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特異現象捜査部

 特異現象捜査部という謎の組織に属する男のメモ書きによって心陽が脱出用の札を見つけた一方、心陽や大輝とも別れた和真は脱出の手掛かりを探しに1人家中を駆け回っていた。

「ったくこの家ってどんだけ部屋あるんだよ」


 和真は心陽、大輝とはぐれた後、渋々1人で探索をするも同じ様な部屋を何度も行き来を繰り返し、今自分が何処にいるのかも分からず途方に暮れていた。


 そんな中、何周したかもはや分からないほど周った後の2階に上がった時、包丁が背中に刺さった状態でうつ伏せで倒れているスーツ姿の男性の遺体を発見した。


「もう今更驚かねぇけど……でも遺体を見るのはいいもんじゃねぇよな」


 そう言いながら和真は遺体を調べ始める。すると胸の内側ポケットから警察手帳のようなものを見つけた。


「この人警察官だったのか……じゃあこの家って捜査してたのか? 聞き込みばっかりで何もしてないと思ってたんだけどな。まぁこんな所に閉じ込められてたら外からじゃわからないか……」


 そんな事を考えながら手帳の中身を確認する。中には「福原ふくはら たけし」と名前が入っていた。だがやはり気になる箇所が複数に止まる。それはこの男性の所属部署、《《特異現象捜査部》》だった。


「特異現象……捜査部?」


 聞き慣れない部署の名前に本当に警察官なのかも疑いがかかる。偽装した手帳で実際は詐欺師何じゃないかという考えが頭をよぎるが今目の前に遺体として残っている事と現在置かれている状況を考慮すると説得力が出てくる。

 更に気になったのはこの手帳に付いている、まさに警察の象徴とも言える金の代紋。

 そこには本来、警察手帳ならば「都道府県警察」が書かれている筈の代紋だが目の前の代紋は何もかもが違っていた。タコを上から見たような姿だろうか? それとも何かの花とも見て取れそうで触手が伸びている謎の物体とも思える、見ているだけで精神がおかしくなりそうな不定形で神秘的な「ナニカ」が彫られており、その下に《《SPID》》と書かれた代紋だった。


「SPID? 何かの組織か?」


 不思議そうに手帳を調べているとその代紋が外れ、床に転がる。

 焦った和真は落ちた代紋を拾い上げ、手帳に嵌め直そうとした時、あることに気づく。

 特異現象捜査部、SPIDの代紋の裏に警察手帳によく見られる「神奈川県警察」の金の代紋があった。


「やっぱりこの人は警察なのか?」


 和真は手帳の上部にある顔写真の入ったポケットから顔写真を取り出し裏返す。やはりそこには「福原 武 特異現象捜査部」と書かれた面の裏に「巡査部長 福原 武」と書かれていた。

 どうやら特異現象捜査部は警察の中でも特殊で普段は警察官として活動し、今回のような特殊な事件では特異現象捜査部として2つの顔を持っているのでは無いかと推測する。


(この人が警察で特殊な事件としてここに来てたとすれば……)


 内心申し訳無いと思いながら遺体の身の回りを更に調べる。すると警察手帳とは別の手帳がもう一つ出てきた。

 手帳の中には「人を喰らう家調査記録」と書かれている。




 2014年5月21日 人を喰らう家 

 神奈川県横浜市 担当 福原 武 


 2013年11月、32歳会社員の男性が行方不明となる事件が起きた。12月に女子高生、その後も一ヶ月に1人ペースで行方不明が出る事件となった。どの行方不明者も目撃情報を辿れば最後にとある空き家の前となった。

誘い込まれるように人が消えていく事から「人を喰らう家」と地元では噂が広がる。


 神奈川県警は3月、4月に捜索隊として複数人巡査を派遣、しかし誰一人として帰還することは無かった。神奈川県警は警察庁へ調査結果を報告、警察庁は特異現象事件として特異現象捜査部へ捜査を一任。


