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加奈子との出会い

 友人であるユッコを失い、絶望の淵に立たされた杏奈。しかしそれでも渋谷脱出を目指す足は止められなかった。たとえ独りであっても戦う少女は新たな出会いの運命を辿っていく……

 11月1日 10:00 東京都 国会議事堂



 依然として渋谷を覆うドーム状の謎の障壁は内外共に干渉を遮断され、脱出も侵入も叶わない状況。

 非常事態と呼ぶには容易く、政府は当然この事態の対応に追われていた。


 民間の救助を最優先に自衛隊や警察の特殊部隊の出動も余儀なくされ、障壁の破壊にも着手するも未だに突破の糸口を掴めずにいた。

 当然、報道陣も黙っておらず非科学的で大規模な災害とも呼べよう事件は全国に報道され、人々にオカルト的恐怖心を振りまく事態となった。


「障壁内突入の糸口はまだ掴めんのか? こうしている間にも犠牲者は増え続けている。この事件の指揮権をキミ達に一任しているとはいえ早急な対応を願いたいのだが本部長のキミがこの体たらくではキミの処遇についても考えなければならんよ」


 警視庁本部では特異現象捜査部長である這月このつきニアが進捗状況について問い詰められていた。

 本部では各組織の重役が揃い、警察や自衛隊は勿論、官僚などもその場に揃っていた。


 神妙な面持ちでニアに注目する面々であるがニアはそれらを気にも留めない様子で欠伸あくびをしている。

 それを見た官僚達は我慢ならない様子でニアに怒号を浴びせるが警視総監のによってその場は一度鎮められ、ニアに発言を促した。

 ニアは「はいはい」と頭をぽりぽりと掻いた後、発言を始める。


「まだ捜査開始から1日も経ってないじゃん? 進捗状況に関しては当然進んでるとは言えないよね。ただ一つ、この件に関して我々は人為的に起こされた事件と見ているよ。 今捜査員を現地に送ってるから気長に待ってればウチの子が何とかしてくれるよ多分」


 あまりにも適当な回答に場が騒然とする。

 大勢の命が懸かった一大事の責任者ともあろう者の緊張感の無さに官僚達の頭に上った血は沸騰する勢いでニアに対する罵詈雑言が飛び交った。


「貴様、この事件の責任者としての自覚はあるのだろうな? この瞬間にも犠牲者は増え続けている。それを分かっていて尚その姿勢を貫くか? 場合によっては残りの生涯をすべて監獄で過ごしてもらうことにもなるが」


「だったらキミ達『国』がこの件、もう一度受け持つかい? 銃もミサイルも効かなくて障壁も破れずボクに泣きついてきたのはキミ達だったはずなんだけどなぁ?」


 ニアの発言に自衛隊の将官の眉間に皺が寄る。ニアはさらに嘲笑うかのように話を続ける。


「ボク達特異現象捜査部は普段は『国』の機関の一つとして表向き活動こそしているが捜査を一任すればそれらの関係性は解除され自衛隊から警察まで全ての権限は他国への武力行使を除き全てコチラが持つという契約のはずだ。ボク達はキミ達『国家の犬』を《《演じている》》だけであって国家の犬《《ではない》》のだよ」


「そして今、この事件はボク達特異現象捜査部が一任している。つまり今現状キミ達自衛隊や警察を動かす権利は今ボクが持っている。ボクが『大人しくしていろ』と言えばそれに従わなければならない」


 ニアは両手を広げて大々的に宣言する。

 管理達は納得しない様子で騒ぎ散らすが警視総監と将官は苦虫を噛み潰すように目を閉じてその言葉を受け止めていた。


「既に犯人の尻尾は掴んでいる。心配せずともキミ達にも必ず出番は回ってくるさ。その時まで気長に待っていてくれたまえよ」


 そう言うとくるりと180度回転しドアを開けて部屋を出ていってしまった。去り際に「帰ってアイス食〜べよ♪」という気の抜けた声だけ微かに残してニアは去ってしまった。


 国会議事堂を出ると新橋が車で待機していた。ニアは軽い足取りで後部座席に乗り込むと後部座席で横になる。

 新橋は「はは……」と苦笑いを浮かべ車を走らせた。


「ボス、早かったですね」


「面倒くさかったんだも〜ん。そもそも現場なんかいつも任せっきりなのにボクが分かるわけないじゃん」


 ニアは天井を見つめながら頬を膨らませている。

 同じ東京であるにも関わらず渋谷の街とは対照的に人通りも多く賑わいを見せている普段と変わらない千代田の街はむしろ平和を感じさせる程にのどかであった。

 しかし渋谷の方角へ視線を移せばドーム状の光の壁が渋谷の街を覆っているのがその場からでも確認でき、いとも容易く非日常を体現していた。


(あいつら……しっかりやれるんだろうな……)


