突破口
大量の生者の魂を使い、死者の魂の完全なる復元を目論む男の計画を阻止する為、研究施設の地下にて渋谷の街を覆う光の障壁を発生させる装置、「箱」の破壊をする為、杏奈と加奈子は男を追ってきた特異現象捜査部特殊部隊「GREETER」のHK-Houndこと沢渡紫苑との共闘を決意する。
物語は少しずつ終盤へと向かっていき、荒谷杏奈、志那内加奈子、沢渡紫苑の3人は黒幕の男と対峙し障壁の破壊、渋谷からの生存を懸けた戦いが今始まろうとしていた。
地下室の広間でゾンビに囲まれた3人、箱を持つ男との退路なき戦い。
沢渡によって銃が配られ銃を握り構える3人はお互い背中を預け合いながら目の前に照準を合わせる。
暫くの沈黙の後、男の上げた手が下ろされる。
「やれ」
男の号令によって一斉にゾンビが3人に向かって走り出す。
「「「うおおおおお!!!」」」
3人は雄叫びを上げて一斉に引き金を引き銃を乱射する。弾丸はゾンビの大群を貫き次々とゾンビが倒れていく。弾切れになると各々近接武器に替え前方へ走り出す。
沢渡は拳銃とサバイバルナイフで残りのゾンビ達を掃討していき、杏奈も負けじと警棒を振り回し倒していく。
加奈子はというと……
「オラオラオラァ!!」
金属バットをブンブンと振り回し蹂躙していた。
沢渡と杏奈は背中合わせになり、武器を構えながら言葉を交わす
「案外やるじゃないか、見直したぜ」
「アンタもね。でもコイツらの次はアンタだから」
その言葉に「は?」と杏奈の方を振り返る沢渡は驚いた顔を見せ、杏奈も振り返り沢渡を睨む。
「アンタがユッコを殺した事……忘れてないから。良心でとどめを刺したつもりかも知れないけどそれでもアタシはアンタを許せない」
「やはりそうか……お前には到底出来るとは思えなかったんでな。余計なお世話だったなら悪かった。だがそれも全部目の前を片付けてからだ。わかったらさっさとやるぞ」
沢渡はティンダロスの猟犬を呼び寄せさらに勢いを増す。
しかしその勢いもすぐに失速してしまう。
突如杏奈と沢渡の体がピタリと止まり動かなくなる。突然の出来事に理解が追いつかない2人。
「ぐっ……何だ!?」
「体が……動かない……!?」
その後何かに締め上げられる感覚に襲われ次第にその力も強くなっていく。
触れられている訳でもなく体にかかる圧力に為す術もないままいると男がこちらを見ながら何かを掴むように拳をこちらに向けている。
「クソっこれは魔術か!? だとすればこれは……恐らくこれは鷲掴みか」
沢渡が状況を分析する。恐らく男が魔術を使っているのだろうと推測する。
「鷲掴みって何なの?」
「相手を拘束する魔術だ。かけられた者は何かに巻き付かれる様な感覚に襲われ体を拘束される。このままではまずいぞ」
「何か抜け出す方法とか無いの?」
「あるにはある。それはつまり……ひたすらに気合で何とかする! それだけだ!」
脱出方法について沢渡に聞く杏奈に対し沢渡が行った行動とは、目を閉じひたすらに何か念じるような仕草を見せる。
理解が追いつかない杏奈、それを余所に念じるかと思えば目を見開き唸り声を上げながら体をよじらせる沢渡。
そうこうしている内にゾンビ達がここぞとばかりに襲いかかる。
身動きが取れない今、絶体絶命のピンチであった。男も勝利を確信したかニヤリと口角を上げる。
最後まで諦めず抵抗する沢渡と杏奈だがもはや振りほどく事は困難でもうダメかと思った瞬間――
「どおぉぉりゃぁぁ!」
ゾンビ達の隙間から飛び出した加奈子が男に向かってバットを振り下ろす。
男は完全に意表を突かれたか反応が遅れる。
振り下ろしたバットは男の頭部をカチ割る勢いで殴打する。その勢いで男は体勢を崩し、沢渡と杏奈の拘束は解かれ、ゾンビ達からの強襲を逃れた。
「あれ? 当たった?」
加奈子はバットの先を凝視しながらそう呟く。そうだ、本来不可視の障壁で物理攻撃は効かない筈であった。だが今確かにその手に持っていたバットは男の頭部を捉えていた。
男は血を流す頭部を押さえながら呻いている。
目の前の光景に杏奈はあることに気づいた。
「ねぇ! ちょっと!」
杏奈は沢渡を呼び寄せ、耳打ちしてある事を伝えた。それを聞いた沢渡は「本当か?」と疑いの視線を送るが杏奈は「信じて」と頷く。
「ちなみにそれは確証はあるのか?」
「ない。全部アタシの勘。でもアタシの勘はよく当たるから信じて」
沢渡はハッと笑うと「分かった信じてやる」と一言残し回り込むようにして移動を始める。
杏奈は男に向かってまっすぐに走り出した。
