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それでも、歩みは止めない

 渋谷の街を覆う謎の障壁の解除を決意し友人のユッコと共に中心にある光の柱の元へと向かうことを決意した杏奈。

 行動を始めたのも束の間、ゾンビから逃げ込んだホテル内に潜んでいたゾンビに襲われ、杏奈を庇ったユッコは腕を咬まれてしまう。

 事実上の感染を意味するユッコの腕の咬み跡によってユッコの命のタイムリミットは動き始めた。

「杏奈……杏奈ぁ……」


 絶望感からパニックに陥り、涙を流しながら友の名前を連呼する少女、玉井優子たまいゆうこ、通称ユッコの腕にはゾンビによる咬み跡が残っていた。それは実質的な「死」を意味するものであった。


「ユッコ……! そんな……! なんで……!?」


 杏奈は目の前の現実を受け止められずにいた。言葉が出ない、頭が回らない、なんで? アタシのせい? アタシが気づかなかったから? 


 思考をする前に杏奈はユッコを連れて部屋を後にし壁にもたれさせ、自身の上着の袖をちぎり、ユッコの腕に撒き止血をする。


「大丈夫……大丈夫大丈夫大丈夫……」


 ひたすらにユッコを安心させる為に言葉をかけるが上手く言葉が出てこない。

 ユッコは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔でぽつぽつと話し始めた。


「私……死んじゃうのかな? もう助からないのかな? 私……まだ死にたくないよぉ……」


 杏奈も泣きそうな顔でユッコを強く抱きしめる。


「大丈夫、アンタは死なない! 死なせない! あんなゾンビなんかにさせないから! だからユッコ、負けないで! 諦めないで!」


 杏奈は自身の責任感に押しつぶされそうになりながらユッコを失いたくない気持ちでいっぱいだった。


「ユッコは死なせない! 私が! ユッコを助ける!」


 杏奈はユッコを背負い、ホテルを飛び出す。

 安全な場所を求めて、色んな建物を転々とした。他の生存者からは「感染者を連れてくるな!」と受け入れられなかった。それでも諦めずユッコを休ませられる場所を探した。背からはユッコの苦しむ声が聞こえる。そのたびに杏奈の目には涙が浮かんだ。だが今にも折れそうな心にも負けられなかった。

 ゾンビ達は容赦無く杏奈に襲いかかった。

 杏奈は道中工事現場跡地で拾った鉄パイプで何体ものゾンビの頭部を潰した。人1人背負いながらの戦闘、少し運動ができるだけの女子高校生にはとても長く続けられるものではなかった。


「ハァ……ハァ……諦めない……諦めない!」


 杏奈は自身の身体に鞭を打ち続ける。

 杏奈は走った。光の柱を目指して、しかし現実は非情だ。時間を追うごとに増えていくゾンビの大群が行く手を阻む。


 前後挟むようにゾンビが押し寄せてくるなか、やむを得ずマンションに逃げ込む。

 正面からではなく側面のベランダを登り、中に入る。マンションの中は住民が隠れていおり、ベランダから侵入してくる杏奈に驚き、ユッコの咬み跡を見ると更に顔から血の気が引いた顔で「ゾンビなんか連れてくるな!」と物を投げられる。


「痛い! やめて! すぐ出てくから!」


 杏奈は前を横切りすぐさま部屋を出ていく。

 そのままマンションの階段を登り、屋上へと到達する。ユッコの体を壁に預け、杏奈も疲れきって腰を落とす。

 ゾンビからも人からもあちらこちらから暴力が飛び杏奈は身も心もボロボロになってしまっていた。


「痛いよ……辛いよ……もうヤダ……助けてよ……お兄ぃ……」


 思わず弱音が溢れる杏奈、切り傷や痣だらけの体で蹲る少女。身も心もまだ未成熟な少女にはとても耐えられるものではなかった。


「……めんね」


 ハッと顔を上げるとユッコが今にも消え入りそうな声でポツリと呟く。


 ユッコの体は咬まれた場所から肌が赤黒く変色していき、既に右腕が全て侵食され顔や胸にまで広がり右半身を中心にゾンビ化が進み、右目は黒目を失いかけ、白く薄まり左目も焦点が合っていないようであった。

