ゆうくんはYOUTUBER
閲覧ありがとうございます。
BLというほどのBLではありませんが、幼馴染のゆうくんとてっちゃんがほのぼのしてます。
ゆうくん←←←←←←←←←←←てっちゃんです。
ゆうくんからの矢印は不明……。
短編ですが、シリーズ化できたらいいなー。
となりの家のゆうくんは、赤ちゃんの頃からめちゃくちゃかわいかった。同い年の俺は当然覚えてないけど、まだ乳幼児の頃からテレビのCMに出ていて、天使のような笑顔を振りまいていたらしい。
『ほんっと、赤ちゃんの頃から目がぱっちりしてて、いつもニコニコしててねぇ。声もかわいくて。本当に天使みたいだったわ~。一回ゆうくんがCMしてたスタイ買っちゃったもん。あんた全然似合わなかったけどね』
とはおれの母親談である。
ふざけないでほしい。
成長しても、ゆうくんはちょいちょいテレビに出ていた。CMだけじゃなく、ドラマや映画で演技したり、歌を歌ったり。
『ゆうくんの歌ってる番組録画して、一緒に歌わせたらかわいいかと思ったんだけどねぇ。あんた音痴で』
本当にほっとけ。
その頃俺は保育園に行って暴れまわっていた。近所の子供は同じ保育園に行っている子が多かったが、ゆうくんは俺と同じ保育園にも、少し遠くにある幼稚園にも行っていなかったようだ。忙しくてそれどころじゃなかったんだろう。
たまに家の前で偶然会うと、母親のテンションの上がり方がヤバかったのを覚えている。
『ゆうくんほんっとかわいい!天使!』
母ちゃんは決して俺を天使じゃないとは言わなかったが…なんかいつも、ちょっとモヤモヤしていた。
でもそんなモヤモヤも、小学校に上がるとだんだん違う感情になってきた。
仕事で忙しいゆうくんは、ほとんど学校に来れなかった。たまに来ても、同級生はどう接していいかわからずにぎこちない。そんな時にゆうくんが頼るのが、俺だった。家がとなりというだけだったが、接点がある俺だけが、学校ではゆうくんの頼みの綱だったのだ。
『てっちゃん、てっちゃん』
天使のようなゆうくんが頼ってくるのがうれしくて、俺は学校では何かとゆうくんの世話を焼いた。
そしてそれは…今も続いている。
*
「わ~スパチャありがと!ん~と…?『落ちぶれた元子役に恵んでやるよ』…?」
なんてコメント送ってるんだ…。
俺はハラハラとゆうくんを見た。
「落ちぶれたって……」
怒る?それとも、泣く?傷つく?
だが、ゆうくんの反応は、そのどれでもなかった。
「ははっ、つまんねぇじょーだん!」
*
ゆうくんは子役によくあるパターンで、成長するとだんだん仕事がなくなっていった。いつの間にかテレビで見なくなって、学校によく来るようになって…でも今まで休んでいた分勉強にはついてこれなくなった。
『てっちゃん!べんきょーおしえて』
となりのよしみで、ゆうくんは俺の家にしょっちゅう来た。
仕事がなくなったといっても、ゆうくんは相変わらずめちゃくちゃかわいい。母ちゃんも大歓迎だ。
だが俺の部屋で真面目に勉強をするかというと、そんなことはなかった。たいがいマンガを読んだりゲームをしたりして過ごす。
ちなみにゆうくんのおばさんは、俺がゆうくんの数少ない友達をしていることにめちゃくちゃ感謝していて、『ゆうくん全然勉強してないっすよ』と言っても気にしたようすはなかった。ともかく友達がいるということが、うれしいらしい。
でもそんなふうだったから、結局勉強はわからないままで、ゆうくんは高校受験を諦めてしまった。
テレビにも出られない、高校にも行けない。
ゆうくんは落ち込んでいるかと思ったが、そんなことはなかった。
『んー、なんてーか、おれのステージじゃなかったんだよな!テレビも、学校もさ!』
そうなんだ。
高校に進学しないことにしたゆうくんは、YOUTUBERになることにした。
『時代はYOUTUBEだよな!』
そうらしい。
『おれYOUTUBERになるから、手伝ってよてっちゃん!』
