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3人が消えた日

 オカルトを信じない少年、和泉心陽いずみしんようは同じ高校の同級生で友人である荒谷和真あらたにかずまと共に謎の失踪事件の真相を追ってとある空き家の捜索を計画する。

 生まれつき霊感の強い心陽は空き家から漂う不気味な雰囲気と窓から覗く"何か"と目が合ってしまった事による恐怖心に一度は身を引こうと和真を説得するも和真の勇敢な姿に感化され空き家への突入を決意する。

和真と空き家の中へ入る事を決心した心陽は一度家に帰って約束の時間まで準備を整える事にした。


 ライトの役割と連絡手段を兼ねてスマートフォンのバッテリーの充電を済ませ、漫画の読み過ぎかも知れないがこういうミステリーモノのには大抵ライターとか持ってるなど考えながら一応ライターも持っていくことにした。そしてもう一つ……


 心陽は自分の部屋の棚の小さな引き出しを開け、中に入っている月の装飾がなされたペンダントを取り出した。


 去年の夏休み、和真やクラスの友達と山奥の神社のさらに奥にある廃ダムに繋がるトンネルが心霊スポットとして有名でそこに行った時に拾った物だ。

 あの時は皆で雰囲気を楽しんでいたのだがその中でも心陽だけは違った。

 あの時、確かに居たのだ。和装のような服装に身を包んだ女性の姿が……

 目が合った瞬間、恐怖で声も出せずにいた心陽は不意にそのペンダントを差し出した。 それを見た女性は何かに気付いたのか意外そうな顔を見せた後、妖しく微笑みトンネルの奥へと消えていった。

 和真達からは何もいなかったと言われたがそれは心陽が霊感を自覚した瞬間でもあった。


 その一件以降、ペンダントは持ち帰り自分の部屋の引き出しに御守り代わりに置いていた。もしかすれば今回は幽霊絡みの事象であれば何か助けになるかも知れないという淡い期待も込めて持っていくことにした。

 あまり手荷物が多過ぎても邪魔になるだけだろうと手持ちはこの辺りにして約束の時間が近くなってきたので家を出た。


 空き家までの行き道の住宅街を歩いていると何処からか視線を感じる。誰かが上から見ている。しかしおかしい……住宅街で上からだなんて……近くにはマンションや大きな建物も無い。なのに上から見下ろそうものなら電柱や電線の上からでしか方法が無い。

 その答えに行き着いた瞬間背筋が凍りついた。霊感が反応している……それは近くに霊的な何かが存在していることを表していた。そして違和感はもう一つ、夕方とはいえ住宅街の真ん中、人1人居ない事は偶にはあるだろうが今まさにその状態である。しかしそれは霊的な存在を感知している今、偶然とは捉えにくかった。


 心陽は恐怖心を隠し平然を装って上を見上げた。そこには黒い装束で黒の長髪に赤い目の女性が電線の上に立っていた。

 女性は不敵な笑みを浮かべたまま心陽を見下ろしている。


 電線の上に人が立っているというあり得ない光景に思わず息を呑む。

 すると女性は電線から飛び降りる。体重と呼べるものがないのかまるで羽毛のようにフワッとゆっくり地面に降り着地した。


 その後ゆっくり心陽の前に歩み寄り妖しく微笑みながら顔を近づける。すぐ近くまで顔を近づけられ内心動揺こそしているがそれを必死に押し殺す。

 そこで1つ気付いたことがあった。顔が近い事もあって髪の匂いなどがするかと思えば無臭である事に気が付いた。普通ならばシャンプーの匂いの1つでも香っていてもおかしくは無い程の距離感だが彼女からはそれが無かった。


