私のナーパム
私は小さい頃、よく体調を崩していました。
最初両親や医者も体の弱い子だと思っていましたし、私もそう信じていました。
走ればすぐ息を切らして倒れてしまう。
遊べば熱を出す。
そんな私に友達なんて出来るわけがなくて、ただ家の前で駆け回る同年代のみんなを羨ましく思い、一人で庭の花を育てていました。
時々外に出て、外といっても本当に近くの草原ですが、そこで野花を摘んで遊んだりが私の限界でした。
たまに現れる謎の女の子。
同世代の子供達からはすごく気味悪がれました。
遊びに誘われても遊べないし、幽霊のような扱いを受けて居ました。
ナーパムは覚えているか分かりませんが、そんなある日、私が幽霊は消えろといわれていじめられていた時です。
貴方だけは助けてくれました。
……ええ、本当ですよ。
正義の味方は弱い者の味方だと言って、私の代わりに殴られていました。
昔から貴方は弱いままですから。
そんな事があったのに、貴方はよく私に会いに来てくれるようになりましたよね。
私を守ってくれた人が、私に会いに来てくれる。
それだけで、本当に嬉しかったんです。
こんな私にも友達ができたんだって、始めてあんなに幸せな気持になりました。
それから数年が経っても私は相変わらず虚弱体質なままで、それでも貴方と遊びたいからがんばって体を動かしいました。
いつも野花を摘む草原の少しだけ遠くに行こうとして……私は、とある魔術師に出会いました。
魔術師は名乗りませんでしたが、真っ赤な髪と真っ赤な瞳が綺麗なお姉さんでした。
彼女は、私を見て虚弱体質の原因は魔力だと、医者も分からなかった原因をすぐに見つけてくれました。
私は魔力量が他の人よりも多いらしくて、体が魔力に負けているのだと教えてくれた彼女は魔力のコントロールを教えてくれたんです。
出来るだけ魔力を体の負荷が少ない場所にしまうようにトレーニングを続けた結果、私は自分の髪に魔力を集中させる事が出来るようになりました。
髪の手入れはその分大変になりましたが、体は嘘のように軽くなりましたし、倒れる事もなくなりました。
魔術師は、私なら強くなれると、様々な魔術を教えてくれました。
あの頃では絶対に使えない、覚えられない魔術ですら私は必死に学びました。
いつか、守ってくれた貴方を守る為だと思えば、どんな魔術でも覚えられた。
……そんな努力をしている間に、貴方は他の女の子に恋をしていました。
貴方の為に強くなろうとしていたのに、貴方は少し照れた顔で、あの子の好きな花は何かとか聞いてきたんですよ?
怒りもありましたが、悲しみの方が大きかったですね。
彼女、いえ師匠はそんな私の心を見抜き、とある提案をしてくれました。
最初はダメだと思っていましたが、貴方が取られるよりもいいと、徐々に考えは変わり、そして実行しました。
研究に研究を重ね、ソーセージに行き着きました。
……分かってます、何故いきなりソーセージが出てきたと言いたいのは分かりますから最後まで聞いて下さい。
ナーパム、貴方が魔術師の才能があると言われた日はいつだったか覚えていますか?
二人で教会に行った時、神官から私達には魔術師の才能があると言われたあの日です。
そう、あの日以外にもナーパムは何度も教会に行って、神官に会っているのに魔術師の才能の話はされなかった。
でも、あの日はなぜか話をされた。
何故か、分かりますか?
前日、何を食べたか覚えていますか?
……覚えてないのも無理はありませんが、前日には貴方に私が始めて作ったソーセージを食べさせたんですよ。
美味しいと言って喜んでくれていました。
髪を切った私に似合っていると言いながら、用意したソーセージを全て食べたんです。
はい。
貴方は元々魔力を殆ど持っていません。
せいぜい蝋燭一つ灯すのが限界な魔力しかありません。
私は貴方に魔力を貸す事にしました。
魔力を集中させ、切っても魔力が分散して逃げないようにコントロールする事はかなり難しかったですが、師匠も付き合ってくれましたからなんとかなりました。
後は切った髪を貴方に食べさせるだけ。
お守りにして渡そうとも思いましたが、貴方はよく物を無くす人でしたから……体内に入れる方がいいと思いまして。
私が数日に一度、必ずソーセージを作って食べさせる。
私の髪型は細かく、少しづつですが切る必要があったので昔から髪型が変わらない。
いつバレるかとヒヤヒヤしていましたよ。
怖くて途中からスパイスを使って食感と香りを強くしたりと、頑張りました。
私は、貴方に髪を食べさせ続けていました。
食べた髪は数日しか機能しないので、ずーっと貴方を魔力のある魔術師だと勘違いさせていました。
魔術師となった貴方は、恋よりも強くなる事を目指し、修行をしていましたね。
強くなるべきだと教えた甲斐があったと、あのときはとても嬉しかった。
師匠も旅立つ最後に喜んでくれて……忘れられません。
そうして、貴方を魔術師だと勘違いさせ続けた頃、幸運にも悪魔が来てくれました。
ナーパムに貸していた魔力では対処できませんでしたが、私と共に倒したとして、特別魔術科に入学させる事も出来ました。
借り物の魔力しか持たない貴方はすぐに落ちこぼれた。
勉強は出来ない。
運動もあの学科じゃ下。
魔術に至っては論外です。
……でも威力は俺が一番だった?
そうですよね、自分の借り物の魔力と私の魔力の区別なんて付きませんよね。
貴方の使う魔術の分、私は自分の髪から魔力を抜き取り、私が変わりに使っていましたから。
何故そんな事をと言われるとそうですね、貴方が才能ある魔術師だと思わせて、退学にならないようにする必要があったからですよ。
全てが私の計画通りに進んでいたのに……貴方は勘違いを爆発させて強くなるとか、認めてもらいたいとか、そんな事を言って前線に行きましたね。
でもあそこじゃ、私の料理は食べられない。
貴方の魔力は回復しない。
そんな極限下で、貴方はずーっと私の事を考えてくれていました。
あの時の貴方は……最高に……可愛かったです。
ルサンチマン先輩は貴方の体内の髪に気付いたみたいでしたが、肝心の貴方が……私無しでは何も正確に考えられないように教育しましたから、何も気づかなかった。
そして、貴方は今。
私に捨てられると怯えています。
こんな話を聞かされ、食べ物に髪を混ぜ込むようなイカれた女の真実を知っても、貴方は私を拒否出来ずにいます。
死の間際、貴方が求めた私がここにいると、安堵しています。
……さあ、選んで下さい。
借り物魔力の魔術師ナーパム。
私を拒否するか、私を受け入れるかです。
即答ですね。
わかっていました。
ナーパム、大好きですよ。
ずっとずっと、何も出来ずに、私に依存していて下さい。
「ナーパムは何もしなくていいんです、ずっとずーっと、全部任せて下さいね」




