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俺の幼馴染はちょっと変わった優等生  作者: ケイト


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18/25

凡人と天才


 

 

 前線を舐めていた。

そう言われてもおかしくない。

現に、俺はこの力があれば大丈夫だって思ってここに来ていた。

だが俺は、戦う事なく恐怖を植え付けられている。

降ってくる死体と、それを見て何とも思わない味方。

異常すぎる環境で俺が考えていたのは……ミファの事だけだった。

 

「ミファ……ミファ……」

 

宿泊所の魔術師専用部屋のベッドで、俺は明日の勤務に怯えていた。

二人で一部屋だが今は俺一人。

そう、一人なんだ。

怖い、辛い、帰りたい。

ミファに会いたい。


ここの食事は美味しくない。

味はしないし、何より温かくないんだ。

彼女が作ってくれた食事は、冷めていても温かいのに……。

まだ離れて数日しか経ってないのに……クソっ!

 

負けるな、負けるな俺!

まだ頑張れる。

まだ戦ってない。

戦ってないのに……。

 

「ちょっと聞いてませんわよ! わたくしは女性ですのよ? 何故男と同じ部屋なのですか!?」

 

「いえ……その、同じ学校の生徒はなるべく同じ部屋にするようにとのお達しが来ておりまして……」

 

「同じ学校でも異性なら部屋を別けるはずでしょう!? いったい誰がこの部屋割を決めたのですか」

 

部屋の外から声がする。

あれ、この声って……。

 

「それは……姫様です」

 

「……ハァ、師匠の言っていた通り、嫌がらせが得意な人なのですね」

 

「ご理解下さい……魔術師ルサンチマン」

 

ルサンチマン先輩だ。

彼女が今、俺の部屋の扉を開けて入ってきた。


「本当に男がいる」

 

嫌そうな表情のまま、先輩は自分のベッドに向っていく。

揺れる金髪には少しだけ泥のような物がついているから、どとかの戦場で戦っていたのかもしれない。

 

「……どうも」

 

「ええ、どうも」

 

使われていないもう一つのベッドに腰掛けた彼女は腰の剣を外し、背負っていたバッグと共にベッド横の荷物置き場に置いた。

ずいぶん丁寧に置くんだな。


「貴方、何故ここに来ているのですか?」

 

見ているのがバレたみたいで、先輩は俺を警戒している。

悪魔を警戒するって感じじゃなくて、女として身の危険を感じて警戒しているっぽい。

戦う目では無いが、軽蔑するような目で俺を見ないで欲しい。

そんな風に考えた事ありませんよ。

 

「自分の成長を認めさせる為です」

 

俺が答えると、先輩はつまらなさそうに欠伸をしてから横になった。

それと同時に何重にも防御魔法がかけられ、俺が物理的に触れる事を拒否している。

そりゃそうだ、男と女、それも年頃だから警戒するのは当然だ。

ましてや、俺は先輩をジロジロとみていた訳で……。

 

「認めさせて、どうしたいのですか?」

 

「……そりゃ、信頼してもらいたいんです」

 

「信頼ですか……一つ、昔話をします、興味が無ければ聞き流して下さいな」

 

先輩の話は昔話と言うには随分とリアリティーがある話を始めた。

横になりつつ、目を閉じているのに、話し続ける彼女から放たれる殺気と圧が強すぎて、俺はここで動かず、いや動けず話を聞いているしかなかった。

 

「幼少期から天才と呼ばれた孤児の魔術師と、いつも天才と比べられてきた非凡な親を持つ凡人がいました。凡人は努力し、いつか両親が認めてくれると信じ、天才を追い抜こうと頑張りましたの」

 

……少し、殺気がおさまった。


「ですが所詮は凡人、天才には勝てず、両親は天才を自分の子供として扱い始めました。それでも凡人は努力をし続け、天才になんとか追いつくぐらいまで成長しましたの」

 

天才と凡人、ミファと俺の関係に少し似ているな。

 

「そんなある日、高位魔術の試験がありましたわ。発動出来なければ家を追い出されると、お母様にそう言われて天才と凡人はその試験に挑みました。天才は楽々その魔術を発動させましたが、凡人は苦労してようやく魔術を発動させたのです」

