初仕事
「臨時でパーティメンバーに追加――ですね。……はい、依頼内容ともに問題ありませんので受理します」
ギルドの受付でドレークさんたちのパーティ【風矢と炎斧】に臨時メンバーとして追加してもらう手続きをし、依頼受注も行った。
今回受ける依頼は帝都近郊にある草原に出没するワイルドボアの討伐だ。
「それにしてもドレークさんが後輩の面倒を見るなんて珍しいですね。なにか心境の変化でもあったんですか?」
「んなわけねえだろ。単なる気まぐれだよ」
「もう……素直じゃないんだから。まあ、ギルドとしてはありがたいんですけどね。最近の新人さんの死傷率が高止まり――」
「おい!」
受付嬢を遮るように声を上げたドレークさん。
あまり聞かせたくない話のようだ。
まあ、死傷率なんて言われれば誰でも耳をふさぎたくなる話ではあるか。
特にこれからデビューする僕には聞かせたくなかったのだろう。縁起が悪い。
「あ、ごめんなさい。――それでは、Cランクとしては軽めの依頼ですが気をつけてくださいね」
「おう」
こうして僕の初仕事が始まった。
帝都近郊とはいえ、草原はかなり広い。
目的地までもそれなりに離れているので馬車を使うことにした。
僕が一文無しなので、馬車代は報酬から引くということで話はついている。
馬車に揺られながら、パーティでの活動について色々教えてもらった。
例えば、報酬について。
なんでも報酬は依頼に対してなので、一人ひとりが提示された金額を受け取れるわけではなく、提示された金額をパーティで分けることになるそうだ。
分け方はパーティによって様々で、山分けのところもあれば、活躍次第で変わるところもあるらしい。
ちなみに【風矢と炎斧】は山分け派らしい。
他にも戦闘での連携や救援についてなど、ソロとの違いを教えてもらったのだが、こちらは実践を通してのほうがわかりやすい、と大まかにしか聞くことができなかった。
そうこうしているうちに目的地近くまで来ていた。
馬車を降りて、その先は徒歩だ。
草原の道なき道を進むこと数十分。
たどり着いたのは、他よりもほんの少し土地が盛り上がった程度の丘の上だった。
なだらかな斜面であるため死角がない。
晴れているせいか、かなり遠くまで見渡せる景観の良い場所だ。
「今日は帝都まで見えるな」
言われてみれば、たしかに帝都の外壁が薄っすらと見える。
「これだけ視界が良いと出てこないかもしれないね……」
討伐対象は晴天時に目撃情報が多いが、警戒心の強い生き物でもある。
視界が良すぎて自らの敵と思われるものが見えれば出てこない可能性が高くなる。
「探すってなると人手が多い方が良いが……」
「三人でこの面積は無理だね」
「だよな……」
強面のドレークさんが困り顔になっている。
仕草も困った人のそれと同じだ。
「アルくんはどう思う?」
ワイルドボアの習性を思い返していると、ゼインさんににそう問われた。
――ちなみに、僕の名前は長いということでアルと呼ばれることになっていた。
「えっと……、ワイルドボアは自身より弱者を狙う習性があるので、より弱者――装備を隠すか外してみてはどうでしょう?」
「なるほど、旅人とか商人に扮してみるのか。悪くないね」
「けどよ、いざ襲われたときはどうする? 丸腰で応戦することになるぞ」
ワイルドボアの突進は馬よりも早い。
更に質量もあるので、直撃すれば良くて重症、悪ければ即死とも言われている。
さりとて魔物の中でもそれほど強い訳では無い。
せいぜい高くてDランク程度の強さだ。
知能も高くない。脅威なのは突進ぐらいなのだ。
「おそらく武器が見えなければ問題ないと思います。それに、全員がそうする必要はないのではないでしょうか」
「おいおい、自分が囮になるってか?」
そう言うドレークさんの顔は渋い。
新人にやらせることに抵抗があるのだろうか。
「はい。僕なら小柄も相まって釣りやすいのではないかと。それに訓練所でもしっかり訓練していますので、回避方法も心得ています」
引く気はないと言わんばかりに答える僕にドレークさんもゼインさんも押し黙る。
僕らの間を一陣の風が吹き抜けた。
そしてあたりが静まったところでとうとうドレークさんがうなずいた。
「わかった。だが、たかがワイルドボアと侮るな。絶対に無茶はするんじゃねえぞ。これはCランクの依頼だってことを忘れるなよ」
もちろんです、と頷きながら僕は思った。
――あれ、これCランクなんだよね? と。