 呼吸も浅くなっていく中、ユッコはゆっくりと口を動かす。


「ごめんね……私、もうダメみたい。もう……何も見えないんだ……。私が私じゃなくなっていくのを感じるの」


 虚ろな目で真っ直ぐを見つめながら話すユッコに杏奈はゆっくりと近づく。杏奈は今から別れの言葉をかけられるような気がして仕方がなかった。


「あのね……? 杏奈、1つお願いがあるの。私……ゾンビになるの嫌…だから……まだ人でいられる内に……終わらせて……ほしいな」


「そんなこと……出来る訳ないでしょ!? 私が……ユッコを殺すなんて……ユッコ……諦めないでよ……お願いだから生きてよ……!」


 縋るようにボロボロと泣きながら床に伏す杏奈に、ユッコは首をゆっくりと横に振った。


「もう、分かってるでしょ? 私……もう手遅れだって。だからお願い……私をゾンビにしないで……人のまま最期を迎えさせて」


 途端に杏奈の脳内にユッコの言葉がフラッシュバックする無責任という言葉。友の死を受け入れられないが為にそれから目を背け友の願いを叶えてあげられないというのは……それはまさしく無責任だと。


 杏奈はナイフを握り刃先をユッコに向ける。その手は酷く震え、まるで狙いが定まっていなかった。

 首元に刃を添えて、後は勢いよくそれを引くだけで良かった。


 ――だが……それができなかった。


「無理……だよ……大切な友達を殺すなんて……アタシには……とても……」


 杏奈にはとても耐えられず刃先を下ろす。

 その時、杏奈の体は勢いよく後方に引っ張られる。

 全身黒ずくめの男が杏奈の体を引っ張り出したと思えば杏奈と入れ替わる様に黒い塊がユッコに向けて投げ込まれる。

 それは素人でも一目見れば何かわかるものであった。


 その黒い塊の正体は「手榴弾」だった。


 視界で手榴弾がユッコの顔と重なる時、ユッコは……微かに微笑んだ気がした。


「あ……りがとう」


 その瞬間黒ずくめの男が握る拳銃が手榴弾を撃ち抜き轟音と共に爆発する。

 ユッコの顔があった場所は、首から上が弾け飛んで壁に張り付いた血痕のみが残っていた。


「友人がゾンビ化してとどめを刺せなかった……といった所か。気の毒だが諦めることだな」


 黒ずくめの男は酷く冷徹な態度で杏奈に言葉をかけると建物と建物の間を飛び移って何処かへと消えてしまった。


 杏奈はユッコの亡骸を呆然と見つめていた。

 やがて感情が追いついて悲しみと怒りが火山が噴火したように噴き出してきた。


「あ……あぁ……」




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」




 頭部を失くしたユッコの亡骸の前で床に伏して泣き叫んだ。

 血が滲む程床に拳を打ちつけ己の無力を嘆き、友の死を受け入れられずにユッコを殺した黒ずくめの男を恨んだ。

 杏奈の慟哭は夜明けと知らせる太陽と共に空へと昇っていった。

 火薬と血の混じった臭いを風が吹き運んでいく。それはまた1つの命が失われた事を告げるように、1人の生者の悲しみの声を掻き消すように渋谷の街に夜明けの風が吹いた。



 ◇ ◆ ◇ ◆



 渋谷スクランブルスクエア屋上


 朝焼けが照らす渋谷で最も高い位置で沢渡は渋谷の街を見下ろしていた。


「こちらHK-Hound、狙撃ポイントに到着。標的ターゲットの情報があれば欲しいところだが」


「こちら本部通信、現在、目標の最終目撃情報は渋谷PASCOが最後となっておりますがそれ以降の更新がありません。これだけの被害状況です、恐らく渋谷区に配属されている警察からの情報の調達は困難を極めているでしょう」


「了解、これより『猟犬』での追跡を開始する」


 沢渡は1枚の写真を取り出し、念じるように目を閉じる。左頬には刻印が浮かびあがり、周囲には腐臭が立ち込める。


「少しでもミスすると標的がオレになりかねんのが懸念だがやむを得ない。招来するよりはリスクが少ないと考えれば……」


 その後も写真を前に目を閉じ続けると脳内に渋谷の何処かの景色が浮かび上がる。代々木公園と思われる位置の情景が浮かび上がる。


「……そこか」


 沢渡は目を開けると肩にかけていた大きな棒状のものでも入れるようなケースを開け、中の物を取り出す。

 それは沢渡の身長の2/3より少し大きい程の狙撃銃スナイパーライフルであった。


 沢渡は北の方角へ向けて銃口を向ける。

 沢渡の覗き込むスコープの先では、井の頭通りに沿って代々木公園前を歩くフード付きのトレーナー姿の男の姿、頬にヒビのようなものは写真には無かったが真ん中に黒髪が残した白髪と海のような蒼い瞳は写真と一致していた。


