表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/44

プロローグ イカイとヒガン

カクヨムに掲載していたものの転載です

──ある日。




 虚空が破れた。


 世界と世界を隔てていた境界が、破れた。




 破れた虚空から、にょっきりと。


 突如として出現した、深紅の尖塔。




 夕日のように、血潮のように。


 真っ赤に染まった背高のっぽの、その塔は。


 緑の草原が広がる平野に、まったくもって不釣り合い。




 ──そして、塔の中から。


 『イカイ』の者たちが、やってきた。




 彼らは金属と火の扱いに長けていた。


 鉄剣と銃弾で人を殺す技術に長けていた。




 この世界の住人たちは、太刀打ちできなかった。


 わけもわからぬままに、その戦争は──『越境戦役』と呼ばれる厄災は始まった。




 彼らは、奪いにやってきた。


 彼らは、殺しにやってきた。




 はじめ、この世界の人間達はされるがままだった。


 土地を奪われ、村を奪われた。


 イカイ人たちは、ヒトによく似た「何か」を操り、奪った土地に入植していった──そうして。




 ヒガンの人間は思い出した。




 この世界には、縋るべき者がいると。


 魔法と呼ばれる強大な力を、まるで当たり前のような顔をして操る者たち。


 天候を変え、地形をも歪め、川を下流から上流に遡らせるほどの、超常の存在──魔女と呼ばれる存在を、思い出した。




 木と石でこしらえられた道具。


 気と意志で執行される魔術。




 それが、この世界の──『ヒガン』の構成要素だった。


 魔術は大昔に廃れてしまい、それを操る者……すなわち『魔女』は数を減らし、表舞台から姿を消していた。




 人々は幾人かの魔女を探し出し、願いをかけた。




 ──このヒガンを、奪い返してほしいと。




 一度奪われたものを奪い返すのに、遠慮はいらない。




 だから、魔女たちは殺した。


 殺して、殺して、殺した。




 彼女たちには──魔女には、それができたから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
はじめまして。 冒頭から不穏な流れですね。 これだと余計な恨みも買いそうですけど、今後どうなっていくのか楽しみです。 少しずつ読み進めたいと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