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あのあと 勝つより生きろ

 2014年 10月26日


 人を喰らう家の一件以降、平穏な学生生活を送っていた少し? 霊感の強い高校生、和泉いずみ心陽しんようとその友人、荒谷あらたに和真かずま。和真は右目の視力を失った事を除けばすっかりいつもの日常を取り戻していたが、心陽の方は完全とは言えなかった。


 和真は失明した右目に死神の力が宿っており、意識しなければ発動しないが、心陽は左目は見えている上、元々持ち合わせている霊感が関係してしまっているのか能力を使わずとも《《視えてしまっている》》。

 街中を歩いていてもそこら中に蔓延る怨霊や成仏できない人の霊などが心陽の目に映ってしまい、心陽はそれに悩まされていた。


(う〜ん慣れてきたとはいえやっぱり視えるっていうのは精神衛生上よくないな……)


 あの日から自分の能力の訓練も兼ねて夜の散歩をしたりして亡霊に対する耐性を身につける努力をしたりしている。

 夜は特に多く、よく視える。

 案外視えているものが全て有害なものかと言われればそう言うわけでもなく、未練などから成仏出来ずに現世を彷徨っているだけというのがほとんどで稀に危害を加えるような怪異とも呼ばれるような霊に襲われることもあったが久美を超える存在も中々いないようで簡単にいなせるようにもなってきた。


 そんな心陽は今日も夜の街へ駆け出していく。今日は定期的に行われている特別な日。

 心陽は軽い足取りで家の近くの公園へと足を運ぶ。大きな噴水が特徴の街ではそこそこ大きな公園だ。

 そしてその大きな噴水の前で立ち止まる。

 周囲に人が居ないことを確認し、心陽は目を閉じ深呼吸をする。そしてゆっくりと目を開いた瞬間、心陽の左眼は紅く染まり、宝石のような美しい深紅の瞳に変化する。


 そして周囲を見渡すと僅かな空間の歪みを発見する。心陽はその歪みに触れ、その腕を素早く振り下ろす。すると空間の裂け目が現れ、心陽はその中へ足を踏み入れる。

 その先は先程まで心陽が立っていた公園の噴水前と同じ光景であった。

 ただ1つ先程の光景と違う部分といえば――


「おや? 今日は早いね? お姉さんに会うのが待ちきれなかった?」


 噴水に腰掛ける黒装束の女性の姿、心陽と和真に霊能力「死神の力」を与えた死神、葉月が心陽を待っていた。


「結界への侵入もだいぶ慣れてきたねぇ? ちゃんと力の抑制も上手くいってるし無駄もかなり減ってきた。上々上々〜♪」


 葉月がパチパチと拍手をして出迎える。

 定期的にこの公園で邪魔が入らないよう結界を張り、閉鎖した空間の中で能力のコントロールを訓練しているのだ。

 その成果があってか力の抑制を身につけ、精神の消費量を抑える事で燃費が良くなり、能力の持続時間が発現当初と比べてかなり長くなった。

 訓練の頻度的には2週間に1回程度だが、これは精神の消費後は回復に時間がかかるようで、精神の回復が追い付かないと肉体に影響が出る為、高頻度で能力を使うことが出来ないことが理由であった。


「さて、今回は待ちに待った力の応用だよ。今から教えるのは基礎的な移動から使い方によっちゃ最強の攻撃となる技、『拍手』を教えようかな」


「拍手?」


「一度少年には見せたんじゃないかな? 霊力を込めて拍手をすれば対象の側に瞬間移動できる技だよ」


 心陽は人を喰らう家に向かう前に葉月が一度見せた事を思い出した。葉月の横を通った時、手を叩いたと思えば目の前に急に現れた事があったのを思い出した。


「やり方は簡単。掌に霊力を込めて相手の位置と移動先をイメージして手を叩くだけ。発動条件として相手の《《気配を感知している》》こと、相手を《《視界に入れている》》こと。この2つを満たしていないとただ手叩いただけだから注意してね? じゃあ早速やってみよう」


 そう言うと10m程先に葉月が立つ。

 心陽は掌に霊力を込め、葉月をしっかり視界に捕捉し、手を叩く。すると葉月のすぐ目前に瞬間移動する事に成功した……が移動先のイメージが少し近すぎたのか心陽の顔が数センチで葉月の顔に接触しようかという距離に飛ぶ。


