表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/25

君は僕の記憶の中で 中編

 成瀬白那と白鳥蓮、2人が追い求める真実の追求、それは「神の存在」。その禁忌とも呼べる世界の真理へと足を踏み入れんとする研究の果てあるのは真実か? それとも虚構か? 果てを求めて研究を続ける2人。しかしその2人の背後には怪しげに忍び寄る影の姿があった……

 ミスカトニック大学に入学した白鳥蓮しらとりれんはもう1人の日本人、成瀬白那なるせしろなと出会う。成瀬は寮外れの小屋をある条件を元に大学から許可を得て借りていた。その条件とは科学を超えた非科学的現象、「魔術の証明」 であった。

 そして実際に魔術を身を持って体験した白鳥は成瀬の追い求める非科学的現象に関する知識、「裏の知識」に魅入られ成瀬の現在の研究テーマである「神の存在」について成瀬とともに研究を始めるのであった。


「ところでまずは何をするのかな?」


 散らかった部屋を掃除しながら白鳥は成瀬へ問う。勢いで手伝うとは言ったもののどうしても「神の存在証明」などと超常的で漠然としたテーマを持つとまず何から始めれば良いのか分からないのも無理もない。


「まずは図書館の制限図書保管庫に行くわ。そこである本の写しを取るの。一般人は入る事はできないから初めは私について居るだけで良いわ。次から入れるように職員には私が話をつけておくから」


 そう言って成瀬は図書館へ向かう準備を進め、白鳥も成瀬と共にオーン図書館へと向かった。


 図書館の前では金髪眼鏡の女子学生が二人を待っていた。


「先輩、お待ちしておりました。後ろにいるのは……先輩のストーカーと噂の……」


 成瀬はそうなの?と振り返るが白鳥は顔を背け黙り込む。成瀬は不思議そうな顔をするが「まぁいいわ」と言うと白鳥に女子学生を紹介した。


「彼女は2年生のレイン・ラットよ。オカルトが趣味で魔術の研究の際は情報提供に一役買ってくれたの」


「レイン・ラットです。あなたも先輩の偉大さに惹かれたの?フフフ……散々日陰者として扱われてきた我らがオカルト界の救世主となろうお方の魅力を共有せし同志が一人増えようとは」


 女子学生は眼鏡をくいっと上げるとフフフと怪しく笑っている。白鳥は思わず苦笑いしていると「気にしなくていいわ」と成瀬はレインを無視して図書館へと入っていく。


「ちょっと〜! 図書館アルバイトのツテでヘンリー先生に話し通しといたの私なんですからね!」


 慌ててレインが後を追う形で図書館へ入ることとなった。

 図書館では陽気な雰囲気の図書館長、ヘンリー・アーミテッジ博士が出迎えてくれる。


「やぁ。君達が制限図書保管庫に行きたいと言う学生かい? ナルセ君はこの前も制限図書保管庫を見に来ていたけど再び制限図書に用があるのかい? あまり探り過ぎも良くないと言いたいところだが余計なお世話かな? それと……」


 ヘンリー博士は白鳥へと目を向け怪しい者を見るかのような視線を送る。


「君は図書館利用者の中では見覚えはないが……さては新入生だね?」


「そうですが今回は制限図書を読みに来たのではなくあくまで付き添いで」


「そうか、申し訳無いがどの道新入生の君に閲覧の許可を出すつもりは無かったんだけどね。ナルセ君が連れているという事はさぞ有望なんだろう。今回は特別に入室のみ許可しよう」


 そう言うと何やらヘンリー博士は何やら書類を用意し成瀬はそれらに記入を済ませるとヘンリー博士は鍵を持って制限図書保管庫へと案内した。


 制限図書保管庫はカーペットが敷かれたゆったりとした閲覧室となっており本棚は隠され見えないようになっている。

 ソファに座って待っているとヘンリー博士が一冊の分厚い本を持ってそれを成瀬に手渡した。

 成瀬はそれを開くと持ってきた写し紙に本の内容を写し始めた。ヘンリー博士は監視に近い形で成瀬の写し作業を見ている。

 白鳥もその様子を少し距離の空いた場所からレインと共に見守っていた。


 それから数時間にわたって成瀬は嘔吐えづいたり酷い量の冷や汗をかきながら写し作業を続けた。作業が終わった頃には力無くフラフラと立ち上がり、疲労に満ちた表情で「帰ろうか」とだけ言って白鳥の肩を借りながら図書館を後にした。