 新橋は何処か心配の面持ちで車を運転しながら障壁を見つめていた。



 ◇ ◆ ◇ ◆



 11月1日 11:00 渋谷


 都会を感じさせる大きなビル群とそれを否定するように嘘のような静けさがまるで世界の終わりを表しているような渋谷の街。ゾンビ達が路上を彷徨い、時間が経つにつれて変異しているのか異形の者になるのもいれば人間離れした力を身につけ壁を登り建物内に侵入しているゾンビまでいた。もはや現在いま、この街に安全な場所など存在しなかった。


 そんな渋谷の街をフラフラと鉄パイプを片手に歩く少女、荒谷杏奈がいた。数多のゾンビ達を殴ってきたのか鉄パイプはボコボコと凹み、鉄パイプの先には真っ赤な血の跡が付着していた。


「いかなきゃ」


 杏奈はただその一言だけ呟きゾンビと遭遇しては雄叫びをあげ頭部を潰していく。

 だがゾンビ達も人ならざるものへと変貌を遂げていき、鉄パイプでは太刀打ちできなくなってしまう。


 やがて金属疲労を起こしたのか殴った衝撃で鉄パイプが折れてしまった。

 ゾンビは怯む様子も無く杏奈に襲いかかる。


「くっ……!?」


 杏奈は間一髪躱すも体勢を崩し尻もちをつく。ゾンビは振り返り杏奈にジリジリと近づき、杏奈は後ずさるもすぐ壁に追い込まれてしまう。


「ひっ……!」


 恐怖で怯える杏奈にゾンビは容赦無く飛び掛かろうとする。そこに……


「イィィヤッハァァァァ!!」


 突如としてバイクが飛び出し杏奈の目の前でゾンビを轢き潰していった。バイクはゾンビを下敷きに滑りながら横向きで停止すると乗っていた女性が杏奈へと声を掛ける。


「大丈夫かい? お嬢ちゃん?」


 女性はキャンパーの様な服装にヘルメット未着用でゴーグル、背には金属バットを背負っている。黒髪の長髪で背丈は非常に低く一見女子中学生と見紛う程であった。カッコつけたいのかねっとりとした話し方でキメ顔をしている。


「怖かったね。でももう大丈夫」


 杏奈が反応に困っていると女性は自身の後ろをポンポンと叩き、「乗りな」と乗るように促す。

 杏奈には乗る以外の選択肢は無かったので乗せてもらうことにした。


 バイクは勢いよく発進すると猛スピードで渋谷の街を駆けていく。

 荒々しい運転に振り落とされない様に女性に回している腕に力を込めしっかり捕まっていると、女性は更に上機嫌になりバイクはスピードを増していく。道玄坂の方へ進み、適当な建物を見つけそこで一息つくことにした。


 杏奈は座って休んでいると遅れて女性は大量の飲み物を抱えてやってきた。


「おまたせ、好きなの飲んでいいよ」


 腕いっぱいに抱えたペットボトルや缶の飲み物を目の前に広げる女性、一体何処で取ってきたのか問うと平然とした顔で下の自販機を叩いて出してきたと言う。果てしなく野蛮だ……。


 杏奈はペットボトルの水を手に取ると女性は微糖のコーヒーを手に取り目の前であぐらをかいて座る。


「いや〜危なかったね? 偶々通りかかってて良かったよ〜。私は志那内加奈子しなないかなこ! お嬢ちゃんは?」


「アタシは……荒谷杏奈あらたにあんな。助けてくれてありがとうございます……」


「いいよ敬語なんか! なんだかむず痒いよぉ〜。ホラ、同い年だと思ってさ! 呼びやすいように呼んでくれていいよ! かわいいの限定でね?」


「じゃあ……カナちゃん」


「ええへ〜」と嬉しそうな顔で照れている加奈子を見て能天気な雰囲気がどこかユッコに似ていて杏奈はユッコの死を思い出し、無意識に加奈子をユッコと重ねてしまう。杏奈は途端に悲しくなり泣きだしてしまった。

 加奈子は慌ててなんとか杏奈を元気付けようとあたふたしている。


「アンちゃん元気出してよ! なんかあったんだろうけどさ! ゴメン! 私こういう時どうしたら良いか分かんないの! だからお願いします! 泣き止んでください何でもしますから!」


