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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第16話 都市計画

市場の喧騒から少し離れた場所。


仮設の机の上に、一枚の紙が広げられていた。


いや――一枚ではない。


何枚も。


線が引かれている。


直線。


曲線。


区切られた区画。


セラはそれを見て、言葉を失った。


「……これ、全部……?」


レオナは頷く。


「設計図」


簡潔な答え。


だが、その内容は簡潔ではなかった。


「ここが中央区画」


指で一点を示す。


今の市場の位置だ。


「人の流れが集まる場所にする」


線が放射状に伸びている。


「そこから道路を引く」


太い線。


細い線。


明確に分けられている。


「主幹路と支路」


「物流と人の流れを分離する」


セラが目を細める。


理解しようとする。


だが情報量が多い。


レオナは構わず続けた。


「住宅区はここ」


区切られた一角を示す。


「密集させすぎない」


「火災と衛生の問題が出るから」


さらに別の場所を指す。


「こっちは商業区」


「市場を拡張する」


セラの視線が追いつかない。


「……待ってください」


思わず手を上げる。


「これ、全部やるんですか?」


「ええ」


即答。


迷いなし。


セラは図面をもう一度見る。


道路。


区画。


施設。


それはもう、“村”でも“町”でもない。


完全な――


「都市……」


無意識に言葉が漏れる。


レオナは軽く頷いた。


「そうよ」


当然のように。


セラは額を押さえる。


「……本当にやるんですね」


「やるわよ」


レオナは淡々と答える。


「今やらないと無駄が出る」


成長してから整えるのは遅い。


非効率。


だから最初からやる。


それだけの話。


セラはゆっくりと図面に視線を戻す。


そして、ある違和感に気づいた。


「……これ」


一点を指さす。


「最初の村の時点で、もう考えてました?」


レオナは一瞬も迷わず答えた。


「当然」


その一言に、セラは完全に言葉を失う。


「最初から……ここまで……?」


「ええ」


レオナは平然としている。


「人が増えるのは予測できた」


「なら、最終形も決めておくべき」


合理的。


徹底的に。


セラはため息をついた。


「スケールがおかしいんですよ……」


だが、否定はできない。


現に、ここまで来ている。


市場は動いている。


人も増えている。


この設計があれば――


さらに加速する。


レオナは図面を一枚めくった。


新しい線。


別の構造。


「次はこれ」


セラが覗き込む。


「……これは?」


そこに描かれていたのは――柱のようなもの。


一定間隔で並んでいる。


線で繋がれている。


レオナが説明する。


「照明」


「夜でも活動できるようにする」


セラの目が見開かれる。


「……夜?」


この村にとって、夜は“終わり”だった。


日が落ちれば、活動は止まる。


それが当たり前。


だが――


「光があれば、時間は伸びる」


レオナは淡々と言う。


「効率も上がる」


理屈は単純。


だが、その影響は大きい。


セラは図面を見つめる。


柱。


配置。


範囲。


理解した瞬間、背筋がぞくりとした。


「……まさか」


ゆっくりと顔を上げる。


「街全体、明るくする気ですか?」


レオナは頷いた。


「ええ」


一切の躊躇なく。


風が吹く。


紙がわずかに揺れる。


そこに描かれているのは――未来。


まだ何もない場所に、すでに形がある。


この都市は、偶然ではない。


最初から、作られている。


そして次に実現するのは――


夜を変える光。

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