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幼少期の兄からの虐待

幼少期に受けた虐待のせいで、うまく生きられないわたし。どうしたらうまく生きられるの?


 子供時代、日常的に兄から暴力を受けていた。

 ギャーと声をあげて助けを求めると、「嘘泣き」だと言われた。泣いたりわめいたり怒ったりすればするほど暴力はエスカレートした。腹を殴られたり頭を殴られたりを続けていると、声を失い抵抗できなくなる。こちらがおとなしく無抵抗な状態になると兄は何も言わずに自室へ戻っていった。

 暴力の理由は、ピアノの音がうるさいだとか、鍵を忘れて出かけていってしまって家に入れなくなった私のチャイムを鳴らす音がうるさかっただとか、どうでもいいような些細な事だった。そんな些細な事がこの自己中心的で幼稚な男にとっては絶対に許せない事だったのであろう。いつかこの男を殺してやるんだという強い憎悪が、殴られた痛みを乖離させた。

部屋に戻ると痛みはぶり返し、ずきずき痛む頭を触ってみると無数に出来たこぶが丸かった頭の形を大きく変形させていた。髪の毛を思い切り引っ張られてこぶができたこともあった。

この男がわたしに暴力を振るうのにはたいした理由はないらしかった。“わたしがここにいること”だけがこの男のスイッチを押す唯一の原因だった。

そんな酷い家庭環境で、わたしにとって自分を守る為の唯一の方法は、自室に鍵をかけて誰の侵入をも許さない事だった。それでも、兄はベランダ越しにわたしの部屋の前にやってきて、バッドで窓ガラスを割って侵入しようとした。窓ガラスが割れる異様な物音に気がついた父が二階の子供部屋に駆け上がってきて兄をぶん殴った事もあるし、母が娘のわたしを守る為に二階に駆け上がってきてあばらの骨を何本も折ることもあった。

両親のそうした態度をえこひいきと取ったのか、それともわたしがこの世に存在する事そのものをとことん憎悪していたのか、兄の暴力は留まる事を知らなかった。

幼い頃、風呂上りのわたしに兄が「性器を見せろ」と言ってきた事があり、そのただならぬ雰囲気におびえ、逃げ回っているうちに1階のベランダから落ちて頭から大量の出血をした事がある。赤茶色の血液が水溜りのように広がり、気がついた両親に病院に連れられ、何針も頭を縫う羽目になった。兄はこっぴどくしかられたが、悪いという事がわかっていないようだった。この男には人間として根本的に何か決定的にかけているものがあるのではないかと思った。

マトモな人間なら、大人になったら暴力は振るわないのだが、兄の場合は違った。三十代なかばになってもなお、些細な事で家族に暴力を振るったり大声をあげたりした。

わたしにとって兄は脅威でしかなかった。こんなヤツ早く死んでしまえばいいんだと真剣に思っていた。それでもなんとか暴力を振るうほうにはどうしようもないくらいの深い心の傷があって、それで仕方なくやっているんだと考え、家族カウンセリングを受けようとしたことがあったが、家族はそれを拒絶し、カウンセラーとわたしだけが不釣合いに取り残された。そしていつしか家族を何とか救いたいと考える事はなくなっていった。本人が何とかする気もないのにわたしが兄を変えることなど出来ないということにいつしか気づいたのだ。

同じ人間に憎しみというものを持続して持ち続けるという事は到底不可能で、わたしの兄に対する積年の憎しみはいつのまにかわたしのなかで認識されない感情になっていた。しかし乖離してしまった頭では感情というものを理解する事が出来ず、わたしには家族というものが理解できないまま大人になってしまったのだった。


高校生になると、なんとかしてこの家族から離れようと考えるようになった。家からは到底通えない距離にある大学に進学することだけを夢見て、毎日を過ごした。こもりがちな性格に育ってしまったわたしは、いつも教室の片隅に不自然に取り残されていた。机の上にはいつも『さみしさ』が山積みにされていた。何とか自分から女の子の集団の中に入っていこうと試みたが、いつもはじめの二、三日で挫折した。わたしだけが、クラスの皆とうまくかみあっていなかった。内へ、内へとこもっていく性格のわたしは、他人に合わせるのがとてもニガテで、学校に通うのは地獄のように苦痛だった。授業と授業の合間に、女の子達がギャーギャーいいながら集まって、恋だのなんだのといった話題で大変な盛り上がりを見せていたが、男嫌いのわたしには、まるで理解ができない話だった。


幼少期に受けた虐待は、生きることをとても難しくする。

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