「おやおやぁ? 結構積極的だねぇ少年? そんなにお姉さんとくっつきたい?」


「いや! 違っ! これはちょっと近すぎただけで……」


 ニヤニヤと笑う葉月から心陽は慌てて後退る。顔が沸騰したように熱くなり、顔から火が出た様に赤くなる。

 葉月クスクスと笑いながら両手を広げて催促する。


「さぁもう一回! 今度は背後に飛んでみよう! 練習あるのみだよ!」


 心陽はコホンと咳払いし、深呼吸で気持ちを落ち着かせた後、「拍手」の訓練に励むのだった。


 〜数時間後〜


「今日はここまでにしようか、お疲れ様。初めてにしてはかなり上出来じゃない?」


 ぐぅ~っと背伸びをしながら葉月は能力の使い過ぎで精神を消耗し切ってぐったりベンチで休む心陽を褒める。


 少し落ち着いた所で葉月は心陽の首から下げているペンダントに目を向けた。


「少年も着実に強くなってきてるしその内コレもいらなくなるかな?」


「いえ、これは俺の大事な御守りだからこれからもずっと着けていようかなって」


「フフっ気に入ってくれてるんだ♪ それとも少年はお姉さんが好きなのかな?」


 葉月にからかわれ心陽は再び赤面する。その様子を見て葉月はまたクスクスと笑った。


「そういえば葉月さんって生前、警察官だったって聞いたけど本当なのかな?」


 心陽はペンダントを見てふと思い出した様に葉月に聞いてみることにした。


「本当だよ。お姉さんね、昔警察官でさ、懐かしいなぁあの頃。結構マジメな子だったんだからね?」


 自分で言う葉月に心陽は苦笑いになるもののその件について触れてみることにした。


「殉職したって聞いたけど一体何が?」


「あれはね……とある宗教団体が裏社会との繋がりがあるみたいな事があってその捜査をしていたのそれも今みたいな秋の日だったかな」


「もう少ししたら冬だけどね」


「そして捜査が進むにつれて証拠になるものも揃ってきたから遂に本格的に摘発に向けて動き始めた。案の定その宗教団体は武装もしていて結構大変だったんだ。その時私は見たの。子供が1人、階段を登っていく姿を……。勿論追いかけて屋上に着いた頃、その子供はこの世の言語とは思えない呪文の様なものを3回くらい唱えた瞬間、目の前が光でいっぱいになって次に眼の前が映った時には私はもう瓦礫に潰されてた。空には炎の塊のような、異形の物体が子供の頭上に浮かんでいた。その時私は思ったの、『神は存在する』ってね。そうして私は息絶えた」


 恐ろしい記憶を思い出した様に少し顔色を悪くしながら葉月は語る。 

 心陽もそれを黙って聞くしかできなかった。


「それで死んだらお姉さん幽世の神様から死神として雇われちゃった! なんだかんだで5年目でもう駆け出し卒業なんだよ?」


 先程とは打って変わってフフーンと得意げに胸を張る葉月に思わず笑みが溢れる。

 葉月は過去を話したついでに心陽に語り始める。


「神様は存在するし、それは人にとって敵か味方は誰にも分からない。でもこれだけは覚えておいて、『人は神には勝てない』。必ずそこには絶対的な力の差が存在するの」


「少年はこれからその力を使ってたくさんの人を護り、救うと思う。でもずっと言ってるけど無茶はしないで。相手は人の手では到底敵わないものであるという事を忘れちゃダメ。何処ぞのバカ警官みたいになっちゃだめなんだから」


 葉月は人差し指を心陽の胸の中心に当てて真剣な眼差しで言った。


「これは少年への教訓! 目の前の『1人より未来で救う10人』を優先しなさい! 1人のために命を懸けるような事はしないで、君にはその先の未来で数十人、数百人の命を救う力を持っているの。君が死んでしまうとその先で助けられる大勢の命が助からなくなる事を頭に入れて決断する事! 分かった?」