 照準を頭部へと定め、引き金に指をかける。

 軽く息を吐き集中力を高める。今この瞬間行われる「命を奪う」という行為は、精神的にもそれ相応の覚悟を必要としている。

 沢渡の目はそれらをすべて一身に背負った「狩人」の精神を宿していた。


「眠れ」


 引き金を引くと同時に発射される銃弾は約1km先の標的ターゲットに向かって一直線に向かっていく。着弾までは一瞬であった。

 目標の頭部を撃ち抜き、標的ターゲットは撃たれたことにも気付くこと無く息絶える……はずだった。


 銃弾は数cm手前で弾かれる。

 沢渡には標的ターゲットが何かしたようには全く見えなかった。

 そして1km先であるにも関わらず標的ターゲットとスコープ越しで目が合ったかと思えば不敵な笑みを浮かべる。

 それは確実にこちらを視認している証明でもあった。

 沢渡の狙撃は標的ターゲットに完全にバレていた。


「Shit!!(クソ!)」


 沢渡はスコープから目を離しライフルをしまって狙撃ポイントから離れ、本部と通信を取る。


「こちらHK-Hound、目標の狙撃に失敗。何をしたか分からん! だが狙撃が防がれた! 奴は代々木公園前にいる。そちらに座標を転送する、追跡頼めるか?」


「こちら本部通信、渋谷エリアの警察署より追跡用ドローンの展開を要請しています。渋谷北部を中心に追跡を開始予定。ですが撃墜やジャミングの可能性も考えられるので過信は禁物です」


「了解。これよりポイントを移動、奴との距離を詰める」


 通信を切ると沢渡は勢いよく屋上から飛び降り、真っ逆さまに落ちていきあわや地面と接触かという勢いであったが地面から1.5m付近で急激に落下速度を落とし、ふわりと着地する。


 地上にいるゾンビを蹴散らしながら警察車両を見つけては乗り込み、フルスロットルで北上していく。


 通信用の端末を取り出し、ドローンの追跡状況を確認する。ドローンは依然北部エリアで追跡中で位置情報がしっかりと印されていた。


「絶対に逃がさん」


 鋭い眼差しで警察車両を走らせゾンビもお構い無しに巻き込みながら標的ターゲットを猛追するのであった。



 ◇ ◆ ◇ ◆



 日もすっかり登りきり、静けさと乾いた空気が少し肌寒さを運んでくる中、マンションの屋上で遠くを見つめる少女の金髪が秋風に揺れる。普段であれば心地良いと感じていたはずだが、目が乾き切るほど泣き腫らし、涙の跡で目が腫れてしまったている少女にはもはや何も感じなかった。


「……いかなきゃ」


 静かに呟いた少女は屋上の扉を開け階段を降りていく。扉の端にはかつて少女の親友だったものが壁にもたれかかっており、彼女の死をいたむように静かな風の音だけが流れた。




ミニコーナー企画!


第2回! 「気になる!? あの子のプロフィール!」




どうもー! 皆大好き! 幽世のアイドル葉月お姉さんだよー!




今回の企画はね! この世界の登場人物に関する情報を公開していっちゃうよ!


さぁ今回のゲストはコイツだ!!


ども! File1 「人を喰らう家」に登場人物したぜ! 荒谷和真だ!


今回は少年のお友達の和真くんだね! なんだか久しぶりな気がするよ! 眼帯カッコいいじゃん! イカしてるね〜♪


だろぉ? っぱ死神様は分かってくれるんだよな〜。目が視えないのは不便だけどよ? それよりやっぱカッケェんだよな〜。妹にはダセェって言われてさ? こういうのはオシャレとかより少年心なんだよな!


ウンウンわかるよ。っと話し込んじゃうといけないからそろそろ自己紹介たのむよ?


おっとそうだった……よし! じゃあ改めて俺の自己紹介だな! 


デデンッ!


名前 荒谷和真 誕生日 8月8日


年齢(初登場時)16歳 血液型 O型 


身長 175cm 体重 69kg


好きな食べ物 肉


嫌いな食べ物 イワシ


親友 和泉心陽 苦手な人 否定から入る奴


異能力 神格憑依・死神


好きなこと 体を動かすこと


嫌いなこと ジッとしてること


ここだけの話 


心陽の1人暮らしを始めて暫くして部屋に遊びに行った際、冷蔵庫にあった葉月用のプリンを勝手に食べたことを未だに黙っている。



……何かお姉さんに言うことはないのかい?


〜♪(口笛)


お前か私が大事に取ってたプリン食ったのは!


ゴシャッ(拳のめり込む音)


ま、前が見えねェ……


なんで黙ってたのかな? まだまだ言いたいことはあるからこの後たくさん「お話」しようね?


心陽……わりい、俺死んだわ……


それじゃあ皆、俺がこの後生きてたらどっかで会おうぜ。 また次回

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