「いい匂いすると思った?何も匂わなくてゴメンねぇ?」


 まるで心を読まれているかの女性の一言に心陽は動揺を隠せず思わず赤面し顔を隠す。


「い、いや……違っ」


 お手本のような照れと慌てようを見せる心陽を女性はアハハと初々しいものを見るように微笑ましく笑った後


「からかってゴメンね? 臆病なキミが随分と表に出なくなったからイジワルしちゃった♪ ところでキミ、そのペンダントまだ持ってたんだ」


 と女性はペンダントを指差した。そこで心陽はこの女性が去年トンネルで出会った幽霊であることを思い出した。あの時は暗くて分かりにくかったが今になって気づいた。


「その……これ貴方のですよね。もし返してとかだったら返します。あの時もホントは直ぐに渡すつもりだったんだけど消えちゃったから……」


 心陽がペンダントを女性に返そうとすると女性はそれを制止した。


「いいんだよ、ソレはキミにあげる。その代わり大事にしてよね?」


 とまたも妖しく微笑む女性はまだ少しからかう様にあざとく振る舞う。


 心陽は疑い深く女性を目で追いながら時間を和真との約束を思い出し先を急ごうとする。そうだ、あまり時間を取られている暇は無い。


「用がないならこれで……友人と待ち合わせがあるんです」


 と心陽は「これで」と女性の横を過ぎ先を急ごうとすると「待って!」と女性は手を叩く、その刹那、瞬間移動した様にパッと心陽の目の前に現れた。急に現れる女性にうわぁ! っと腰を抜かす。その様子を見てまたアハハと笑う。


「キミ本当に臆病だね! 面白いくらい!」


「からかいに来たんですか?」


 心陽は女性を睨む。

 女性は大丈夫大丈夫と手をヒラヒラさせながら言う。


「外の時間は止まってるからさ、ここにいくらいても遅刻とかはしないからさ? 結界ってやつを張ってるんだよね。だってこの状況、人っ子1人通らないのっておかしくない?  いやあるかもだけど…疑うなら試しに時計見てみなよ?」


 そう言われスマートフォンを開き時間を確認する。女性の言う通り時計は1分も進んでいなかった。ちなみにスマートフォン自体は動作するが結界というものが何かしら影響を与えているのか電波は通っていなかった。