そんなこんなで、俺はゆうくんの動画投稿を手伝うことになった。
*
「今日もありがと~!明日は昼にゲームする!えーと、何時?」
ライブ配信の締めくくりだ。
明日は土曜だから、14時から配信する。俺は指で1.4と合図を送る。
「んー、いち、よん…あ、14時ね!14時からするから!みんな見に来いよー!じゃー!」
カメラに手を振って、配信を終える。
YOUTUBERゆうくんは、毎週金曜日の動画投稿、週に2回の定期的なライブ配信、さらに不定期でライブ配信をしている。最近はアクションゲームにはまっていて、ライブでゲーム配信をしていて、チャンネル登録者数はまぁまぁ。収益は高校生のバイトよりはちょっともらえるかな、くらいだ。
その中から俺はバイト代を貰って、動画投稿に必要なもろもろを行っている。
なにせゆうくんは、何もできない。
いや、いろいろできることはある。
歌はうまいし、演技もできる。さらになんと楽器もできる。子供の頃習っていたピアノ、独学のギター。あとけん玉も得意だし、テーブルクロス引きもできる。子役時代にやった色々が身についているのだ。それらの特技を使って動画を作ったりもした。
さらに、一番は、なにせ顔がいい。天使だ。
毎日顔を見ている俺ですら、天使だと思う。見飽きることがないかわいい顔。これがなによりの武器なのだ。
俺は当然動画編集もしているが、視聴者には『編集の人ゆうくんの顔好きすぎw』とコメントされたこともある。だが一番の武器を使わない手はない。
ゆうくんの考える企画はぶっちゃけ、そこまで面白いわけではない。だれでも考えつくような、普通の動画だ。
それでもここまで収益があるのは、ひとえにゆうくんの顔がかわいいからなのだ。
「つかれたー!てっちゃん、今日もありがと!」
「お疲れ様、ゆうくん」
「あーやば、早くゲームしてー!」
「明日までは我慢だよ、見てる人がわかんなくなっちゃうから」
「わかってるって!さすがに!」
きゃはは、とゆうくんが笑う。
ゆうくんは学力は足りないが、子供の頃から大人の世界で生きてきたからか抑えるところはちゃんと抑えるし、約束は絶対守る。
ちゃんと勉強できなかっただけで、頭はいい。
「今日初めてスパチャくれた人いたよなー!」
ギク。
そりゃ、触れるよな。触れないわけない。
ゆうくんに、『落ちぶれた』なんてコメントした視聴者。そのあとコメント欄で他の視聴者に叩かれて、ゆうくんがみんなをなだめるというくだりがあったのだ。
「あの、ゆうくん。…気にしないでね、あんなコメント…、」
「ん?コメント?」
ゆうくんはこてん、と首を傾げる。
えっあんなひどいコメント…もしかして、忘れちゃったの?
「あ、落ちぶれた子役ってやつー!?ひどいよなー!」
ひどい、と言いながら、ゆうくんはははは!と笑っている。
え、ぜんぜん…気にしてない?
そりゃ、他の視聴者に向けては『気にしてないよー!』と言っていたけれど。
「あ、心配してくれてんだ!ありがとなー!」
「心配っていうか…あれ、単純にさ、無神経っていうか…信じられないコメントじゃん。本人にさ、あんな……」
「いや、ほんとにだいじょうぶ!あのコメントした人さ、初めて来てくれた人じゃん!だからさ、今のおれのこと知らないだけだよ!俺にはYouTubeがあってたよな、今楽しいもん!」
え…本気で気にしてない…。
なんで……?天使だから……?
「さすがにこの年で天使はないってー!」
あれ、俺口に出してた?やば。
俺はさすがに恥ずかしくて、顔が熱くなった。
「でもさ、おれがそういうコメントあんま気にしないでいられるのって、やっぱてっちゃんとか、てっちゃんのおばちゃんとかのおかげかも!ここんちの人はさ、ずっとおれのこと好きでいてくれるからさ!別にコメントとかでは傷つかないかなって!」
「やっぱ天使じゃん……」
「いや今のははっきり言ったよな?」
ゆうくんが自由に、楽しくのんびりYouTuberライフを送るために。
今日も俺は、ゆうくんを全肯定するのである。