日常に花束を～信じることが怖かった君へ～

岡山の春はまだ肌寒く、桜のつぼみがようやく膨らみ始めた頃。
立花優斗は、祖母の家に身を寄せ、岡山桃高校へ転校する。
両親の裏切りと家庭の崩壊――優斗の心には、誰にも言えない傷が残っていた。
「誰も信用しない。静かに過ごせれば、それでいい」
そう思っていたはずだった。
電車の窓から見える景色に、過去の記憶が重なる。
父に殴られた頬の痛み、母の沈黙、そして「お前がいるせいで離婚できない」という言葉。
優しさを否定され続けた少年は、心を閉ざして生きてきた。
しかし、岡山駅で出会った風変わりな同級生たち――
路上でギターを弾く空太、風紀委員の美月、そして祖母の静かな愛情。
少しずつ、優斗の「日常」が揺らぎ始める。
これは、傷ついた少年が、もう一度人を信じてみようとする物語。
そして、何気ない日々の中にこそ、花束のような温もりがあることを知っていく――。