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げぇむすたぁと

空き家へと向かう準備を済ませ空き家前へと向かう心陽の前に突如現れた謎の女性、葉月はづき。彼女には匂いも体重と呼べるものもなく、瞬間移動など奇妙な力を持っていた。そんな彼女から心陽が過去に拾った月の装飾がなされたペンダントをお守り代わりにと受け取る。


空き家前では友人の救出を誓う少年、井上大輝いのうえだいきと出会い、3人で空き家の扉をくぐるも3人は不思議な力で空き家に閉じ込められてしまうのだった。

「クソ! 開かない!」

 突如玄関のドアが閉まり鍵がかかってしまい、3人は空き家から出られなくなってしまった。心陽はスマートフォンを開き、電波を確認する。案の定電波は繋がらず、救助を呼ぶ事も叶いそうになかった。


「だめだ、電波も繋がらない。これじゃ救助も呼べない……」


 完全にその外との繋がりを絶たれた3人は先へ進むしかなくなってしまった。

 日が沈む直前の夕陽が差し込む薄暗さが不気味さを漂わせる家の中を心陽は大輝を後ろに和真が最後尾から挟むように前後に気を配りながら前を進み、リビングの扉を開ける。


 リビングにはキッチンとテーブルに4人分の椅子、その奥にローテーブルをソファーで囲むように設置されており、壁側にテレビ、壁には時計があり時計の針は5時を指していた。


「なんだか……普通の家だな……不気味なのは変わらないけどさ」


 和真はそう言いながらリビングの探索を始める。キッチンの中へ入っていき冷蔵庫の中を調べる。冷蔵庫の中は空で何も見つからなかった。シンク周りにも特に何も無く、引き出しを引くと包丁やフライパンなど調理器具を複数発見したものの、特にこれと言って役に立ちそうなものは見つからなった。


「んん〜特に包丁とか護身用に持てねぇかな?とは言ってもしまうところもねぇか……持ち運べそうにもねぇな。じゃあ特に目ぼしいものも無しか……心陽そっちはどうだ?」


 心陽はというとテレビが置いてある壁側の棚の引き出しを調べていた。ここも特に何も無く同じく目ぼしいものを見つけられなかった。窓の方を見ると夕方の空が広がっており、玄関に比べて窓があるおかげか比較的部屋は明るく照らされている。

 窓に手を掛け開けようと試みるも窓は固く閉ざされ開かなかった。

 心陽は窓を割ることが出来ないか試しに窓に蹴りを入れる。しかし窓ガラスが割れることは無く体は弾かれ床に転がった衝撃でローテーブルの角に頭をぶつけてしまう。悶絶する心陽に和真は呆れた様子で歩み寄る。


「おいおいなんだよそのへなちょこキックはよぉ?そんなんじゃ普通の窓ガラスも割れねぇぜ。それにしてもお前……プッwダサ過ぎるぜw」


 と笑いを堪えきれずプッと笑う。恥ずかしくなって赤面しながら怒る心陽に先程まで恐怖心に表情が固まっていた大輝も少し気が抜けたのか和真に釣られて笑顔を見せた。


 恥ずかしい思いこそしたが緊張が解けたようで結果オーライ、なによりだ。

 しかしリビングはあらかた探したものの手掛かりになりそうなものは何一つとして見つからなかった。

 次は洗面所へと向かい洗面所でまた探索を続ける。洗面所にはコップや歯ブラシなどは置いてあるもののリビング同様何も無さそうであったが洗面所横の洗濯機の中に、メモのような紙が1枚入っていることに気付いた。


「何これ?洗濯機の中に紙が……」


 心陽は紙を手に取り確認する。紙にはメモ書きが残されていた。


 2013年10月14日


 気が付いたら見知らぬ家に閉じ込められた。

 なぜこの家に足を踏み入れたのかは自分でも分からない、でも何か引き寄せられる感覚に襲われたんだ。この家は普通じゃない、窓も玄関も開かないし時計もずっと同じ時間だ。

 それにこの家には誰かがいる。何とか脱出できないか家の中を探索してたら足音がした。

 俺はクローゼットやベッドの下を使って隠れてやり過ごしてきたが奴はあまり真剣に探していないのか俺が必死に逃げ惑うこの状況を楽しんでいるのか歩き回って徘徊するだけでクローゼットの中を開けたり探し回るような行動は取らない。だけどこの家も所詮2階建ての一軒家だ……隠れてやり過ごせても一度見つかれば恐らく逃げ場は無い。もしこれを見ている人間がいるのなら1つ忠告しておく、奴は人の形をしたバケモノだ、決して奴に見つからないように動くことだ。


 メモ書きの内容を読み終え、3人は顔を見合わせる。和真は既に顔色を悪くしていた。


「早くも相手が人である可能性が無くなってきたな……今置かれている状況も相まってヤバさがどんどん増してくるぜ。それにこの家って2階建てだよな? で一階にいて遭遇してないってことはコレ2階にいるってことだよな?」


 それは2階を探索していない自分達が今から2階に上がるという事は自ら相手の方へ出向くと言っているようなものだ。

 心陽本人も恐怖心で2階に上がる事を内心拒否反応を示していたが2人も同じのようだ。だが恐らくここでジッとしていても何も変わらない。3人には2階に上がるしか選択肢は無かった。


