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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第31話 竜族定住

竜族が、街に残った。


それは“訪問”ではなく――“滞在”。


いや、もっと正確に言えば。


「ここを拠点にする」


その宣言だった。


最初の日。


空気は、明らかに違った。


市場。


通り。


どこにいても、視線が集まる。


竜族が歩くだけで、人の流れがわずかに変わる。


無意識の距離。


本能的な警戒。


だが――


「荷、どこに運ぶ?」


竜族の一人が、普通に聞いた。


周囲が固まる。


「……え?」


「仕事だ」


短い答え。


それ以上でも以下でもない。


依頼主の商人が戸惑いながら答える。


「あ、ああ……倉庫までだ」


竜族は頷く。


そして――


軽く持ち上げる。


本来、三人がかりの荷。


それを一人で。


何の苦もなく。


「……は?」


商人が声を失う。


そのまま運ぶ。


速い。


正確。


無駄がない。


置く。


終わり。


「次は?」


当たり前のように聞く。


その瞬間。


空気が変わった。


「……働いてる」


誰かが呟く。


竜族が。


あの存在が。


命令されているわけでもない。


従属でもない。


ただ、仕事をしている。


報酬が渡される。


竜族はそれを受け取る。


確認もせず、懐に入れる。


文句もない。


特別扱いもない。


「同じ……か」


周囲の住民が小さく呟く。


人間と。


獣人と。


同じ扱い。


同じ基準。


それを、竜族が受け入れている。


別の場所。


工房。


竜族が、道具を手にしている。


魔導装置。


じっと観察する。


「構造は単純だな」


一言。


職人が眉をひそめる。


「……単純?」


だが、次の瞬間。


竜族は手を加える。


魔石の配置を変える。


流れを整える。


起動。


――音が変わる。


滑らかになる。


出力が上がる。


「……え?」


職人が固まる。


「何をした?」


竜族は肩をすくめる。


「効率化しただけだ」


レオナがそれを見て、わずかに目を細める。


「……悪くない」


短い評価。


竜族が笑う。


「当然だ」


互いに一歩も引かない。


だが――敵対もない。


技術が交わる。


人間の構造設計。


竜族の魔力制御。


それが組み合わさる。


新しい形が生まれる。


「これ、今までより軽いぞ」


「出力も上がってる……」


現場がざわつく。


変化が早い。


加速している。


セラはその様子を見ていた。


静かに。


そして、小さく呟く。


「……すごいですね」


「何が」


レオナが聞く。


セラは少しだけ言葉を選ぶ。


「竜族が……普通に混ざってる」


本来、あり得ない光景。


頂点の存在。


それが、都市の一部として機能している。


レオナはあっさり答える。


「条件が同じだから」


「価値があるなら参加する」


それだけ。


上下ではない。


必要かどうか。


それだけで決まる。


広場。


人々が集まる。


その中に、竜族もいる。


違和感は――もう薄い。


完全ではない。


だが、確実に変わっている。


「……ここ、変だな」


竜族の一人が呟く。


「何が」


レオナが聞く。


「強さが意味を持たん」


一瞬の沈黙。


そして、続く。


「だが――悪くない」


その言葉に、周囲が静かに息を吐く。


認めた。


明確に。


だが。


その変化は、内側だけで終わらない。


竜族の存在。


その情報は、すでに外へ流れている。


「あの街に、竜族がいるらしい」


「しかも、働いてるとか……」


噂が広がる。


歪んで。


誇張されて。


だが、核心は同じ。


“異常な都市”。


レオナはそれを知っていた。


「次が来る」


セラが顔を上げる。


「……何が」


レオナは短く答える。


「外」


その一言。


そして――


門の向こう。


新たな来訪者の気配。


今度は、力ではない。


別の形の存在。


風が変わる。


静かに。


だが確実に。


この街は、世界と繋がり始めていた。

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