なにか変……?
第二段階の訓練を終え、武器を返して通された部屋で待つことしばらく。
あれから部屋にやって来る者は多くない。
ようやく新たにやって来たと思えばそれはペニーで、彼曰くペニーより前に呼ばれた人は一〇人以上はいたそうだ。
その後も時折新たに案内されてくる者がいたが、その間隔は徐々に狭くなっていた。
顔ぶれを見ている感じ、どうやらランク順に試合をしているようで、ランクが高いほどこの部屋に通されやすいように思えた。
中にはドレークさんとゼインさんの姿もあった。──僕を見つけたゼインさんが小さく手を振ってくれた。
最後に部屋にやってきたのはギルマスだった。
部屋にいるのはたったの二十名程度。だいぶ少ないように感じる。
「よし。これで第二段階は終了だ。これから第三段階の説明をするが——大丈夫そうだな。この部屋にいる者は全員第三段階を受ける適性があると判断した。明日から早速、と言いたいが残念ながらそうもいかない」
部屋に一羽の鳩が入り込んだ。
それは大きく羽ばたきながらギルマスの側に行くと、ギルマスの腕に止まった。
「第三段階の開始は、この伝書鳩で伝える。それまでは通常通り依頼を受けてもらって構わない。受けた依頼はギルドで把握しているから、期日を気にする必要はない」
そこで言葉を切ったギルマスは鳩を手放し、息を大きく吸った。
「で、肝心の内容だが——、リーゼとともに依頼を受けてもらう。依頼の難度はそれぞれに合わせたものを用意するが、あくまで依頼を熟すのはお前たちだ。リーゼは適宜指導するのみで直接手は出さない。装備は自分たちで用意しろ。長期に渡る可能性もあるからそのあたりも考慮して準備をしておくように。あと、個人で参加している者は時間の都合でギルドで誰かと組ませてもらう。そのあたりも含めて伝書鳩で伝えるから、伝達内容はしっかり読んでおけよ」
その後、質疑がいくつか上がり、ギルマスが全てに回答してこの場は解散となった。
質疑の中には、この部屋にいない参加者についてがあったが、その人達は全員第二段階で終了だそうだ。
このあとの内容を考えればある程度人数を絞るのは致し方ないか、と納得しつつそれだけではないような気もした。
それが何なのかまでは分からないのだが。
「ねえ、何人か近衛に連れて行かれた人がいるって知ってる?」
そう訊ねたのはペニーだ。
なんでも僕が呼ばれてから近衛騎士に連れて行かれた参加者がいたらしい。
連れて行かれたのは第二段階の訓練に呼ばれてかららしく、どういう経緯で連れて行かれたのかは不明だそうだ。
近衛騎士とは国の治安維持組織である騎士団の一部だ。
主には皇城の警邏で、現行犯だけではなく未遂、計画の段階での抑止、阻止も担っている。
これだけでは対人を目的とした組織に見えるが、魔物を始めとした脅威から守ることも含まれている。
——が、基本的にそういった外的脅威は冒険者が処理しているのが実態だ。
しかし、皇城を守っているだけあって、騎士団の中でも精鋭中の精鋭集団であるのも事実だ。
そんな近衛騎士が冒険者を連行した? それも街の治安維持を担う〝騎士〟ではなく近衛騎士が?
普通に考えれば何かしらの犯罪をしたものと思われるが、ギルド主催の訓練中にそんな事があるだろうか。
しかも一人ではなく複数人。
一体何が起きているのか。
これは首を突っ込んではいけないことな気がする。
「おう」
少し首をひねっていた僕にドレークさんが声をかけた。
彼がちらりとペニーを見ると、ペニーは人懐っこい笑みを浮かべて去っていった。
どうやら気を使ってくれたようだ。
「知り合いか?」
「最初の訓練のときに同じグループだったんです」
「そうか。……ああ、そうだ。この訓練、どこかおかしいのは気づいているか?」
珍しく声を潜めたドレークさんに僕は何を訊ねられたのかすぐに分からなかった。
しばらくその意味を咀嚼してようやく先程のペニーの話が浮かんだ。
「そういえば訓練中に近衛に捕まったとかって……」
「ああ。おそらくさっきの訓練である程度篩にかけられただろうから大丈夫だとは思うが、念のため注意しておけよ」
その言葉に、先程薄っすらと感じていた違和感が少し現実味を帯び始めた。
きっとギルドの動きに注意しろという意味だけではない。
きっとその対象に参加者も含まれている——。
出会ってまだ二週間程度の付き合いだが、そう伝えるには十分だった。