男は呻いた後、自分の手に持っているはずの物が無いことに気づく。それは揺り籠を展開する「箱」であった。
男は大慌てで周りを見渡し床に転がっている「箱」を見つけ拾いに行く。
しかし先に杏奈が快足を飛ばし「箱」拾い上げる。
「キサマらぁ!!」
男は怒り狂い美しい顔立ちが台無しになるほどの怒りに満ちた表情へと変わる。顔のヒビが大きく広がり、顔半分を埋める程になると、ゾンビ達の動きも活発になり、他の研究室に保管されていたゾンビが再び広間へと押し寄せてくる。
「えぇ!? まだ増えるの!?」
3人とも流石に驚きを隠せなかったがそれだけでは終わらなかった。沢渡は端から銃を構えていたが通信機に通信が入り銃を下げる。そして本部通信から衝撃の事実が告げられた。
「こちら本部通信、やっと繋がりましたね。ですが今はそれどころではありません。緊急通達、今現在、渋谷中のゾンビが光の柱に向かって一斉に移動を始めました。HK-Hound、その場所は危険です、直ちに移動を開始して下さい」
「こちらHK-Hound、只今メインターゲットと交戦中、サブターゲットも目の前だ。施設内に出口らしい場所も見当たらない、脱出は極めて困難だ。やむを得ん、脱出手段として猟犬の時空移動を使う。それまではターゲットを優先する」
「ダメです、《《今すぐ》》に移動を開始して下さい。組織としても捜査員を失うのは惜しいのです。ましてや貴方は特殊部隊、他の捜査員とは訳が違うのですよ? 本部からの指示です。従ってください」
沢渡は目標を目の前にしながら撤退命令に舌打ちをして撤退の準備をしていると、杏奈達を見てふと思い留まる。
(俺がここで逃げたとしてコイツらは……?)
目の前では杏奈と加奈子がゾンビ達と交戦している。男がゾンビ達を操り「箱」を奪い返そうとするのを必死で逃げ回り守っている。
痺れを切らした男は再び「鷲掴み」の呪文を唱えようとしている。2人に手をかざし拳を握ると、2人の動きが止まる。
「ぐ……動けない……」
「何度やろうと私から逃げるなど初めから不可能だよ。『箱』は返してもらおうか」
2人の周りをゾンビ達が囲み男がゆっくりと近づく。そしていとも容易く「箱」を奪われてしまう。
「全く……しぶとい子達だよ。だがそれももうここまでだ、やれ」
拘束されたままの杏奈と加奈子にゾンビ達が群がる。今度こそ終わってしまうかという所であったがまだ2人は諦めていなかった。
「まだ……終わってない! うおぉぉぉぉ!!」
杏奈は雄叫びと共に体を捩ったかと思えば力ずくで拘束を引き剥がし、男に向かって走り出し、「箱」を持つ腕を掴む。
「掴んだ!」
「コイツ!?」
「思った通りだ! 『箱』のバリアは外からの攻撃を通さないけど逆に中からの攻撃も通さない。つまりアンタが呪文を使っている間はバリアを展開出来ない。だから最初に鷲掴みを使った時にカナちゃんの攻撃が通った。つまり私たちに鷲掴みを使った今、引き剥がしてすぐならアンタに触れる事ができる!」
「クソ! 勘のいいガキめ!」
男は杏奈から腕を引き剥がそう抵抗するがその弾みで「箱」を手放してしまい、勢いで箱が宙に舞う。
男はそれを捕ろうと落下点で構えるが杏奈は持ち前の身体能力で男の頭上に高く飛び、空中でキャッチした。
男は着地した杏奈の隙を狙って杏奈を掴みにかかるが杏奈はすかさず「箱」を遠くへ投げてしまった。
「血迷ったか! 取りに行け!」
男はゾンビに指示を出しゾンビが一斉に杏奈の投げた「箱」を追う。その投げた先にはとある人物が待ち構えていた。
「後は任せたよ」
「合点」
箱が飛んで行く先、そこには金属バットを持った加奈子が立っていた。
加奈子はまるでバッターボックスに立っているかのように遠くをバットで指し、予告ホームランを告げると、バットを構える。
「Hey come on baby♪」
「やめろぉぉぉ!!」
加奈子の体全体を使ったフルスイングは「箱」を捉え、粉砕した。男の叫びを掻き消す勢いで甲高い金属音とガラスが割れるような音が広間中に響いた。「箱」だったものはバラバラの破片となり、やがて青白い光を失い黒くなっていった。
◇ ◆ ◇ ◆
渋谷の街では突如としてゾンビの大移動が始まったかと思えば暫くすると光の柱が消え、それと同時に街を覆う障壁が消滅した。
「壁が消えた……?」
現場に派遣されている自衛隊員がその事に気づくとすぐさま通信部に現場情報の連絡が入る。
「現場より光の柱の消失を確認、渋谷への突入が可能です」
それを受け取った特異現象捜査部通信部からニアへと情報が入る。珍しく真剣な面持ちで現場での方針を決定する。