「少し……疲れたわ……」


 研究室の椅子でぐったりとした様子の成瀬とそれを労う様にコーヒーを入れ始めるレイン。白鳥は作業中の成瀬の様子に疑問を抱いていた。


「かなり様子がおかしかった様だけど写し作業はそんなに苦労するものなのかい?」


「ええ、少しね。あなたは絶対に覗いちゃダメよ」


 成瀬は白鳥に写しを読まないように釘を刺すが暫くすると疲れたのか寝てしまった。

 それを確認するとレインが白鳥にこっそり耳打ちをする。


「写しの内容、気になりません? 先輩が寝てる今がチャンスじゃないですか?」


「成瀬は見るなって言ってたでしょう」


「知識の探究者たる者ここで冒険しなきゃでしょ! コレを逃すともうチャンスは訪れ無いかも知れませんよ!」


 白鳥はレインにそそのかされ納得してしまい、成瀬が寝ている隙に写しを取る。成瀬に気付かれることは無く、レインと共に写しのページを開く。写しのタイトルには――



「セラエノ断章」



 と書かれていた。

 白鳥とレインは息を呑み、ゆっくりとページをめくる――だがそこに記されていた冒涜的で名状し難い内容に白鳥は強烈な吐き気を催し、嘔吐えづく。レインも同様口元を覆って固まっている。


「なんだ……これは……」


「これが本当なら……先輩の言う神は……」


 白鳥は写しを閉じレインと目を合わせ、自分達が恐ろしく人知を超えた領域に足を踏み入れようとしている事を認識した。


 それから成瀬、白鳥、レインによる「神の存在」の研究が始まった。


 図書館から写しを得ては魔術や儀式に関する知識を身に付け、カルト教団に関する情報も集めてを繰り返す日々が続いた。

 研究を始めてから丸1年が経った頃のある日には実際に取材に赴くと計画したが大学からの制止が入ってしまう。しかし成瀬達は秘密裏に研究を進め、遂には神話生物を崇拝するカルト教団が潜む場所へと足を運んだ。

 信者になりすまし潜入する事により様々な情報を集め、生贄を使い崇拝する神を呼び出す狂気的な儀式にも参加した結果、等々成瀬達は実現したのだった。


 その日、成瀬達は教団から崇拝される神話生物、「旧支配者」とも呼ばれる「ツァトゥグァ」との接触に成功した――それは、成瀬達追い求めてきた《《神》》との接触、つまり「神の存在」が確かなものとなった瞬間であった。


「は……はは……ついに……」


 神話生物を目にし神秘的ながらも人の手に収まらない圧倒的な存在に、本能的恐怖心を駆り立て正気を失ってしまいそうな感覚に陥ってしまい白鳥は声を出せずにいたが、成瀬は歓喜からなのか狂気からなのか分からない笑みを浮かべていた。


 ――振り返ってみればあの時、私も彼女も「狂気」に陥っていたのかもしれない――


 ツァトゥグァの持つ知識量はまさに「神の領域」 と呼ぶには相応しく、人語を理解しており、生贄を捧げた対価として成瀬と白鳥はツァトゥグァによって魔術の知恵を授かった。


 生贄として捧げられた少女がツァトゥグァの手に握り潰され口の中に消えていった事などどうでも良かった。ただ新たに得られる知識、人を超えた力を得られる瞬間に知的探究心と狂気の織り混ざった不思議な感覚に身体の全てを乗っ取られていた。


