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生きるのはこんなにもつらいことなの

生きるのはこんなにもつらいことなの。どうしてわたしだけなにもかもうまくいかないの?

大学に進学すると、全てがきらびやかに輝いて見えた。色んなサークルが勧誘活動をし、男の先輩達は自分の好みの新入生の女の子につぎつぎと声をかけている。なんとなく興味があって自分から入って行ったサークルの飲み会では、しょっぱなから「今日、さっそくベッドインしてみるなら誰がいい?」などと、毒のきつい質問を浴びせられたりした。男の人に興味がないといえば嘘になるが、それ以上にわたしには男の人が怖かった。結婚して出産して家庭に入ってという自分の将来のビジョンが見えないわたしは、どこかの会社に就職して定年まで働くしかないと思っていた。


虐待を受けて育ったからか、わたしは被害妄想が強いタイプだった。人に誉められても素直に喜べなかったし、言葉の裏には必ず何か裏があるに違いないと考えた。先輩や同級生が何気なくする行動や言う言葉の裏をかいてはちくいち傷ついて、いちいち落ち込むという毎日を過ごしているうちに、もとから外部とかみ合わなかった歯車が外れてガタガタという音を出してどこかにころがり落ちていってしまった。


大学に進学し、二ヶ月も一人暮らしを続けると、想像を絶するような『孤独』と戦わなければならなかった。なにがそんなに自分にとって具合がわるいことなのかわからなかったが、その頃のわたしにはもはや、生きることそのものが苦痛に感じるようになった。そうなってくると、体までもが悲鳴をあげるようになる。わたしは次第に、頻繁に起こる過呼吸の発作に苦しむようになっていった。


だんだんわたしの周りに人が寄り付かなくなっていった。わたしが講義室にいると、「どうしてこいつがここにいるんだろうね」と聞こえるように言ってくるクラスメートがいた。わたしがトイレへ行って戻ってくる間に、机に「死ね」とマジックで書かれたこともあった。普通の人間にとってわたしのようなキチガイは、排除すべき存在なのだろう。「はいはいわかりましたよ、死にますとも」とも言うこともできず、甘んじてその仕打ちを受けるしかなかった。わたしのほうにも問題はあった。自分の被害者意識ゆえにバランスを崩したこころを、誰かれ構わず依存しようとすることによって解決しようと試みたのだ。わたしのこころを受け止められるようなキャパシティのある大学生がどこかにいるわけもなく、クラスメートたちは、わたしを避けるように遠ざかっていったのだった。それ以降のわたしは、もはや自分の呼吸の管理も、睡眠の管理もできないようになっていた。


 ある日、精神的な苦痛が激しくて、わらをもすがる思いで大学の保健室へ行くと、すぐに精神科を紹介された。「心療内科ではなく、なるべく大きな精神病院へ行きなさい。そこに先生からも電話してあげるから、明日は講義を休んで朝いちばんで行くこと」と。

翌朝、言われるがまま精神科を受診すると、痩せこけた医者が眉間にしわを寄せたままじっくりとこちらを見据えていた。さぞかし迷惑なんでしょうね、と心の中で思いながら見つめ返すと先生の瞳の奥が冷たく無機質な物体に感じられた。「そういうのは、人間関係の問題だからね」と、先生は言った。医者はかなり言葉を選んでいるようだった。

 そうやってあなたは言葉を選んでいるのでしょうが、性格の問題なんじゃないかって思っているってことなんでしょうね。つまり、苦しみも悲しみも絶望も、死にたくなるのも叫びたくなるのも、呼吸が苦しいのも、眠れなくて困っていることも、全部わたしが悪いのだ、と。医者を責め立てるように思いながら黙っていると、「今度は一週間後に来てください」と医者は静かに言った。わたしは初診でもう二度とこんな医者にかかるものかと、強くこころに決めたのだった。          



わたしの性格に問題があるって言うのって、ちょっとひどすぎじゃない? 

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