 珍しく真剣に念押しする葉月に心陽は笑った。葉月は心陽の反応に真剣に聞いているのかと眉をしかめる。


「要はいつも言ってる無茶するなってことでしょ?」


「そう! そうだけど……少年はいつもそれだけだと無茶するじゃないか!」


 ぷく〜っとむくれる葉月の頬を指でつつきながら心陽は立ち上がる。


「葉月さんが心配してくれてるってのは十分分かったからさ、肝に銘じておくよ」


 そして振り返り少しからかうような笑みを浮かべながら一言追加した。


「それとも葉月さんは俺が好きなのかな?」


「あ! あぁ〜! ///」


 唐突な仕返しに葉月は茹でダコのように赤くなりブンブンと腕を振るう。


「たまには仕返ししてやんないとね?」


 ニヒッと笑い逃げる様に結界の外へ出る。

 葉月は恥ずかしさから真っ赤な顔を両手で顔を隠し、心陽が結界を出てしばらくして、落ち着くために夜空を見上げる。仮初の空間とはいえ現世をそのまま映し出した空は雲1つ無く満天の星が輝いていた。


「やるじゃん少年……でもお姉さんをからかうとどうなるか教えてやんなくちゃね」


 街頭が照らすの噴水広場に誰にも聞こえない死神の怪しい笑い声が響いたのだった。



 それから1年ちょっとが過ぎ……



 2015年 3月18日


 とうとう卒業を迎えた。同級生達と別れを惜しみ、和真やクラスメイト達と写真を撮ったりしながら卒業式を終え、またその数日後――


 心陽と和真は新橋の運転する車に乗り、東京都にあるとある施設に訪れる。

 今日からここで4年を過ごし、警察官及び特異現象捜査部として世に出ていくのだ。


 将来への期待や不安、決意を胸に死神から力を与えられた青年はこの先に待ち受ける運命への新たな一歩を踏み出すのだった。




 2020年 11月 1日 東京都 渋谷区



 ザッ――ザザッ――ザッ――


 通信の電波が流れる音、インカム越しに通信が入る。


「こちら新橋、今日はお前等の初仕事だ。本来、新人は捜査員の助手パートナーとして経験を積んでから自身の担当を持つようになるんだがお前等が初仕事からいきなり担当を持つのは異例だ。だがそれだけ本部からの期待と信頼を買われている証拠だ。なぁに訓練生時代とやる事は変わらない。現場の情報を持ち帰り、可能な限り対処する。だが優先事項は『生きて帰る』事だ。武運を祈る、期待してるぜ新人ルーキー


「……了解。先行任務中のHK-Houndとの合流の後、特異現象捜査部 現場責任は和泉が担当する。これより和泉及びHK-Houndとの共同捜査を開始する」



 Go To Next Scenario――

ミニコーナー企画! 


第一回! 「教えて! 葉月せんせー!」


さぁやって参りました! ミニコーナートップバッターは「教えて!葉月せんせー!」 


このコーナーでは皆大好き幽世のアイドル、葉月お姉さんが分からないことに何でも答えるコーナーだよ! では早速いってみよー!


デデンッ!!


葉月さんは死神にどうやってなったんですか? 

by 和泉心陽


フムフムなるほどね?


お姉さんがどれくらい偉いのかって事かぁ……


それはね〜結論から言うと「気づいたらなってた」ってのが答えになるのかな?


この世界では人は死ぬとほとんどが幽世に魂が還って行くらしいんだけどどうやら「神格の力」が介入した死には稀に神格の力を宿して幽世に還っちゃうんだって。


幽世に還り神となると輪廻転生の輪から外れてしまって生まれ変わる事が出来なくなってしまうみたいだよ。


神様になると役割ってどうなるの? って思うだろうけど実は明確な役割なんてものは無いんだ。

神話とかによれば色んな神様が居るけど実際の所はただ各々強大な力を持っているだけ。気まぐれ何をするのも自由で自分でその力を使う事も与える事もできる。お姉さんと少年2人のようなものだね!


お姉さんが死神を名乗っているのもそうだけど神様は大抵その力に応じたものをそのまま自分の役割としているだけなんだ。


っで多分だけど分かってるのは神様の世界には序列的なのはほとんど無いって事。強さ関係とかもその神様次第って所じゃないかな?ってのがお姉さんの見解だよ。


ま、ここまで言っておいてアレなんだけど実際、どこからが神様なのかなんて定義は曖昧なんだけどネ!


さて、コレで少しは葉月さんの事は分かったかな?


今日はここまで! 皆またね〜♪

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