 大学に戻ると即座に呼び出され、無断で数日間外出した事を咎められ数日間寮での謹慎処分を受けたが、直ぐに研究室に戻り、レポート資料を纏めた。


 謹慎中も懲りずに寮を抜け出し研究室に集まっては纏めた資料を形にしていく。

 その作業の中で白鳥は成瀬に対して特別な感情を持ち始めていた。


 ――それは恋心だった。


 共に裏の知識の研究を進めていく内、精神が擦り減る事も多々ある中、その心の安らぎは成瀬と過ごす時間となっていた。

 いつしか白鳥は成瀬と「研究したい」気持ちと共に成瀬に「逢いたい」、「一緒にいたい」という気持ちを持つようになった。


 白鳥本人はハッキリと気付く事無く曖昧な気持ちのまま共に時間を過ごし、更に数ヶ月が経ち6月を迎え――


 成瀬白那の卒業の日が訪れた。


 在学中の研究資料の発表は叶わなかったが「神の存在」を証明する準備は完成形へと近づいていた。

 白那は卒業後も研究を続けるつもりらしい。

 退寮の準備を終え、研究室を名残惜しそうに見渡す白那に白鳥は後ろから声をかける。


「もうこの研究室ここともお別れだ。成瀬」


「そうね。また研究に使える部屋を探さなきゃいけないのが少し残念だわ」


「成瀬、卒業までには出来なかったけど君なら「神の存在」を証明出来ると信じているよ。僕達は神との接触を果たして知恵まで貰ったんだから」


 白鳥は成瀬が使っていた机の上に置かれている資料をツァトゥグァから授かった魔術の知識で会得した「 物を浮かせる」魔術で浮かせ、それを成瀬が手に取った。

 資料に書かれるタイトルは研究最終地点、神の存在を証明する神格を招来する儀式――


「クトゥグアの招来」


 それが成瀬の最終地点だった。

 成瀬はその資料を手に取り研究室を出ていく。


 成瀬がそのまま研究室を去ろうとした時、不意に白鳥が成瀬を呼び止めた。

 成瀬が振り返ると白鳥は少し頬を赤く染めながら緊張した面持ちで立っている。


 白鳥は、自身の気持ちに正直になる事を心に決めていた。成瀬が遠くに行ってしまう前に正直な気持ちを伝えたい。

 白鳥は覚悟を決めたように言葉を発した。


「成瀬……僕は……君のことが好きだ。一目見た時から君に惹かれていた。君と出会って僕の人生は大きく変わったんだ。成瀬が卒業した後も僕は君と共に時間を過ごしたい。

 だから改めて僕の気持ちを正直に伝えたい。成瀬、僕は君のことが好きだ」


 白鳥の告白が意外だったのか驚いたような顔を見せた後、軽く困惑する様子も見せながら答えた。


「あなたがそんな事を言うなんて思いもしなかったわ……でも私もあなたと過ごす時間はなんだか心が安らぐようで不思議と落ち着いたの。あんな感覚初めてだからよく分からないのだけれど……おそらく私はあなたと同じ様にあなたに対して『好意』を持っていたのかもしれないわ」


 その言葉を聞き白鳥はハッと目を見開く。成瀬は優しく微笑み小指を差し出した。


「神の証明が終わったら、私もこの『恋心』というものの真実をあなたと追いかけてみたいわ。だからこれはその約束」


「ああ、僕もそれが真実であることを証明してみせるよ」


 白鳥はニッコリと笑い、小指を絡ませ指切りをした。成瀬の表情は普段の無気力な表情とは違い、一度も見せたことも無いような満面の笑みであった。


 成瀬が卒業しミスカトニック大学を出ていく姿を見送るその日の空は、雨予報の曇り空であったが、2人の顔はそんな空模様も吹き飛ばすような晴れ晴れとしていた。




 ――その日の夕方、予報通りの雨が降るアーカムの街で成瀬白那の遺体が発見された――


 冷たい雨が打ちつける中、心臓部分から血液が雨によって路面にながれていく様子を白鳥は警察によって貼られた規制線テープ越しにただ眺める事しか出来なかった。


 共に神の存在を追い続けたミスカトニック大学で出会った先輩で想い人であった成瀬白那なるせしろなは、卒業を迎えたその日、アーカムの街で遺体として見つかる。


 未だ現実を受け入れられないまま白鳥蓮しらとりれんは寮の自室へと戻り、ベッドに横たわっていた。


 警察によると心臓を銃弾で撃ち抜かれた跡があったらしい。白鳥は悲しみを通り越して泣くことすらできず、ただ虚空を見つめていた。


(成瀬が殺された?なぜだ?だれが?)


