっていた。


「……増えましたね」


セラが呟く。


レオナは短く答える。


「必要だから」


それだけ。


中央。


大きな机。


そこに図面が広げられている。


複雑な線。


魔導回路。


構造設計。


それを囲む数人。


議論している。


「ここ、魔力が逃げる」


「なら補助回路を追加だ」


「素材が持たない」


「別素材で試す」


止まらない。


意見がぶつかる。


だが――


誰も遠慮しない。


上下がない。


正しいかどうか。


それだけで判断される。


セラが小声で言う。


「……レオナ様が全部やるんじゃないんですね」


以前なら。


農具も。


都市も。


全部レオナが作っていた。


だが今は違う。


レオナは首を振る。


「非効率」


短い否定。


「一人では限界がある」


だから――


「分ける」


壁際。


担当ごとの区画。


「農業班」


土壌改良。


種の研究。


「医療班」


薬草。


治療法。


「魔導班」


装置。


回路。


「建築班」


構造。


素材。


それぞれが動いている。


同時に。


並列で。


「報告」


一人がレオナに近づく。


若い研究者。


少し緊張している。


「魔導農具の改良案です」


図面を差し出す。


レオナは見る。


一瞬。


「通す」


それだけ。


研究者が目を見開く。


「え……いいんですか?」


「試せ」


結果で判断。


それがルール。


別の場所。


小さな失敗。


煙が上がる。


「うわっ!」


「消せ消せ!」


慌てる声。


だが誰も怒らない。


レオナが一言。


「記録」


それだけで、全員が動く。


何が起きたか。


なぜ失敗したか。


書き残す。


次に活かす。


セラがそれを見て言う。


「……怒らないんですね」


普通なら叱責。


責任。


だがここにはない。


レオナは答える。


「失敗は情報」


価値がある。


無駄ではない。


奥。


一つの装置。


未完成。


だが複雑。


魔石が複数埋め込まれている。


「これが?」


セラが問う。


レオナは頷く。


「次」


短い言葉。


「何をするんですか?」


一瞬の間。


レオナは答える。


「繋ぐ」


「繋ぐ……?」


セラが首をかしげる。


レオナは装置を見る。


都市。


人。


情報。


それらは今、バラバラに存在している。


「遅い」


現状の問題。


伝達。


報告。


判断。


すべてに時間がかかる。


「だから――」


レオナが言う。


「繋ぐ」


工房の中。


研究者たちが動き続ける。


誰かが考え。


誰かが試し。


誰かが改良する。


一人ではない。


全体で進む。


セラが静かに言う。


「……変わりましたね」


レオナがいなくても。


回る。


進む。


生まれる。


レオナは否定しない。


「それでいい」


むしろ、それが目的。


「私がいなくても進む」


その一言。


セラが少し黙る。


それは――


完成に近づいている証。


外。


工房の煙が空に上がる。


その下で。


新しい技術が生まれている。


止まらない。


加速する。


レオナが最後に言う。


「次は通信」


セラが顔を上げる。


「やっぱりそれですか」


レオナは頷く。


「情報が遅い」


だから変える。


根本から。


遠く。


都市の中。


人々が動く。


だがまだ知らない。


もうすぐ――


世界の距離が、変わることを。


静かに。


確実に。


革命は次の段階へ進む。

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