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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第13話 交易開始

馬車は去り、そして――また来た。


数日後。


同じ商人が、再び村へと姿を現した。


今度は迷いがない。


まっすぐに畑へ向かい、収穫された作物を確認する。


量も、質も、前回と同じ水準。


いや、むしろ安定している。


「……継続できるのか」


低く呟く。


その声には、すでに疑いではなく確信が混じっていた。


レオナは短く答える。


「できる」


それだけで十分だった。


商人は頷く。


「なら――契約だ」


懐から書面を取り出す。


定期契約。


一定量の作物を、継続的に買い取る約束。


村人たちがざわめく。


「契約……?」


「毎回、売れるってことか……?」


信じられない。


だが、目の前で話は進んでいる。


レオナは書面に目を通す。


条件を確認。


問題なし。


そのまま、迷いなく署名した。


「これで成立ね」


商人も頷く。


「毎月来る」


その一言が、すべてを変えた。


――交易が、始まった。


それからの日々は、目に見えて変わっていった。


収穫。


出荷。


対価としての金。


その流れが、繰り返される。


村に、金が入る。


最初は戸惑いだった。


だが、やがて使い方を覚える。


道具を直す。


服を買う。


食事が増える。


子供たちの顔色が良くなる。


「……こんなに食べていいのか?」


ある男が、山のような食事を前にして呟く。


誰も答えない。


だが、その手は止まらない。


別の場所では、子供が笑っている。


パンを両手で抱えて。


こぼしながら食べている。


それを見て、大人たちが目を細める。


「……豊かだな」


誰かが言った。


その言葉は、静かに広がる。


豊かさ。


それは、この村にはなかったもの。


だが今、確かに存在していた。


セラはその様子を見て、ふっと息を吐く。


「別世界ですね」


「当然よ」


レオナは淡々と答える。


「生産と流通が繋がれば、こうなる」


感慨はない。


ただの結果。


レオナの視線は、すでに次へ向いていた。


(安定した)


生産はある。


流通も確保した。


なら次は――


「市場を作る」


ぽつりと呟く。


セラが首を傾げる。


「市場……ですか?」


その声は、近くにいた村人たちにも届いた。


「市場?」


「なんだそれ……?」


聞き慣れない言葉に、ざわめきが広がる。


レオナは簡単に説明する。


「人と物を集める場所よ」


「集める……?」


「売る側と、買う側をまとめる」


村人たちは顔を見合わせる。


まだ実感が湧かない。


だが。


「ここに来れば、何でも手に入る場所を作る」


その一言で、少しだけ理解が進む。


「……そんなこと、できるのか?」


不安な声。


レオナは即答する。


「できる」


根拠はある。


生産はある。


金もある。


なら――人が来る。


「人が来れば、勝手に広がる」


シンプルな理屈。


村人たちは黙る。


難しいことは分からない。


だが、これまでの結果がある。


否定できない。


セラが小さく笑う。


「また大きくなりますね」


「そのためにやってる」


レオナは平然と言う。


その時だった。


村の入口の方で、またざわめきが起きる。


「……誰か来てるぞ」


「商人じゃない……」


数人の人影。


荷物を背負い、疲れた様子で歩いてくる。


見慣れない顔。


だが――共通しているものがあった。


「……痩せてる」


「旅人か……?」


彼らは村へと近づいてくる。


不安げな目で。


だが同時に、何かを求めるように。


レオナはその様子を見て、わずかに目を細めた。


(早いわね)


予想通り。


いや、予想以上。


人が動き始めている。


この村へ。


風が吹く。


畑を抜け、村を通り、外から来た者たちの元へと届く。


この場所は、もう変わり始めている。


外から人を引き寄せるほどに。

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