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第二十四話:宴会です。酒乱です(前半)

会場を揺るがすドラムロールが、今、鼓膜を破らんばかりの衝撃波となって最高潮に達した!!

司会のカラス獣人が、マイクを握りしめ、身を乗り出して、全霊の咆哮を叩きつける!!


「——お待たせいたしましたぁぁッ!! 最後に登場するのは、この男だぁぁーーーッ!!」 


パァァァンッ!! パパパパァァァンッ!!

会場中のすべてのスポットライトが一点に集中し、はじめが震えながら立つカーテンに、視線のレーザービームが突き刺さった!!


「見てください、この圧倒的なる『雄』のオーラ!! 獣国の闇を払い、我らが王・森羅万象を死の淵から救い出した、奇跡の異邦人!! 年齢という名の熟成を経て、今まさに、最上の香りを放つヴィンテージ・ヒーローの登場だぁぁぁッ!!」


ジャァァァーーンッ!! という銅鑼の音とともに、真紅のカーテンが左右に弾け飛ぶ!!


「刮目せよ、この暴力的なまでの肉体美ッ!! 漆黒の毛皮から覗くのは、鋼の如く鍛えられ、かつ、大人の包容力を湛えた黄金の胸板だぁぁーーーッ!! 二の腕に輝く銀の牙は、まさに彼が捕食者であることを証明しているッ!!」


一歩、はじめが光の中に踏み出す。

その瞬間、会場を埋め尽くした数千の獣人たちが、一斉に息を呑んだ。


「あぁぁーっと!! 漂ってくるのは何だぁぁ!? これは……メスならば本能で跪かざるを得ない、野生のフェロモン・フレグランスだぁぁッ!! 胸元から、脇から、そしてその瞳から、見えない『愛の触手』が会場中の女子を、いや、男子さえもなぎ倒していくぅぅッ!!」


観客席から、地響きのような「はじめぇぇぇーーー!!」「抱いてぇぇーーー!!」という、もはや断末魔に近い歓声が上がる!!


「羞恥に頬を染めながらも、その佇まいはまさに王者の風格!! 優しさと強さ、そして隠しきれない淫靡な色香を纏った、五十八歳の最終兵器!! 我らが救世主、はじめ様の登場だぁぁぁぁーーーーーッ!!!」


(……な、なんなんだ、この紹介はぁぁぁっ!!)


はじめは、顔面を真っ赤に通り越して紫にし、溢れ出す「ワイルドな香り」と、露出しすぎた胸元をどうにか隠そうと右往左往しながら、逃げ場のないランウェイをトボトボと歩き出した。


その姿は、獣人たちには「余裕の散策」に見え、熱狂をさらに加速させる!!

だが、その熱狂の渦に、冷や水をぶっかけるような「音速の衝撃波」が近づいていることに、まだ誰も気づいていなかった……。


「さあさあ、英雄・はじめ様!! こちらのメイン席、王の御隣へどうぞぉぉッ!!」


カラス司会の流れるような案内で、はじめは恥ずかしさに身を縮めながら、森羅万象の隣に座らされた。

会場を埋め尽くす獣人たちの期待と熱気、そして鼻を突く「魔酒」の甘い香り。


「——皆の者ッ!! 今日は無礼講だッ!! 獣国の救世主たちに、最高の感謝をッ!! ……乾杯だぁぁぁーーーッ!!!」


森羅万象の地鳴りのような号令とともに、一斉にジョッキが掲げられる。

そこで振る舞われたのは、この国でしか作られない極上の果実酒——『甘露の雫(別名:初恋殺し)』。

見た目は透き通るような黄金色。口当たりはジュースのように甘く、アルコール特有の刺激が一切ない。だが、その実、度数は魔物級という、まさに「悪魔の飲み物」であった。


「ぷはぁっ!! ……これ、甘くて美味しいですねっ!」


お酒の味を知らない、純真無垢な少女・りりは、その甘美な味に誘われ、一杯、また一杯と喉を鳴らしてしまった。

そして、宴が始まってわずか十分後。


「……うぅぅ……っ。はじめさぁぁぁん……、はじめ、さぁぁん……っ!!」


「ちょ、おいっ!? りり、飲みすぎだ!!」


気づいた時には、りりは既に「べろんべろん」の泥酔状態。

真っ赤な顔をして、介抱しようとするゼノの服を掴んで、大粒の涙を流し始めた。


「ひぐっ……!! こんなに……こんなに好きなのにぃ……っ!! はじめさん……、ぜんっぜん、私の気持ち、気づいてくれないんですぅぅ……っ!! 鈍感! ヒーローのバカぁぁ……っ!!」


