表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/54

第3話 追放命令

「貴様には――相応の処罰を与える!」


張り詰めた空気の中、第一王子エドワードは高らかに宣言した。


「レオナ・グレイウッド!」


一歩、踏み出す。


「貴様を――辺境へ追放する!!」


どよめきが広間を揺らした。


「辺境……!?」

「それはあまりにも……」

「事実上の追放だ……」


貴族たちの間にざわめきが広がる。


辺境。


それは王都から遠く離れた未開の地。

インフラも整わず、治安も不安定。

豊かな貴族社会とは無縁の、過酷な土地。


貴族令嬢にとっては――


ほぼ人生の終わりを意味する。


王子は満足げにレオナを見下ろした。


「これが貴様の罪に対する裁きだ」


隣のリリアが不安そうに王子を見上げる。


「エドワード様……そこまで……」


「甘いな、リリア」


王子は首を振る。


「これでも情けをかけた方だ。本来なら――」


その言葉を最後まで聞く者は、あまりいなかった。


なぜなら。


レオナ・グレイウッドが、まったく別のことを考えていたからだ。


(辺境……)


頭の中に地図が浮かぶ。


王都から西へ数日。

山と森林に囲まれた広大な土地。


未開発。

低人口。

資源未調査。


(……土地が広い)


思考が進む。


農地としての可能性。

開発余地。

人口密度の低さ。


(制約が少ない)


王都と違い、しがらみも規制も少ない。


(自由度が高い)


結論。


悪くない。


むしろ――


(好条件ね)


レオナは顔を上げた。


王子の視線を真正面から受け止める。


そして、あっさりと言った。


「承知しました」


再び。


空気が止まった。


「……は?」


王子が間の抜けた声を漏らす。


貴族たちも同じように固まっていた。


誰もが予想していた反応は、拒絶か絶望。


だがレオナは違った。


あまりにもあっさりと受け入れたのだ。


「辺境への移動、準備にどれくらい猶予がありますか?」


事務的な口調。


まるで異動の確認でもするかのように。


王子の顔が歪む。


「な、何を……」


レオナはさらに続ける。


「輸送手段と物資の手配も必要になります。最低限の人員は――」


「貴様!」


王子が声を荒げる。


だがレオナは止まらない。


「あと、現地の土地情報も欲しいですね。測量は済んでいますか?」


完全に話が別の方向へ進んでいる。


貴族たちがざわめく。


「何を考えている……?」

「追放だぞ……?」

「理解していないのか……?」


ただ一人。


グレイウッド公――レオナの父だけが、無言で娘を見ていた。


表情は読めない。


怒りか、呆れか、それとも――


何かを悟っているのか。


レオナはそんな父の視線にも気づいていたが、特に反応はしなかった。


(王都は非効率)


改めてそう結論づける。


政治も、経済も、人間関係も。


無駄が多すぎる。


それに比べて辺境は――


(ゼロから構築できる)


制約がない。


ならば。


(作ればいい)


レオナは静かに息を吐いた。


王子はもはや言葉を失っていた。


完全に主導権を奪われている。


その沈黙を破ったのは――


一人の少女の声だった。


「……お待ちください」


控えめだが、はっきりとした声。


視線が集まる。


そこに立っていたのは、レオナの侍女――セラだった。


深く頭を下げる。


「僭越ながら申し上げます」


王子が眉をひそめる。


「なんだ、侍女風情が」


セラは顔を上げた。


その瞳はまっすぐだった。


「レオナ様が辺境へ向かわれるのであれば」


一拍。


「私も同行させていただきます」


静寂。


貴族たちが息を呑む。


王子も一瞬、言葉を失った。


侍女が。


すべてを捨てて。


追放される主に付いていくと宣言したのだ。


レオナはわずかに目を細める。


「セラ」


短く呼ぶ。


その声に、ほんの少しだけ――


感情が混じっていた。


セラは一歩前に出る。


「レオナ様の侍女として」


はっきりと言い切る。


「最後までお仕えいたします」


広間の空気が変わった。


これはもう、単なる断罪ではない。


――物語の始まりだ。


レオナは小さく息を吐いた。


(……仕事が増えそうね)


だが。


ほんのわずかに、口元が緩んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