 終いには渾身の土下座まで披露する加奈子に杏奈は圧倒される。呆気にとられる杏奈が泣き止んだと思った加奈子はまさか自分でも効果があるとは思っていなかったようで驚いた表情で顔を上げる。


「アン…ちゃん…?」


「なんでカナちゃんが驚いてるの……? でアンちゃんって?」


 なにはともあれ泣き止んだようで「良かったぁ」とホッとする加奈子は杏奈に飲みかけコーヒーを差し出す。


「アンちゃんが私の事を加奈子でカナちゃんって呼んでくれるんでしょ? じゃあ杏奈ちゃんはアンちゃんだよね? アンちゃんが私と会う前は何があったか知らないけど生きてりゃきっとこの先良いことあるよ」


 加奈子の笑顔を見ていると不思議と心が暖かくなり、杏奈の顔に笑顔が戻る。杏奈は飲みかけのペットボトルを差し出し乾杯を交わす。


「ありがと、元気出た。これからよろしくね」


「どういたしまして。さて、そろそろ行きますか」


 2人は残りを全て飲み干し立ち上がる。

 炭酸飲料を除いて手を付けていない飲み物を加奈子のカバンに入れて建物を出てバイクに跨る。


「さて、何処に行きやしょう?」


「あの光の真ん中の柱まで行こう。あそこに行けば渋谷を覆ってる壁の秘密が分かるかもしれない」


「りょーかい、でもその前にこういうのはまず装備を整えてからって相場が決まってるよね」


 そう言うと加奈子はバイクを光の柱の方角、スクランブル交差点の方へとバイクを走らせる。


 渋谷を爆走する加奈子と杏奈、ゾンビの群れの間を駆け抜け向かったのはホームセンターであった。杏奈が丸腰であるため加奈子が護身用にと気を利かせ、ホームセンターに立ち寄ったのだ。ホームセンターは無人で特に人が立ち寄った形跡も見当たらなかった。


「ホームセンターってのは大体武器になりそうなの一つやニつあるもんだからねー。私、映画ちょくちょく見るから詳しいんだー」


 得意げにホームセンターを物色する加奈子、杏奈も何か武器になりそうな物がないか探すが……


「なにも……ない!」


 加奈子が頭を抱えてそう叫ぶ。

 おそらく加奈子の脳内では長い棒状の工具を想像していたのだろう。しかし都会のど真ん中にそんなものは存在しなかった。

 中には電動ドリルやら片手で持つようなサイズの工具こそ合ったものの如何せんリーチが短く、武器として使うには少し心許なかった。


 がっくりと肩を落とす加奈子だが、何か思い出した様に出入り口へと向かう。杏奈も後を追うと加奈子が入り口付近で警察官の遺体の前でしゃがんでいた。

 加奈子が立ち上がり振り返ると、嬉しそうな顔で杏奈に拳銃と警棒を見せてきた。


「じゃじゃ〜ん♪ めっちゃ強い武器見つけました〜!コレがあればゾンビも怖くないね!これはアンちゃんが持ってて!」


 杏奈は拳銃と警棒を受け取ると、拳銃をまじまじと見つめる。果たして弾丸は入っているのだろうか?

 間違って引き金を引かないように気を付けながらカチャカチャと弄っているとマガジンが外れ、杏奈はマガジンの中を覗き込む。


(弾は……入ってるっぽい……でもそんなに無いな……)


 試しに掌に中の残弾を出して確認してみると、中には6発ほど残っていた。


(いざという時用になりそうだな……となれば警棒メインになるか……)


 拳銃をポケットに入れ、警棒は手首に紐をかけ、再びバイクに乗り込む。


「準備は出来た、行こう」


「あいあいさー!」


 加奈子はフルスロットルで前輪を浮かしながら急発進し光の柱の出所である表参道の方角へと走っていく。

 杏奈と加奈子、二人の出会いは渋谷の街の新たな運命を切り拓く事ができるのだろうか……




ミニコーナー企画!


「次回予告をやってみよう!」


やほっ次回予告を担当するよ。特異現象捜査部本部長、這月ニアだよ。


それじゃチャチャッと次回予告やっていきましょ〜


元限界社畜、志那内加奈子と出会った杏奈はとうとう光の障壁の中心部に到達する。その頃、渋谷では我々の標的ターゲットの男と沢渡ちゃんことHK-Houndとの激戦が繰り広げられていた。

沢渡ちゃん、頑張れ! そして杏奈と加奈子は障壁の解除はできるのか? 今後が楽しみだね〜

次回、「志那内は死なない」 次回もお楽しみに〜

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