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悪役令嬢は物語に支配された世界を、文明で解放する  作者: 南蛇井


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第11話 農業拡張

収穫が終わった翌日。


休む者はいなかった。


いや――休めなかった。


村人たちの目は、すでに次を見ていた。


畑の外。


広がる荒地。


これまで誰も手をつけなかった場所。


「ここも……やるんですか?」


一人の村人が、不安と期待を混ぜた声で問う。


レオナは即答した。


「ええ」


迷いはない。


「土地はある。使うだけよ」


シンプルな理屈だった。


村長がゆっくりと頷く。


「……やりましょう」


その一言で、動きが決まった。


開墾が始まる。


荒れた土地。


石が転がり、土は固く締まっている。


以前なら、途方に暮れていただろう。


だが今は違う。


「それ、貸してくれ!」


「順番だ、待て!」


村人たちが奪い合うように手に取るのは――魔導農具。


レオナが改良した鍬。


それが、状況を一変させていた。


ざくり。


土が割れる。


ごり、と石が動く。


これまでなら数人がかりでやっていた作業が、一人でできる。


しかも、速い。


圧倒的に。


「こんなに楽なのか……!」


男が驚きの声を上げる。


「半分どころじゃない……!」


作業はどんどん進む。


土が起こされる。


石が取り除かれる。


均されていく。


レオナは少し離れた場所から、その様子を見ていた。


セラが隣に立つ。


「人が変わりましたね」


「ええ」


レオナは頷く。


「成果が見えたから」


理由は単純。


結果が出れば、人は動く。


それだけの話だ。


畑は広がる。


昨日まで荒野だった場所が、次々と耕地へと変わっていく。


一日。


二日。


そして数日。


作業は止まらない。


だが――疲労は以前ほどではない。


魔導農具の効果は明確だった。


仕事量は、体感で半分以下。


それでいて、進捗は倍以上。


効率が違う。


そして。


新たに整えられた畑に、種がまかれる。


水が与えられる。


管理される。


結果は――


早かった。


「また……増えてる……」


村人が呆然と呟く。


新しい畑。


そこでも作物は順調に育っていた。


以前と同じ。


いや、それ以上の勢いで。


そして収穫。


積み上げられる作物の量は――


再び、倍。


いや、総量としてはそれ以上。


村人たちはもう驚ききれない。


ただ笑うしかなかった。


「すごい……」


「本当に増えてる……」


子供たちがはしゃぐ。


大人たちも顔を緩める。


村に――


活気が戻っていた。


誰もが動いている。


声がある。


笑いがある。


それは、この村から長く失われていたものだった。


セラがその光景を見て、ふっと笑う。


「別の場所みたいですね」


「元から同じ場所よ」


レオナは淡々と言う。


「使い方が違うだけ」


その言葉通りだった。


世界は変わっていない。


変えたのは、やり方。


レオナは畑を一瞥し、すぐに視線を外した。


すでに次の工程を考えている。


(生産は安定した)


なら次は――


(流通)


余剰が出る。


それをどう扱うか。


考えるまでもない。


その時。


村の入口の方で、小さなざわめきが起きた。


「……なんだ?」


「誰か来てるぞ」


村人たちが顔を上げる。


遠く。


土煙が上がっている。


馬車だ。


この辺境には珍しい光景。


ゆっくりと近づいてくるそれを見て、誰かが呟いた。


「商人……か?」


その言葉に、空気が少しだけ変わる。


レオナは視線だけを向けた。


(早いわね)


予想よりも。


だが、問題ない。


むしろ――都合がいい。


風が吹く。


揺れる作物の向こうに、馬車の影が見える。


この小さな村の変化は――


すでに外へ漏れ始めていた。

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