 まともに働かない脳を回転させ考え出す。

 そこで過去にヘンリー博士が制限図書保管庫で話していた事を思い出した。


 ――あまり深入りし過ぎると命の危険もあるがそれはカルト教団だけではない。世界の何処かに『知り過ぎる』事を良しとしない《《組織》》がいる。此処には読んだ者に危険が及ぶ可能性は勿論、世界すら滅ぼす可能性を持った危険な書物が保管されている。だからこそ厳重な管理なのだよ――


「『知り過ぎる』事を良しとしない組織……」


 頭の中をよぎる考えたくもない仮説、しかし白鳥の成瀬を想う心は彼の体をすぐに行動へと移した。

 白鳥は起き上がり研究室へと足を進めた。



「学内に成瀬を殺した組織の人間もしくはそれらと繋がっている人間がいる」



 研究室の小屋の扉を開け壁一面の成瀬が散々書き残した研究の跡を全て消し綺麗なホワイトボードの壁に囲まれた部屋を作りあげると今後の計画について書き綴る。


「まずは殺害現場の調査だ。痕跡が無いか探し出し手掛かりを見つける。それから学内の人間全ての情報を集め、学内の人間の個人情報全てを洗い出してやる。成瀬の遺体も回収しよう。それらと照らし合わせ彼女を殺した奴を見つけ出してやる」


 この日、成瀬の殺害を報いる為の白鳥の復讐が始まった。

ミニコーナー企画!


「あのコをどう思ってる? 直接聞いてみた!」


はいは〜い司会・進行を務めるよ、特異現象捜査部本部長 這月ニアだよ〜。


今回はね、登場人物であるあのコはあのコの事をどう思っているのか、お題に沿って直接聞いてみる企画だよ。


今回のゲストはこの子!


File2  「Cradle of infection」から沢渡紫苑だ。


本日は沢渡くんにお越し頂いたよ!

沢渡くん、本編では大変な立ち位置で苦労しているだろうけどよく頑張っていたと思うよ。

メタい話君の君の本編での出番はほぼ終わりだからシナリオ完走した感想会の意味も込めてのミニコーナーだから肩の力抜いて楽しんでいってね!


ボス、あまりそういう事言わないほうがいいんじゃないでしょうか? まぁ俺自身には関係無いんでどうなろうが知ったこっちゃないんですけど。

やるならさっさと始めてくださいよ。


そうだね。ではお題を提示しようかドドン!




「養成所の同期の人達をそれぞれどう思いますか?」




ほう、同期の連中か……俺はあまり進んで関わる事は無かったがそれでもいいなら答えてやる。


まず俺の同期は俺を含め全員で4人だ。1人ずつ話していこう。


まず和泉心陽、コイツはクソだ。よく分からねえ気色悪い力とスカした態度が気に食わねぇ。

アイツさえいなければ俺は首席だったんだ。

アイツとの対人戦、忘れもしねぇ……マズい、思い出したらイライラしてきた。次に行こう。


次は荒谷和真だな。コイツはとにかく暑苦しい。ほっとけって言ってもぜってぇほっとかねぇヤツで時偶うぜぇって思うこともある。でも家族の話になれば気が合う部分もあって一緒にいて不思議と悪い気はしねぇ。


最後に安b……ボス、コイツの名前……今出して大丈夫でしょうか……?


う〜ん……ちょっと今出すのはマズイかもね。

やめとこっか。


それじゃあ全員分話し終えたし今日はこの辺りで切り上げとこっか?


そうですね。俺はもうシナリオの出番終わって疲れました。早く休暇が欲しいところです。


厳密にはまだちょっとだけ残ってるんだけども……そうだね。じゃあ今日はここまで!

ではまた次回!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