「わかった、わかったから!! ほら、水を飲め!! 落ち着けって!!」


必死になだめるゼノだが、りりの「泣き酒」は止まらない。

その騒ぎを横目に、はじめはといえば、屈強な獣人たちに囲まれ、「はじめ様、この筋肉、どう鍛えたんですか!?」「今夜一晩、私の巣に来ませんか!?」と、もみくちゃにされていて、りりの元へ駆け寄ることすらできない。


「(……だ、誰か助けて……。上様、ニヤニヤしてないで止めてくださいよぉ……っ!!)」


そんなカオスを尻目に、琥珀はといえば——。


「むにゃ……。お肉、おいしいです! こっちのお肉も、ふかふかですぅぅ!!」


一人、各テーブルを渡り歩き、大人顔負けの食欲で高級食材を片っ端から平らげ、幸せそうな笑みを浮かべていた。


平和と混沌が混ざり合う、至福の地獄絵図。

だが、宴の開始から三十分。

ついに、その「衝撃波」が城の防壁を越えた——!!


宴の開始から、ちょうど三十分。

「はじめ様ぁぁ!」「抱いてぇぇ!」という獣人たちの喧騒と、りりの「はじめさんのバカぁぁ!」という泣き声が入り混じる混沌とした会場に、突如として**「轟音」**が響き渡った。


「ドォォォォォンッ!!!」


城の重厚な扉を蹴破らんばかりの勢いで(実際には、迎撃しようとした衛兵たちが「赤い閃風」に一瞬でなぎ倒され)、一人の女性が乱入してきた。


「ハァ……ッ、ハァ……ッ!!」


そこに立っていたのは、虫国の女王・ヴェスパ。

超高速飛行の摩擦熱のせいか、はたまた昂る感情のせいか、その白皙の頬は朱に染まり、背中の美しい羽は見たこともないような濃い赤ピンク色に明滅している。

だが、はじめと目が合った瞬間、彼女は無理やり呼吸を整え、不自然なほど傲慢に顎を上げた。


「……フン。久しぶりだな、はじめ。……たまたまだぞ? たまたま業務の隙間ができて、偶然、暇を持て余したから、仕方なくだ。……本当に、仕方なくだ! ついでに寄ってやったのだ。感謝しろ!」


(……つい数日前に会ったばかりなのに、偶然って……)

はじめが困惑して固まる中、上座でそれを見ていた森羅万象が、獲物を見つけた猛獣のような笑みを浮かべた。


「……ほう。……偶然。……仕方なくだとな、小娘……」


「そうだッ!! 獣王よ、偶然だと言っているだろうが! 仕方なく、暇で、仕方なくだ!!」


森羅万象の「わかってるぞ」と言わんばかりのニマニマ顔に、ヴェスパは触角をピンと逆立てて言い返した。

だが、その視線はチラチラとはじめの「胸元ガバ開き・野性衣装」に向いており、動悸を抑えるのに必死なのは丸出しだった。


「あーっ!! 喉が渇いた!! 何か飲み物を出せ!!」


照れ隠しに叫んだヴェスパの前に、タイミングよく(あるいは、上様の指示通り完璧に)差し出されたのは、りりを一瞬で沈没させたあの黄金色の魔酒。


「あぁ、これか。ちょうどいい」


「あ、ヴェスパさん、それは——」


はじめの制止も聞かず、ヴェスパはジョッキを掴むと、女王としての気風の良さで、その『初恋殺し(ファースト・デス)』を豪快に——一気飲みした!!


「……プハッ!! 甘いではないか。これならいくらでも飲め——」


言い終わるか終わらないかのうちに、ヴェスパの瞳の焦点が、怪しく揺らぎ始めた。


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