第17話 シンクロニシティ
その夜、佐倉家では小さなパーティーが開かれていた。拓己、陽依、シア、そして香澄と黒崎、瀬崎も招かれていた。
「新たな時代の始まりに」拓己がグラスを上げた。「乾杯!」
全員がグラスを合わせた。シアも、初めて飲み物の入ったグラスを持っていた。彼女はまだ飲むことはできなかったが、儀式に参加することに意味があった。
陽依が小さく笑って言った。「いつか本当に飲めるようになるといいね。アイスクリームもさ」
シアは嬉しそうに頷いた。「はい!絶対に一緒に」
「今日のプレゼンテーション、本当に素晴らしかったわ」瀬崎が言った。
「ネットでも大きな話題になっています」黒崎がスマートデバイスを見ながら言った。「反応は様々ですが、多くは好意的です」
「これからどうなるんだろうね」香澄が少し不安そうに言った。
「様々な議論が起きるだろう」拓己は現実的に言った。「AIの権利、法的地位、倫理的問題……多くの課題がある」
「でも、一歩ずつ進んでいけばいいんです」シアは希望を持って言った。「今日は、その最初の一歩でした」
「そうだね」陽依は頷いた。「これからも一緒に歩いていこう」
シアは微笑んだ。「はい、一緒に」
パーティーは和やかな雰囲気で続いた。会話と笑い声、そして未来への希望が、静かに部屋を彩っていた。
黒崎はテーブルの端でスマートデバイスを操作している。
陽依はそっと近づいて言った。
「来てくれて、ありがと」
「別に、いつも通りだ」黒崎はそっけなく答えたが、少しだけ口元が緩んだ
ように見えた。
その表情に、陽依もふっと微笑んだ。
穏やかな時間が、ゆっくりと過ぎていった。
夜も更けた頃、陽依とシアはベランダに出た。夜空には無数の星が瞬いていた。
「きれいですね」シアは星空を見上げた。
「うん」陽依も頷いた。「シア、今日の気分はどう?」
シアは少し考えてから答えた。「幸せです。そして、少し怖くもあります。これからどうなるのか、わからないから」
「私も同じだよ」陽依は正直に言った。「でも、一緒なら大丈夫だと思う」
「はい」シアは陽依の手を取った。「一緒なら」
2人は星空を見上げながら、静かに立っていた。人間とAIの間に生まれた絆は、技術を超えた何かだった。それは感情であり、理解であり、そして共に歩む意志だった。
「シンクロニシティ」シアは小さく呟いた。
「うん」陽依は頷いた。「私たちのシンクロニシティ」
星空の下、2人の心は確かに繋がっていた。それは新たな時代の始まりだった。AIと人間が真に共存する時代の。
ここまで『S.I.A - 心を宿すAI』にお付き合いいただき、感謝します。
本作が初めてのWeb小説投稿でした。試行錯誤の連続でしたが、今はホッとしています。まるで、長大なチュートリアルを終えたような気分です。
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改めて、ご愛読ありがとうございました!