 

「結果的に……お互い高位魔術を使えたんですか」

 

「ええ、当時凡人はそう思ったのでしょうね、成功した事のない魔術を成功させ喜んでいましたが、お母様が選んだのは天才でした。天才はそれを受け入れず、実の娘を選ぶように説得してきましたが、お母様はそれを聞いて……"アレじゃ無理だ"と冷たい目で言い切ったのです」

 

俺の両親は魔術師じゃない。

だから、俺が魔術師になった事をとても喜んでくれたし、たくさん褒めてくれた。

平和で、普通の家族だった。

だから、先輩の話す母親があまりにも冷たすぎると感じてしまう。

 

「それから先は地獄でしたわ、何があっても天才だけが大切にされ、凡人は雑な扱いばかり。凡人を見て可哀想だと思った天才からの優しさすら、憐れみで話しかけてくるなと拒絶する程に心は醜く歪んでしまいました」

 

「子供にそんな扱いすれば、そうなって当然じゃないですか!」

 

「そうですわね、そしてさらに残酷な事に、凡人がこれまで成功させてきた魔術の全てが……天才が凡人に変わり発動させたのです」

 

……どういう、事だ?

 

「凡人が発動したつもりでいた魔術全てが、天才の魔術だったのです。ご丁寧に人から魔力をきっちり奪い、発動させた気にさせて、お母様や他人からは凡人が発動したようにしか見えない形で……きっと助けてくれていたのだと思いますが、凡人が気付いた時、それに耐えられませんでした」

 

俺が高位魔術を使ったつもりでいたが、それは全てミファによって使われた魔術であり、俺はミファに魔力を発動分きっちり奪われていたから気づかなかった。

こんな感じかな。

 

「お母様はそれに早くから気付き、天才は凡人に憐れみの施しを与え、誰も平等に接してくれなくて、凡人は酷くお母様と天才を憎み、死んでしまえと毎日願いつつ、自分の力を認めさせる為に前線に向ったのです」

 

空気がまた重くなった。

殺気は無いが、圧がこれまでと違う。

体にべったりと張り付くような、嫌な圧だ。

 

「その結果、凡人は死にかけました。もうダメだと言う所で天才に助けられましたが、助けに来た彼女を……凡人は覚えた魔術の中で最も強力な魔術で攻撃しました。でも、天才は全然ダメージを負わず、笑顔で……"もう君達の前には現れない、どうか幸せを掴んで欲しい。君は僕の唯一の親友だから"と言って……当時の最前線、怨嗟の谷消えました」

 

怨嗟の谷。

ここ、ファスタニアからさらに西に進んだ所にある巨大な谷だ。

数年前に悪魔との大戦争、決戦が行われ、大量の人間が死んだって先生が言ってた場所だ。

 

「怨嗟の谷に向かう天才に、凡人はこう言いました。"お前が魔術師になったのは間違いだ、怨嗟の谷で死ね!"と……結果、天才はそこで死んでしまいましたの」

 

救いのない話だ。


「天才が死に、凡人は大喜びしました。ついに認めて貰えると思いお母様を訪ねた凡人でしたが、それでも認めて貰えず……この先はいいでしょう、そろそろ何が言いたいか分かりましたか?」

 

何が言いたいかさっぱりわかりません。

……ここまでの話で、何をつたえようとしていたんだろう。

認められるってのは、そう簡単にはいかないって事だろうか。

だとすると、話が長すぎる。

分からず、頭を悩ませていると先輩が口を開いた。


「この話は覚えておいて下さい。いつかきっと、貴方は意味に気づくでしょう」

 

先輩はそう言ってから、寝息を立てて眠ってしまった。


彼女が寝てからも、俺は話の意味を考えている。

認めて貰いたかった相手は母親と天才。

天才は凡人を親友と呼び、凡人は天才に死ねと言った。

そして天才は死んでしまったが、凡人が母親に認められる事は無かった。

 

「ミファは……俺が前線で戦っても認めてくれないって事か?」

 

そんな事は無いはずだ。

あと半日でまた前線警備に戻らないといけない。

そこで……活躍すれば、噂を聞いたミファは必ず……。

 

俺だって、一人でやれるんだ。 

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