「2階に上がろう」


 心陽が怖気づく2人の肩を抱き寄せ緊張を和らげる。2人は少しずつ落ち着きを取り戻し、何とか平常心を取り戻した。


「ありがとよ。お前も怖いだろうに……それに言い出しっぺの俺がビビって動けねぇじゃ話にならねぇよな」


 礼を言う和真の肩を叩き大輝の頭をポンポンと叩く。そして3人はリビングを後にし2階に続く階段の前へ向かう。


「相手は人じゃない可能性が高い。ここから先は霊感のある俺が先導するよ。何かあれば必ず伝える。だからもし和真はすぐに大輝くんを連れて何処かへ隠れてくれるかな? もし相手霊感が無いと見えないとかだったら和真と大輝くんが先導するのは危険だからね」


 和真もそれに同意し、心陽が先導、少し間を話して和真と大輝くんが構える形で先へと進む。


「頼むぞ……何も出ないでくれよ」


 葉月から貰った月のペンダントと握りながら用心深く階段を登る。2階に着くと廊下が続いており、左右に道が分かれている。分かれた先には左右それぞれ部屋が1つずつあった。


 どちらに進もうか霊感を頼りに決めようとするが2階に上がっても一階にいる時と同様霊の気配は不思議と感じなかった。


 警戒心を解くこと無く和真達が追いついてくるのを待ち、右の部屋から探索を始める。

 恐る恐るドアを開けるとそこには…


「……!?」


 部屋は酷く血生臭く、床や壁には返り血のような血痕が散乱し目の前で血塗れの成人男性が壁にもたれていた。


 突然目の前に広がる凄惨な光景に心陽は胃の中から胃液が込み上げてくるのを感じた。

 必死で吐き気を抑え、周囲を注意深く観察する。


 左側手前には勉強机、その上には勉強用に参考書や教科書が並んでおり、1冊ノートが置いてある。奥には本棚とクローゼット、右側にはベッドがあり、ぬいぐるみなどが置かれており女子中高生の私室と呼べるであろう部屋であった。


 少し間をおいて和真達が部屋に入ってくるがその光景を目の当たりにすると言葉を失ってしまう。


 心陽は男性の安否を確認するが男性は完全に死んでしまっている。身体には幾つもの刺し傷のようなものが見受けられる。

 他にも何か見つからないか探しているとスーツの内側のポケットに何か紙が入っていることに気付いた。

 ポケットから紙を取り出すとそれはこの男性の家の中での手記であった。


 この家はまるで小さな迷宮だ。同じ間取りで幾つもの種類の部屋がある。まるでこの家は何パターンもあるかのようだ。

 リビングだって最初は何も無い普通のリビングだったがこの家を彷徨っている内にもう一度リビングに行くとそこには女性の死体があった。さらに逃げ惑った後再びリビングに行くと何も無かった。どの部屋も同じだ…何か仕掛けがあるのか部屋は入るたびその景観が変わる。幸い奴は部屋の移動先のコントロールが出来ないのか同じようにこの家を彷徨っていると考察できる。もしこれを読んで同じ状況にある者がいるならば絶対に諦めるな、必ず脱出に繋がる手掛かりがあるはずだ。奴を見つければとにかく部屋を移動するんだ。そうすれば奴を撒くことができるはずだ。


 手記を読み終えると、大輝くんが1冊のノートを持ってきた。


「これ、机の上にあったけど中の内容がよく分からなくて……手掛かりになるかも知れないからお兄ちゃんこれ読んでみて。」


 心陽はノートを受け取りその内容も確認する。

 何の変哲もない普通の勉強用のノート、表裏には何も書かれておらずノートを開きペラペラとめくる。そこで何か書かれているページを見つけた。

 そこにはこの部屋の主が書いたと思われる綺麗な筆跡で書かれたルール説明のようなものだった。


 私誰かと遊んだことないの。


 私遊び相手が欲しいの。だからげぇむをしよう?


 学校でやった事ある「鬼ごっこ」ってやつ。


 でもこのお家の中じゃ狭すぎてすぐ終わっちゃうから隠れている間は捕まえないでいてあげる。隠れるところ私に見られてたらダメだけどね? 他にも色々仕掛けがあるからせいぜい楽しんでね♪


 私もいっぱい遊びたいしすぐ終わっちゃうとつまらないから頑張って逃げてね? あと窓とか割れないようにできてるから出られると思わないでね?


「なんだよ……これ」


 ノートの中身を確認し終えた心陽達、ノートを閉じると裏面には中身を確認する前は書かれていなかった一文が血文字によって書かれていた。




 げぇむすたぁと




 その瞬間心陽は背後に霊の気配を感じ取る。身体中の全細胞が危険信号を訴えている。

 背筋が凍る様なおぞましい気配が背中を刺すようにぐさぐさと突き刺さる。

 心陽は咄嗟に振り返ると、そこには血に濡れた学生服を身に纏う女子中学生に見える人物が立っていた。その右手には刃先が赤黒く染まった包丁を持っている。


 ――奴だ。



ついに現れた失踪事件の犯人。

明らかな殺意を持った女子学生の幽霊と空き家中を駆け巡る命懸けの鬼ごっこの始まりの合図が今、彼女によって出されようとしている……。

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