「っでキミ、待ち合わせってあの空き家に行くの?」


 女性の声のトーンは唐突に重みを帯びて顔は先程までからかってきていた妖しい笑顔ではなく真顔になって心陽に問いかけてきた。


「そ、そうですけど……あの家の事何か知ってるんですか?」


 思わず心陽は食い付いた。この女性が何か知っているなら1つでも多く聞き出したい。

 女性は少し考え込む仕草を見せ、その後「まぁいいか」という顔で空き家に関する情報を心陽に教えた。


「あの家ねぇ……最近霊が住み着き始めて以降、かなりのペースで人を攫ってるんだよね。キミ達からすれば行方不明事件? その事件の元凶はあそこで間違いないよ。」


 心陽はやはりか……という顔を見せると女性の方も「気づいてたんだね」と心陽の霊感を認めた。


「それであの家に行くならかなり危ないけど本当に行くの? 下手したらキミ達死ぬよ?」


 女性は忠告するが心陽はそれでも行くという姿勢を崩さなかった。心陽の臆病ながらそれでも向かう勇気を讃え、女性は最後に1つアドバイスをした。


「どうしてもダメになりそうな時はそのペンダントを握り締めて私の名前を叫ぶといい。御守りくらいの仕事はしてくれるかもよ?」


 そう言うと心陽に月の装飾部位を握らせた。

 女性の肌は冷たく体温というものを感じられなかったが温かく見守る心は感じられた。


「わかりました。でも貴方の名前まだ教えてもらってないんですけど……」


 女性はあちゃーと額に手を当てる。

 女性は心陽の額に人差し指を当てて優しく微笑えみ、すっかり教えるのを忘れてた名前を心陽に教えた。


「私の事は葉月はづきって呼んでね?それじゃ、せいぜい死なない様に頑張れ、少年」


 そういうと葉月という幽霊?は心陽に背を向け歩き出す。その瞬間夕陽が葉月に重なり眩しさに一瞬目を逸らすと次見た時にはもう葉月の姿は無かった。


 辺りを見渡すと通行人が数人通っている何の変哲もない住宅街の通りだった。

 心陽はペンダントを握り締め、空き家へと走り出す。



 17:00



 心陽が空き家の前の通りに到着すると、丁度来たと言わんばかりに向かいから和真が歩いて来た。

 空き家の前には小学生の男の子が1人ポツンと立っていた。不思議に思い、心陽は男の子に声を掛ける。


「君、こんな所でどうしたんだい?このお家の前は危ないよ?」


 男の子は俯きながらオドオドした様子で言葉を振り絞るように言った。


「ぼ、僕の友達が行方不明になって…この家の前で居なくなっちゃったって学校やニュースで言われてて……助けに行きたくて……でも一人じゃ怖くって」


 男の子の話に心陽と和真は言葉が出なかった。小さい子供が勇気を振り絞って危険な場所に行こうとするとは……心陽と和真はより一層覚悟が決まり男の子の肩に手を置く。


「君のお友達はお兄ちゃん達が絶対に助けてあげる。だからここは危ない、今日はお家に帰ろうな?」


 和真が優しく声を掛けるが男の子は首を横に振った。


「だ、ダメだよ、ゆうた君は僕が助けなきゃ。僕絶対役に立つから! お兄ちゃん達のお手伝いさせて!ゆうた君は僕の大切な友達なんだよ!」


 拳を強く握り涙目ながら真剣な眼差しで語る男の子に和真は心を打たれた様に真剣な顔で男の子を見つめ返す。男の子は視線を逸らすことは無い。すると和真はニカッと笑い男の子の頭を撫でた。


「分かった。君の大切な友達なんだよな? だったら一緒に探そう。必ず見つけて助け出すんだ」


 心陽はそんなにあっさり納得していいのかと和真に考え直すよう説得するが和真は首を横に振った。


「確かに小学生に命に関わる事はやらせるべきじゃないだろう。でも一人の男が友達の為に命張ってやるってくらい覚悟決めてきたんだろ?なら俺は口を出さねぇ。それに心陽がこの子の立場だったらどうしてた?俺なら迷わずここに来てた」


 自分が男の子の立場だったら……和真が居なくなったとすればこの男の子と同じように空き家に飛び込んでいたかも知れない……そう考えると心陽は男の子を止める事は出来なかった。


 和真は男の子の名前を聞くと男の子の名前は井上大輝いのうえだいきだと言う。

 改めて空き家の前に三人で並び、和真が確認を取る。


「心陽、大輝くん、準備はいいな? 絶対に助けるぞ!」


 3人は覚悟を胸に空き家へと歩を進める。

 玄関前の入り口を開け、一歩踏み入れた瞬間、突如周りの物音が一瞬で消えた。

 振り返れば道路を走っていた車も通行人も居ない。環境音が完全に無くなったその空間は不気味さを極めていた。

 直ぐに和真と大輝くんもその異変に気付き、身構え異常事態を察する。


「おい……さっきまで後ろ、人も車も居たよな?これ……本当にマズいんじゃねぇか?」


 あくまで心霊や怪奇現象を迷信だと信じて疑わなかった和真も実際に体験してしまっては不安になってしまう。それは大輝くんも同様、心陽の服の裾を掴んでいた。


「この感覚……葉月さんの結界に入った時と同じだ……だとするとこの家も結界の一種なのか?なら行方不明になるのも納得できる」


 心陽はこの感覚を知っている。それと同時に葉月から聞いていた通り行方不明事件がここで起こっている事も確信に至っていた。


「今更後戻りは出来ない、行こう。」


 心陽が先導し玄関のドアに手を掛ける。すると、ガチャリっと音を立てドアが開いた。

 被害者達を引き込んでいるだけあって鍵は掛かっていなかった。


 恐る恐る3人で玄関へ入り玄関を確認する。一見何の変哲もない普通の玄関だが下を見るとローファーだろうか、片方だけ転がっている。右側の棚には前に住んでいた家族の物だろうか、写真が飾られていた。写真には男性と女性、そして女子生徒の学生服を来た女の子が1人、しかし女の子の顔だけは穴が空いていて確認できなかった。


 更に探索を続ける為玄関を上がるとその瞬間、後ろのドアがガチャリと音を立てる。

 振り返るとドアが閉まっており、内側の鍵が閉まっている。

 和真が鍵を開けようとするもビクともしない。


「なんだこれ! 全然動かねぇ!」


 必死になっても開かない鍵に大輝くんが顔面蒼白になって呟いた


「僕たち…閉じ込められたんじゃ…」

心陽の目の前に現れた「葉月」を名乗る謎の女性、奇妙な力を持つ彼女の正体とは一体……?


友人の救出を誓う小学生、井上大輝いのうえだいきと共に空き家に閉じ込められた心陽達は意を決して空き家の奥へと進んでいく……

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