捜査部は心霊事件とみて担当捜査官として霊能力者、福原武を派遣。


記録開始日時、捜査開始。

外見は一般的な一軒家であるものの霊的気配、呪力を感知。

敷地内に呪力結界を確認、対象を閉じ込める事に特化した領域であると推測。


正面玄関より突入開始、突入開始と共に扉の強制施錠。


部屋の変化を複数回確認。法則は不明、頻度・移動先共にランダムであると推測。


成人男性の死体を確認。

2013年11月被害者、32歳会社員 所有物による身元確認。


霊的存在を視認、外見は女子高生と思われる。霊的存在による殺意を確認、戦闘開始。


霊的存在に対する物理的接触は不可能。

しかし霊的存在からの物理的接触は可能と思われる。戦闘行為は非推奨。

霊的存在の撃退及び除霊は断念、逃走は成功。


霊的存在による情報の入手

霊的存在は当住居内の居住者、中野家の長女、中野久美。


県内大手自動車メーカー勤務の父 直樹と専業主婦の母 由美の間に産まれ、生前は母親による虐待を受けていた模様、父 直樹は離婚を提案も母 由美のヒステリックにより家庭内暴力事件に発展、離婚は破棄。


父 直樹は、娘 久美を連れて夜逃げを敢行、由美に見つかり家庭内抗争に発展、直樹は由美の殺害後、久美を殺害し自殺した。


生前への未練や怨嗟から霊体となると推測。

久美は膨大な呪力と霊力により住居を覆うほどの結界を展開。しかし結界の構造、部屋の変化の不規則さなど当人の意図で操作できないなど考察から結界の展開は本人の意図したものではないと推測。


一度帰還し制圧部隊の編成後、再度突入し除霊する事が最も確実だとは予想されるが元来、霊能力者は希少な存在であり、特異現象捜査部自体特異な人材のみで構成されている為人数も多いわけではない。心霊事件は可能ならば最小限の人数での調査が望ましい。


念の為キッチンの引き出しの裏に緊急脱出用に霊力を込めた札を隠しておいた。


これ以上犠牲者を出さない為に札の場所を記したメモを可能な限り残していく。


最終目標を除霊に設定、現場情報の回収のため引き続き調査を継続。




 手帳の記録はここで終わっていた。恐らく調査中に犠牲になってしまったのだろう。

 和真は手帳を遺品として懐にしまって立ち上がる。


「刑事さんの頑張り……無駄にはしないぜ、絶対に生き延びてやる」


 その後、2階を探索中、勉強机のノートに手を伸ばした時、スルッとノートの隙間から封筒が落ちる。和真は落ちた封筒を拾い上げ、中身を確認する。それは久美の母の手記のようなものであった。




あの子は絶対に渡さない……離婚なんて絶対にさせない……


あの人の思い通りになんてさせない。


黙って働いてお金さえ入れていればいいのよ。


あの人もあの子も私の幸せの為に生きてれば良いんだから。


あぁ、久美……あなただけはお母さんの味方なのよね?


そう、あなたの名前は久美、ドクダミから濁音をとってクミ。

ドクダミの花言葉は自己犠牲、あなたの人生は私の為に……濁音をとったのはあなたが他の悪い人達のせいで濁ることなく、綺麗なままでいて欲しい。


最高じゃない? 久美は私が付けた名前の通りに育っていくのよ。


離婚なんてさせない……絶対に逃さないんだから……




 久美の名前の由来について書かれた手記の内容を確認した後、スッと無言でその場に置き、ノートのページをめくる。




知ってたよ。お母さんは自分の事しか考えてなかったこと。


知ってたよ。お父さんは私の為にお母さんから離そうとしてたこと。


お母さんはお父さんと結婚するまでは夜のお仕事沢山してたんだよね。


学校でお勉強して来なかったから他にお仕事が無くてそうするしかなかったんだよね。だから辛い思い沢山してきたんだよね。

どうしても幸せになりたかったんだよね。


お父さんは沢山お勉強して大っきい会社に入って沢山お仕事してたけど身内からは結婚の話ばかりで焦っていたんだよね。

早く自分の親に孫の顔を見せたかったんだよね。


そんな二人の間に産まれたのが私、久美。

名前は建前上"永久に美しくありますように"と名付けられたとお父さんからは言われてた。

でもそんな意味じゃ無かった。


でも本当の意味の方が腑に落ちたんだよね。

だってじゃないと私の短くてつまらなかった人生の説明がつかないじゃん。


死んでから気付いたんだ、お父さんは私の事を否定した訳じゃないんだよね?私がやってた研究が呪いの一種だったから怒ったんだよね?死んでからしばらくしてやっと気づいたんだ。お父さんには怒ってたけど死んでから気づいても遅いよね。


