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竜の眠る場所  作者: 知花 紗采
3章 〝料理〟なるものを所望する!
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呼び出し

 あれから一日。僕たち冒険者もギルドも通常の様子を取り戻していた。

 とは言っても強化訓練での一件以降の野次も健在だ。

 一体いつになったら本来の姿に戻るのだろうか。そればかりが気がかりだ。


 普段通り依頼を受けようと施設の階下に行けば、真っ先に受付嬢に呼び止められた。

 カウンターまで行くと一通の手紙を渡され、封蝋に押された刻印を見て思わず驚いてしまった。それが皇族の家紋だったからだ。つまり差出人は皇族の誰かということになる。


 慌てて部屋に戻って封を切れば、出てきたのは一枚の紙のみで、用件も非常に簡潔だった。


「指定の日時に城まで来られたし……」


 ──って明日じゃん! と思わずツッコミたくなるような内容に目を覆った。


 呼ばれるような覚えはなく、ましてや皇城に出向けるような服装など低ランク新人冒険者が持っているはずがない。

 こういったものはちゃんと仕立て屋でそれなりの日数をかけて用意するものではないだろうか。

 仕立てるともなればそれなりに費用もかかる。おそらく普通なら新人冒険者は手も出せない金額になるはずだ。

 どう考えても無茶な呼び出しである。


 幸い、今の僕にはワイルドボアの報酬が残っている。そこそこ良い物が仕立てられるだろうが、問題は日数だ。

 今すぐに採寸をして作ったところでどんなに頑張っても明日の昼間まではかかるだろう。

 ともなると既製品で探すことになるが、果たして皇城に赴けるような物があるかどうか怪しいところだ。


 とりあえず帝都の店で探すとして、店が開くまでまだ少し時間がある。

 まずは腹ごしらえをしてから考えよう。──余白部分に書かれている絵も気になるし。




 再び階下に降りて食堂に行くと、難しい顔をしたドレークさんとゼインさんを見つけた。

 声をかけるべきか悩んだものの、なんとなくそうするべきな気がして声をかけることにした。


「あの、何かあったんですか?」


 僕が声をかけたことに二人は跳ね上がる勢いで驚いた。よほど集中していたらしい。

 テーブルの上に置かれた皿もほとんど手つかずだ。

 そして見覚えのある封筒も置かれていたので、二人が何に悩んでいるのかおおよそ予想することができた。


「──ああ、ちょっとね。カウンターでしかめっ面になるリーゼさんの気持ちがわかったというかなんというか……」

「もしかして、皇城からの呼び出し……ですか?」

「うん、そうだけど、よくわかったね?」


 訊ねるゼインさんに、僕は先程中身を検めた封筒を見せた。

 当然二人も驚いたのだが、それよりも困惑しているようにも見える。


「アルも呼ばれたとなると、いよいよ目的がわからんな。俺たちだけならリーゼの代わりをやれって無茶振りの可能性もあったが……」

「流石にアルくんにそれはないよねえ……。日時も一緒となると多分同じ話……なんだろうけど……」


 椅子に深く腰を掛けて大きくため息をつく二人。完全に心ここにあらずだ。

 流石に二人をこのままここで呆けさせるのも良くないので、先程のゼインさんの一言で気になったことを訊ねることにした。


「あの、さっきリーゼさんがしかめっ面になってたというのは……」

「──ん? ああ、お前はまだ知らないか。リーゼは帝都に戻るたびにこうやってよく呼び出されていたんだよ。それがあまりにも頻度が多いもんだから滅多に表情に出さないあいつも流石に表情を歪めるんだ」

「リーゼさんが皇城によく出入りしているからって言っている人たちはそのことを知らないんだろうね……」


 あの忙しすぎる人を頻繁に呼び出すとは、皇城の人はよほど暇なのだろうか。

 そんな思いも不敬になるので口にはしない。こんなことで罰せられるのは御免だ。


「そうだったんですね。──あ、ところでお二人は明日の服は持っているんですか?」


 二人の話ですっかり忘れていたが、目下の問題は明日の服だ。これがなければ出向くこともできない。

 しかしそんな理由で断れる相手ではないはずなので、是が非でも用意しなければならないのは確実だ。

 それは二人も変わらないはずだ。何か手段があればぜひともご教授願いたい。


「「…………あ」」


 きょとんと僕を見た後、お互いに顔を見合わせて、再度僕を見てこぼれた言葉がこれだ。

 どうやら全く考えていなかったようだ。


「これは──」

「──あそこに行くしかないよね」


 再び見合わせた二人は流石長年行動を共にしてきただけのことはある息の合い方でそう言った。

 これは僕もついていくしかないだろう。

 訊ねられてはいないものの、勝手に二人についていくことにした。

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