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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第33話 魔族同盟

広場。


即席の会議の場。


机が一つ。


椅子が数脚。


それだけ。


装飾も、儀式もない。


だが――


空気は張り詰めていた。


向かい合うのは、魔族の使者。


そしてレオナ。


周囲にはセラと数人の代表者。


竜族も、少し離れて立っている。


全員が見ている。


この場を。


「条件を確認する」


魔族の代表が口を開く。


声は静か。


だが、重い。


レオナは頷く。


「簡潔に」


無駄は省く。


それが前提。


「第一」


魔族が指を立てる。


「互いに攻撃しない」


不可侵。


基本条件。


レオナは即答する。


「同意」


迷いはない。


理由も単純。


「攻撃する意味がない」


それだけ。


「第二」


魔族が続ける。


「干渉しない」


領域。


文化。


内部事情。


踏み込まない。


レオナは少し考え、頷く。


「問題ない」


ただし――


「交易は別」


一言、付け加える。


魔族が目を細める。


「当然だ」


意図を理解している。


「第三」


一瞬の間。


「交易の許可」


セラが小さく息を吐く。


来た、と。


魔族は続ける。


「資源を交換する」


「互いに利益を得る」


レオナは短く答える。


「受け入れる」


その瞬間。


空気が、わずかに変わる。


「……いいのか?」


誰かが小さく呟く。


人間と魔族。


長く続いた対立。


それが――


ここで、終わるのか。


レオナは振り返らない。


ただ言う。


「利益がある」


「だからやる」


それだけ。


感情ではない。


合理。


だが、その結果は――


あまりにも大きい。


魔族がゆっくりと立ち上がる。


「では――」


一瞬の間。


「合意だ」


その言葉が落ちる。


静寂。


そして――


ざわめき。


広場に波のように広がる。


「……終わった?」


「戦わないのか……?」


信じられない。


だが、現実。


剣は抜かれない。


血も流れない。


ただ、言葉で決まった。


その日の夕方。


早速、変化が現れる。


門の前。


新しい荷。


見慣れない素材。


魔族の領域から運ばれてきたもの。


「これが……」


職人が手に取る。


魔力を帯びた鉱石。


質が違う。


「こっちも出す」


農産物。


加工品。


道具。


交換される。


その場で。


金だけではない。


物と物。


価値と価値。


流れが生まれる。


市場。


活気が、さらに増す。


新しい商品。


新しい技術。


新しい需要。


「これ、どこからだ?」


「魔族のとこらしいぞ」


驚きと興奮が混ざる。


誰も止めない。


誰も拒まない。


なぜなら――


「得だから」


それだけ。


セラはその光景を見ていた。


少しだけ、信じられないという顔で。


「……終わりましたね」


長かったもの。


大きかったもの。


それが、こんなにもあっさりと。


レオナは答える。


「始まっただけ」


短い言葉。


セラが振り返る。


「……何が」


レオナは街を見る。


人が動く。


物が流れる。


種族が混ざる。


そして――


「前提が変わった」


人間と魔族。


敵ではない。


その時点で、世界の構造は崩れ始めている。


少し離れた場所。


竜族が腕を組んでいる。


その一人が呟く。


「……面白い」


戦わずに繋がる。


力ではなく、利益で。


それは、今までにない形。


「この流れは止まらんな」


誰も否定しない。


夜。


街に灯りがともる。


その下で、人々は普通に話す。


笑う。


取引する。


そこに、種族の境界はない。


ただの違い。


それだけ。


セラが小さく言う。


「……次は何ですか」


少しだけ疲れた声。


だが、どこか楽しんでもいる。


レオナは短く答える。


「教育」


セラが固まる。


「……まだやるんですか」


レオナは頷く。


「広げる」


今の仕組み。


今の知識。


それを――


全体に。


「再現可能にする」


その一言で、すべてが繋がる。


風が吹く。


新しい流れが、街を抜ける。


戦いは終わった。


だが――


進化は、これからだった。

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