お父さん、お母さん、ごめんね。私、もういい子じゃいられない……ひどいよ神様……全てが憎くて仕方無かった。


お父さんに殺された時、天国か地獄に行くのかなとか思ってたけど実際はそのまま家の中にいた。


死んでないのかなと思ったけど床にはちゃんと私とお父さんの死体があったからその時直感したんだよね。私は幽霊になっちゃったんだって。


だからどうせ幽霊になったんなら生きてた頃出来なかった事やろうと思った。

この世界への憎さも相まって私ばかり悲惨なのも納得がいかないから沢山人を殺そうと思った。死ぬ直前、私が見た光景を他の人達と共有したかった。死ぬ瞬間を他の人達にも感じて欲しかった。だから私は幽霊になってから持った不思議な力を使って人を家に誘い込んでは殺した。

恐怖で歪む表情を見た瞬間、胸の奥のざわざわが気持ちよかった。

もう死んでいる筈なのにあの瞬間だけは鼓動を打っているように感じたの。


暫くすると警察のような人が誘っても無いのに入ってきた時もあった。


あの人は私と同じ不思議な力を使ってきた、

霊能力者っていうのかな?結構厄介だったね。

でもあの人も背後から刺して殺した。


一方的に殺すのはたまらなく気持ちがいい、お母さんも私を叩く時こんな気持ちだったのかな?


もう私は死んでるんだし衝動に任せてやりたい事をやる、生きてて楽しくなかったんだから死んでから楽しむのも悪くないよね?


さて、次はどんな人を殺そうか?




「なんだよ……救いがねぇじゃねぇかこの家……」


 母親の久美に対する扱いと死後の久美が持った悪意への嫌悪感と家庭環境の救いの無さに複雑な思いを抱きながらノートを閉じた。


「まだまだあの久美っていう霊には謎ばっかりだけど……こんなの絶対間違ってる! なんとか成仏してもらえたりできれば……いや、それよりまずは脱出だ」


 和真は特異現象捜査部の福原が遺した手帳を握りながら部屋を出た。



◇ ◆ ◇ ◆



「ゆうた君! しっかりして! 起きてよ!」


 大輝はベッドに横たわる友人のゆうた君を発見し、必死に肩を揺すっていた。

 しかしゆうた君の意識は戻って来る気配は無く、大輝は最悪の事態を想像し目に涙を浮かべながら必死に声を掛ける。

 するとゆうた君の身体に違和感を感じる。


 ゆうた君の身体は既に冷たく温度を感じられない。首元には首を絞めたような手の跡が付いていた。

 大輝はゆっくりと震える手をゆうた君の胸に当てるも心臓の鼓動は感じられない。

 ゆうた君は、既に殺されていた。


「あ……あぁ……」


 認めたくない事実に声にならない声が力無く漏れる。

 ショックで後退ると、背中側で何かにぶつかる。人の脚のようなものにぶつかり、カーテンに当たったように後頭部にやんわりとした感触を感じさせる。


「君、その子のお友達だったんだ?あ〜あざ〜んねん。お友達もう死んじゃったぁ……。寂しいよね? でも安心して? すぐにお友達の所に送ってあげるよ」


 大輝が頭上を見上げると、久美がもたれる大輝を見下ろしていた。

幽霊の犠牲となっていた友人を悲しむ間もなく大輝に忍び寄る魔の手、大輝もついに逃げ場もない中幽霊に見つかってしまう。大輝は友人同様幽霊によって殺されてしまうのか? 和真や心陽は助けに来ないのか? 大輝の運命や如何に…… 

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