自殺未遂
わたしが大学生の時、女として産まれたというだけで、性的な搾取を受けるのはちょっと、と感じていました。「女として求められるだけでもありがたいと思わなきゃ」と言ってくるおじさんもいましたが、わたしはありがたいと思いませんでした。女である前にひととしてみられたかったのです。
自分のおんぼろアパートに戻りシャワーを浴びると、首のしたに未熟な乳房とぱちぱちと水をはじくふっくらとしたおなかとその下の手入れのしていない陰毛が瞳にうつった。わたしのこの体が罪なのだろうか。何故、友人としか思っていない男の子達が、わたしの人格を無視していつもすぐ体を求めてくるんだろうか・・・・。「ちょっとかわいいと思って!」と、逃げる時に男の子に言われた台詞が頭に焼き付いていた。わたしが、かわいい?? 大学に入った頃から、ときどき、そう言われるようになった。どうしてだろう。化粧をはじめたせいだろうか? 高校時代、わたしよりかわいい娘なんていくらでもいた。この大学に女の子があまりにも少ないからだろうか?? 何故、男の子達は血走ったまなざしでわたしのことを見つめてくるのだろう。そう考えると、悔しくて涙がぽたぽた出た。
そんなときも、きまって部屋の電話が大音量で鳴る。
「まんこをなめさせろ」
いつものようないたずら電話だった。びっくりしたわたしは受話器を落とした。
女性の体は罪です。男の欲情をあまりにもかきたてすぎるのです。だから、古代の哲学者達はアテナイの学問の場から全ての女性を追い出しました。学問の妨げになるからです。
あの時、逃げおおせずにあのままヤられていたらどうなっていたんだろうと考えると身震いがした。きっと大学構内ですれ違いざまに、「あのさっきすれ違った女は俺がこないだモノにした女」だとかなんとか言われていたのだろう。逃げることが出来てよかった。もし、あの部屋に他の人がいなかったら、力任せに最後までヤられていたんだろうか。そう思うと少し怖かった。これからは、愛してもいない男のことは信用するのをやめようと心に誓った。
どちらにしろ、わたしの頭には、崩壊のイメージしかなくって。わたしの存在そのものが落雷を受けた直後の大木みたいで。未来なんてきっとなにもなくて。そのうち誰かに犯される未来しかわたしには用意されていなくて。犯されて出来た子供をきっと育てることができなくって。わたしのところにだけ、きっとなにも残らなくて。わたしが女として生まれたことそのものが罪で。わたしはこの世に存在しちゃいけなくて。わたしがこの世に生まれて生きているからこそ、嫌なことが起こるのであって。だから、生きることがわたしには許されないのであって。周りの学生がわたしをいじめてくるのも、何もかもわたしが悪いからであって。わたしは生きていちゃいけないのであって。わたしの存在価値なんて、愛してもいない男の性欲の捌け口にされるくらいのことでしかなくって。それならば死んだ方がよくって。その結果できた子供を、へその緒がつながったままさびれた公園のトイレに棄てたりするような未熟な母親にしかなれなくて。それでも生きなくてはならないのであって。そんなわたしに生きろといわれることそのものが残虐なのであって。
わたしがはじめて自殺未遂したのは、その日の晩のことだった。そのときのことはきっと、親も知らない。
今から30年前の事です。男女共学の大学に通っていました。わたしには特定の恋人は残念ながらいなかったので、飲み会に参加する時は、男の子に送ってもらわないように気を付ける必要がありました。送ってもらったらその人になにかされる可能性があるからです。(当時は、ものすごく大好きな人がいて、その人と一緒に帰ることが多くて大切な宝物のような思い出として残っています。)




