迫る運命
これがあの悪の教会だと思うだろうか。
汚れ一つない白い壁、屋根は壁とは違い真っ黒だがこっちも汚れがない。
まるで外に立ちつつも、外に出た事がないような……とにかく日常をこの世界で過ごしているようには見えない。
さらに大きさも異常だ。
遠くから見て大きいのは分かっていたが、近づいてみるとより大きさがはっきりとする。
綺麗な装飾がされている訳ではない、シンプルな作りだが、奴等の教会だと思えない程の神聖さもある。
この教会は、うちのお姫様が暮らす城と同じかそれ以上にデカい。
なのにこの教会を空から見つける事も魔力で探知する事も出来ないらしい。
物には魔力は流れない、だが魔力を完全ではないにしろ少しは遮るから魔力の持ち主はその違和感で建物があると普通なら気付く。
ミファもその異常性に気付いたらしく、一瞬だけ魔力を瞳に集めて教会を見ていたが……。
「ナーパムの考えているとおりです、魔力を通すと何も見えません」
教会自体が魔力を素通りさせてしまうように、魔力で引っかかる物は何もないらしい。
こんな物質で作られた物は……初めて見た。
そもそもこれはこの大陸に存在する物で作られているのか?
どこか知らない場所から教会がやってきたと言われる方が納得できるぞ。
綺麗で神聖な教会は、同時にとてつもない違和感も放つ。
姫様の言うとおりこれを破壊しようとしても、魔力を完全に通してしまうこの教会を魔術で破壊する事は出来ない。
魔術で物質を作るとか、岩や大量の水で流すとか、魔力の宿らない物を使わないと多分、無理だ。
いや、それよりも……一つ大きな疑問がある。
「……ミファさん、さっきから何で俺の考えてる事が分かるんですかね」
「ナーパムの中の私の魔力が教えてくれるだけですけど……?」
キョトンとしないで欲しい。
え、つまり何、俺が口にしない事も全部ミファに筒抜けだって事?
「はい、ライフさんの胸と私の胸を比べていたのも、親友の母親を邪な目で見ていたのもぜーんぶ知ってますよ?」
……え、魔力で思考が読めるとか聞いた事ないんだけど。
それは出来ないって教えてもらってんだけど!?
「好きな人の全てが知りたい、支配したい、これって普通なんですよ」
「普通にしては、その、やり過ぎな普通じゃないかなって、だから止めてくれたりは……」
「うーん、これをやめるとなると……家に監禁するしかなくなりますけど、それでもいいですか?」
何で!
そんな!
極端なんだよ!
「だって普通ならナーパムが他の女性を見るのも耐えられないんです、でも今は心の声が聞こえるから、ナーパムは私から離れられないんだって安心できるんです! でもこれが聞こえなかったら……不安で不安で仕方がありません、なので私の目の届く範囲でのみ生活を」
「わかった、うん俺が悪かった、だからこの話は止めよう、な、いいな?」
剣士が教会の中に入っていった。
普段なら魔術で悪魔の数を把握するが今回は目視のみ。
「行きますよ、ナーパム」
ミファと俺はゆっくりと、教会に近づいた。
「それにしてもこの良すぎるタイミングで降臨者が現れたって……何処から来たんだ?」
「パラ先輩が降臨者ですよ、魔力が少し私達と違うじゃありませんか」
……へ?
いや、普通だったけど?
何か違った?
うーーーん……ダメだ、分からない。
「……まじ?」
「今そんな事はどうでもいいです、中に入りますよ」
「それは流石にやばくねぇか?」
ミファは少しためてから、俺を見てから答える。
「私がついています、だから、大丈夫ですよ」
彼女は、覚悟を決めたような表情を見せた後で、いつもよりも明るい笑顔を見せた。