「現地の自衛隊及び警察は引き続き渋谷周辺の包囲、ゾンビが外へ漏れ出さないように防衛しろ。渋谷内部には捜査部より待機中の彼とその補助として新橋を予定通り現場の掃討に送る。幸い一箇所に集まってくれてるみたいだしね。こちらとしては好都合だよ」
「自衛隊や国政機関からの反発が予想されますがどう対応しましょうか」
「すべての決定権はこちらにあるとでも言って黙らせろ。既に国会でそのように言ってある。無駄に死人出して欲しくないしね?」
「わかりました。予定通り増援及び現場の掃討に捜査員を派遣という方向で現場に通達します」
「よろしくー」
通信が終わるとニアは少し考え込んだ後、ふと微笑んだ。
「おかしいな……沢渡くんがやったような感じはしなかったんだけどなぁ……まぁいいか。さて、これからは君の番だ。お手並み拝見だよ、首席君」
特異現象捜査部によって現場へ指示が回され、案の定現場からの反発を買ったが権力の暴力で黙らせ、現場で待機している捜査員に通信を入れる。
「こちら本部通信、これより渋谷掃討フェーズに移行します。メインターゲットは引き続きHK-Houndが担当、ですがまだミッションが未達成である為、万が一遭遇した場合は、可能であればHK-Houndと協力しメインターゲットの処分を目指して下さい。現時刻より現場責任はHK-Houndから貴方へ移行します。自衛隊、警察共に現場の全ての権限は貴方に移りますので必要であれば本部通信を通じて要請が可能です」
捜査員は一言「了解」と返すとゆっくりと玉川通りの渋谷との境界部分から渋谷に向けて歩き始める。入り口前では待機している自衛隊が彼の左胸に付いた「SPID」の紋章を目に入れるなり道を開け敬礼をする。
「自衛隊員及び渋谷周辺に待機している部隊は本部通信からの指示通り引き続き境界線の防衛に徹しろ、決して一匹足りとも渋谷の外へ出すな」
そう指示を出すと男は静かに渋谷の街へと入っていき、左眼は薄暗く燃えるような光を放つ深紅の瞳に色を変える。
捜査員は一言ぽつりと呟くような通信を入れる。
「特異現象捜査部 和泉心陽、出る」
ミニコーナー企画!
第3回! 「気になる!? あの子のプロフィール!」
どうもー! 皆大好き! 幽世のアイドル葉月お姉さんだよー!
今回の企画はね! この世界の登場人物に関する情報を公開していっちゃうよ!
さぁ今回のゲストはコイツだ!!
ども、File2 「Cradle of infection」で主人公やらせてもらってまーす、荒谷杏奈でーす。
ついに来たよ! 絶賛進行中シナリオからミニコーナーに登場! 主人公の荒谷杏奈ちゃんだよ!
あの、初めまして……だよね? アンタって一体誰なの?
お姉さんは皆大好き幽世のアイドル葉月お姉さんだよ?
かく……何? ちょっとよく分かんない。
まぁいいや、アタシあんまり面倒な事はキライなタイプだから手短に済ませたいんだけど。
そんな連れないこといわないで〜? これミニコーナーだからさ? あんま時間取らないから安心してよ。ちゃちゃっと自己紹介して終わり! ってやつだから!
あっそ。そういう事ならさっさとやって終わらせよっか。じゃあアタシのプロフィールはこれ。
デデンッ!!
名前 荒谷杏奈 誕生日 10月24日
年齢 16歳 血液型 B型
身長 170cm 体重 51kg
好きな食べ物 辛いもの
嫌いな食べ物 納豆
親友 玉井優子 苦手な人 陰気な奴
異能力 超直感?
好きなこと 猫と遊ぶ
嫌いなこと 嫌いな奴と一緒にいる
ここだけの話
昔からそこそこのお兄ちゃんっ子。思春期を迎えたタイミングで兄が実家を離れ、何年も顔を見ていない事もあって今では兄に対する執着は薄れている模様。
だが毎年、年末年始などは兄が実家に顔を出すのではないかと少し期待をしていたりなど完全な兄離れとはいっていない。
ちょ、ちょっと! こんなの誰にも話したこと無いのに何で知ってんの!? それに公開しないで!
あらあら〜そんな可愛い一面もあるんだぁ? これは良い情報貰ったねぇ? また今度彼にも教えてあげようかな?
そんなの教えんなし! ……ってあれ? アンタお兄の事知ってんの? 何処で知り合ったの? 今何処にいるの?
ははぁ〜兄離れ出来てないってこういう事か〜♪ 可愛いじゃ〜ん君〜♪
そんな事いいからさっさと教えろ! 吐け!
うわぁ! 引っ張らないで! このままではマズイよミニコーナー締められないから!
ええいもうゴリ押すしかない! 今日はここまで! また次回!




